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「ある船頭の話」 オダギリジョー長編初監督作品でディ―プな世界観を展開

(2019年9月16日)

「ある船頭の話」オダギリジョー長編初監督作品で独特な世界観を映画化
「ある船頭の話」 (新宿武蔵野館)

個性派俳優として数々の映画で活躍しているオダギリジョーが自ら書いたオリジナル脚本で長編初監督を務めた。ひとりの船頭の生きざまを通して、人間らしい生き方を問う意欲作で、主演の船頭役には新藤兼人監督の「石内尋常高等小学校 花は散れども」以来11年ぶりの主演となる名優・柄本明。さらに浅野忠信、永瀬正敏、橋爪功、細野晴臣、笹野高史、伊原剛志、細野晴臣、草笛光子、蒼井優など日本を代表する個性的な演技派、ベテラン俳優に加えて若手俳優・村上虹郎、そして謎めいたヒロイン役に川島鈴遥を抜擢するなど多彩なキャストがそろった。第76回ベネチア映画祭に出品された作品。

■ストーリー

時代は明治と大正のはざまに、主人公の船頭・トイチ(柄本)は川岸の小さな小屋に住み、黙々と渡し船を漕いで豊かな自然に囲まれた山奥に流れる川を往復して村人を送り迎えしていた。トイチを慕って時々やってくる村の若者・源三(村上虹郎)と交流し、ゆったりと時間が流れる静かで平和な日々を送っていたが、片田舎の村にも近代化の波が押し寄せ、川上では大きな橋の建設が進んでいた。そんなある日、上流から流れてきた謎の少女を助け小屋に住まわせるようになってからトイチの人生が大きく変化していく。

■見どころ

撮影監督に独特な映像美を見せる香港映画の巨匠撮影監督クリストファー・ドイル、映画音楽にアルメニア出身の世界的ジャズピアニスト、ティグラン・ハマシアン、衣装デザインは黒澤明監督の「乱」(1985年)で米アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したワダ・エミが担当して謎めいた少女が着た衣装は独特なデザインが際立っていたことなど、国際派スタッフがそろい海外でも活躍してきたオダギリの人脈の広さをうかがわせる。このスタッフに、多彩なキャスト、オリジナル脚本などオダギリの本作にかける意気込みを感じさせる。

船頭を題材にして、近代化に流されて美しい自然や風物が失われていくことを描き、マタギの仁平(永瀬正敏)とその父(細野晴臣)の死をめぐる人間の根源に迫るエピソードや、大自然の神秘と深淵を象徴するような謎の美少女(川島鈴遥)の登場、船に乗り合わせる客たちの様々な会話など、濃密で質の高い作品になっている。
(2019年9月13日公開)