「町田くんの世界」まっすぐ過ぎる町田くんが起こすドタバタ劇と奇跡

(2019年6月9日)

町田くんの世界
「町田くんの世界」(ヒューマントラスト渋谷)

商業デビュー作「川の底からこんにちは」(2009年)で第53回ブルーリボン賞監督賞を史上最年少で受賞し、「舟を編む」(2013年)で史上最年少の30歳で第37回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞。「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(2017年)で第91回キネマ旬報ベストテン日本映画ベスト・テン1位を獲得するなど、新進気鋭の石井裕也監督が安藤ゆきの同名コミックを実写映画化した。

主役の町田くんにオーディションで選ばれた細田佳央、そのクラスメートで町田くんがいろいろ面倒を見ようとする猪原奈々に第40回ホリプロスカウトキャラバンのファイナリスト、関水渚。この2人がフレッシュなキャラクターと演技で、町田くんの世界を描く映画の核になっている。

誰にも優しくすることを自然にやってのけ、まっすぐ過ぎて周りから変わり者とみられている町田くんはある日、人が大嫌いなクラスメートの猪原に出会い、何かと世話を焼くようになる。猪原もほかのクラスメートもはじめは町田くんの行動をよけいなお節介とウザがっていたが、次第に町田くんの不思議な世界に巻き込まれて奇跡が起きるというストーリー。

クラスメートと一緒になって観客も次第に町田くんのまっすぐ過ぎるキャラクターや行動とそれが巻き起こす騒動の行方に目が離せなくなる。猪原も不思議な魅力を感じさせ、新しいタイプの女優として活躍する可能性を感じさせる。

岩田剛典、高畑充希、前田敦子、大賀が町田くんとからむ高校生役で共演してドラマを盛り上げる。高畑や前田のセーラー服姿も貴重だ。ほかに池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子といった豪華キャストがわきを固め、異色の青春映画になっている。(2019年6月7日公開)