「運び屋」 クリント・イーストウッドが90歳の“伝説の運び屋”を熱演

(2019年3月9日)

  • 運び屋
  • 「運び屋」(TOHOシネ
    マズ六本木ヒルズ)
  • クリント・イーストウッド監督が90歳の“伝説の運び屋”の実話を映画化した話題作。監督作としては「グラントリノ」(2008年)以来10年ぶりに主演して運び屋を演じた。老人の運び屋と彼をスカウトした麻薬組織との駆け引き、捜査官との攻防などのスリリングな展開あり、笑いあり、元妻や娘とのほろりとさせられる人間ドラマありのエンターテインメントになっている。「アメリカン・スナイパー」「ハドソン川の奇跡」「15時17分、パリ行き」などの監督の一連の”実録路線”の中でも異色の1作だ。

    実在の運び屋は第2次世界大戦の退役軍人で園芸家のレオ・シャープで、2011年に逮捕された。2014年「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」に掲載された「シロアナ・カルテルの90歳の運び屋」という同事件の記事が映画のベースになっているという。 デイリリー(ユリ科の植物)の栽培を手掛けるアール・ストーン(イーストウッド)は、品評会で数々の賞に輝いたベテランだが自由気ままな生活で、娘の結婚式をすっぽかしたりして家族から疎まれ、事業もうまくいかなくなり孤独な生活を送っていた。そんなある日、男から「車の運転さえすれば金が稼げる」といわれて、古びた軽トラックに荷物を積んで指示された場所に車を停め、車を降りて近くで時間を過ごして戻るとダッシュボードに大金が置いてあった。

    味をしめて運転を繰り返すうちにメキシコの麻薬組織のドラッグを運んでいたことに気が付くが、やめられなくなっていた。警察のマークをかいくぐり一度に13億円相当のコカインを運ぶことに成功し、組織のボス(アンディ・ガルシア)の豪邸に招かれ、美女をあてがわれるなど運び屋稼業にはまるうちに、麻薬取締局のコリン・ベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)の捜査の手が迫る。麻薬組織の若いメンバーに脅されると「朝鮮戦争で戦ったから怖くない」と凄んだり、運送の途中で止まったモーテルにコールガールとみられる若い女性を連れ込んだり(しかも2人)、老人とはとても思えない暴走ぶりで驚かせたり笑わせたり、イーストウッドの熱演ぶりが見ものだ。

    昨年12月に「運び屋」のプレミア試写会がロサンゼルスで開かれ、イーストウッドの子供たちが駆けつけた。これまでイーストウッドには7人の子共がいるとされていたが、実はもうひとりイーストウッドが売れる前に生まれた子供がいると噂になっていた。その”隠し子”のローリー・イーストウッドも登場して、彼女も含めて初めて8人が一堂に会して話題を呼んだ。長女のアリソン・イーストウッド(47)はアールの娘役で出演している。