「ビール・ストリートの恋人たち」無実の罪で収監された黒人青年と彼の子供を身ごもった恋人の運命

(2019年2月22日)

  • ビール・ストリートの恋人たち
  • 「ビール・ストリートの恋人たち」
    (TOHOシネマズ新宿)

「ムーンライト」で一昨年のアカデミー賞作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督が、黒人作家ジェームズ・ボールドウィンの小説「ビール・ストリートに口あらば」を映画化した。今年のアカデミー賞に脚本賞、助演女優賞(キキ・レイン)、作曲賞の3部門でノミネートされている。

1970年代のニューヨークが舞台。22歳の黒人青年ファニー(ステファン・ジェームス)は、白人の警官に目をつけられた挙句に身に覚えのないレイプの罪で逮捕され収監されてしまう。ファニーの19歳の恋人ティッシュ(キキ・レイン)は、面会したときに彼の子供を妊娠したこと告げる。ファニーは喜び、ティッシュの両親と姉も祝福。ファニーの父親も喜ぶが母親と2人の娘は結婚に反対する。そうしたなか、ティッシュはファニーの無実を晴らそうと家族とともに奔走し、様々な困難と向きあいながら愛と信念を貫いていく。
人種差別は今も根強く存在して事件も多発しているだけに映画のテーマは現在にも共通する問題提起になっている。

差別の問題だけではなく、ファニーとティッシュが初めて結ばれるシーンや、2人の深い愛と絆、2人を取り巻く家族愛や葛藤などを繊細なタッチで描いているところも見どころになっている。長編映画初出演のキキ・レインがみずみずしい演技でヒロインを演じてアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、ステファン・ジェームズも熱演している。そしてティッシュの母親役のレジーナ・キング(ゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞)や父親役のコールマン・ドミンゴが存在感を放って脇を固めている。ラストシーンがとても象徴的で余韻が残った。(2019年2月22日公開)