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「1917 命をかけた伝令」 若い兵士の命がけの任務遂行と戦争の悲惨さを"全編ワンカット"映像で描く

(2020年2月15日)

「1917 命をかけた伝令」 若い兵士の命がけの任務遂行と戦争の悲惨さを
「1917 命をかけた伝令」 (TOHOシネマズ渋谷)

若き兵士の伝令の任務の遂行と戦争の現場を全篇ワンカットの映像で描いたサム・メンデス監督の戦争映画。長年映画化の機会をうかがっていたという、監督が祖父から聞いた第1次世界大戦の西部戦線のエピソードを基に映画化した。先日のアカデミー賞で、作品賞と監督賞は「パラサイト 半地下の家族」と同作のポン・ジュノ監督にさらわれたが、撮影賞、録音賞、視覚効果賞の3部門で受賞した。アカデミー賞に先立つゴールデングローブ賞、PGA(全米製作者組合)賞、DGA(全米監督協会)賞、BAFTA(英国アカデミー賞)で作品賞と監督賞を総なめにした。

■ストーリー

第1次世界大戦の真っただ中にあった1917年4月6日、西部戦線でドイツ軍と戦っていた連合軍の1600人からなるデヴォンシャー連隊は後退するドイツ軍に攻め入ろうとしていた。しかしイギリス軍は航空偵察でドイツ軍の後退は罠で進軍すれば壊滅的な打撃を受けるとわかり、作戦中止を命じようとするが電話線が切れてしまっていたため、エンモリア将軍(コリン・ファース)は若いイギリス兵のウィリアム・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)とトム・ブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)に明日の朝までに現地まで行き作戦中止の命令を伝えるよう命じる。デヴォんじゃー連隊にはトムの兄ジョセフ中尉(リチャード・マッデン)もいた。2人は塹壕を走り抜けながら決死の覚悟で目的地を目指す。

■見どころ

アカデミー賞作品賞を受賞した「アメリカン・ビューティ―」(1999年)や「007 スカイフォール」(2012年)、「007 スペクター」(2015年)のアクション大作も手掛けたサム・メンデス監督の集大成といった作品になっている。戦争の悲惨さといったテーマ性もありスペクタクルあり長回しの高度な撮影テクニックなどを盛り込んだ戦争映画になっている。

実際には複数回の長回しによって撮影された映像をワンカットに見えるように編集したものだというが、全編ワンカットに見える手法が実際に戦場にいるような臨場感や、主人公の緊張感や恐怖や息遣いまで伝わってくるようだ。若い兵士に扮したジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマンが熱演。コリン・ファースや大佐役のベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロングらが脇を固めている。またエキストラを大量動員した戦闘シーンも圧巻だ。

ちなみに今年のアカデミー賞が”本命“の「1917」を覆して大番狂わせで韓国映画の「パラサイト」を作品賞・監督賞に選んだのは、「白いオスカー」との批判を受け多様性に目を向け英語以外の映画の壁を破ったこともさることながら、貧富の差といった現代的なテーマ性、笑いの要素も加えたエンターテインメント性やジェット―コースター・ムービーといわれた予想もつかないドラマチックな展開などが「1917」を上回っているところを評価したからではないかとも思った。
(2020年2月14日公開)