「グリーンブック」イタリア系用心棒と黒人天才ピアニストの人種を超えた絆

(2019年3月2日)

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  • 「グリーンブック」(TOHOシネマズ渋谷)

第91回アカデミー賞で作品賞を受賞した話題作。さらに助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚本賞も受賞して3冠を獲得した。実話の映画化で、過酷な黒人差別が現存していた1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めていたトニー・リップ(ビゴ・モーテンセン)は、黒人の天才ジャズピアニスト、ドクター・ドナルド・シャーリー(アリ)の運転手にスカウトされて、黒人差別が濃厚な南部のコンサートツアーに、黒人が泊まれるホテルやレストランのガイドの「グリーンブック」を頼りに出発する。

インテリなアーティストのドクターとガサツなイタリア系白人のリップは最初は全くかみ合わず反発しあうが、ドクターの天才的なピアノの腕に驚き、次第に打ち解けて人種を超えて絆を深めていく。
人種問題を扱いアカデミー賞作品賞受賞した過去の作品には「それでも夜は明ける」(2014年)、「ムーンライト」(2017年)などがあるが、「グリーンブック」は違ったタイプの作品といえそうだ。

セレブ相手のコンサートで拍手喝さいを浴びているにもかかわらず、控室は物置部屋でトイレは屋外の汚い便所を使わせられるなど残酷な差別の現実も描かれているが、笑いありスカッとさせられるシーンあり感動ありで、最初から最後までわくわくさせられ、スクリーンに引き付けられるエンターテインメント作品になっている。

この映画に対して「白人救世主映画」とか「ホワイトスプレイニング」(白人が有色人種に対して上から目線で説教する)映画との批判もあるという報道もあったが、少なくてもビゴが演じたリップには全くそんな考えはなかったに違いない。雇い主を守り抜くというボディガードとしてののプロ意識、天才ピアニストへのリスペクト、そして男気に駆られて突き進んだのではないか。

それはともかく、なんといっても2人のコンビが絶妙でしばしば登場する車の中の掛け合いも見逃せない。アリは助演男優賞を獲得。ビゴも主演男優賞にノミネートされていたが、オスカーは「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレックにさらわれたものの、圧倒的な存在感を見せてこの作品を盛り上げている。 (2019年3月1日公開)

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