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映画「KCIA 南山の部長たち」 朴大統領暗殺をめぐるKCIA部長の苦悩と怒りをイ・ビョンホンが熱演

(2021年1月23日11:30)

映画「KCIA 南山の部長たち」 朴大統領暗殺をめぐるKCIA部長の苦悩と怒りをイ・ビョンホンが熱演
「KCIA 南山の部長たち」(シネマート新宿)

1979年、韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が、大統領直属の諜報機関として絶大な権力を誇った韓国中央情報部(KCIA)の金崔圭(キム・ジェギュ)部長に暗殺された事件を題材にしたフィクションで、昨年韓国で興行収入1位の大ヒットを記録した話題作。大統領を撃った中央情報部のキム・ギュピョン部長(名前を変えてある)に韓国のトップスター、イ・ビョンホン、朴大統領にイ・ソンミン、ギュピョン部長と対立するファク・サンチョン警護室長にイ・ヒジョン、米国で朴大統領を告発した元中央情報部長パク・ヨンガクにクァク・ドウォンなど豪華キャストで、「破壊された男」(2010年)、「スパイな奴ら」(2012年)、「インサイダーズ/内部者たち」(2016年)などのウ・ミンホ監督がメガホンを取った。原作は1990年から6か月にわたって東亜日報に連載されたキム・チュンシク氏の記事をまとめたノンフィクション。

■ストーリー

1961年の軍事クーデターで政権を倒し軍事政権(国家再建最高会議)の議長に就任し、1963年から大統領を務めていたパク・チョンヒ(イ・ソンミン)は、独裁者として君臨していた。大統領直属の諜報機関である中央情報部(通称KCIA)のキム・ギュピョン部長(イ・ビョンホン)は、側近として表と裏の任務をこなし、庁舎が南山にあることから「南山の部長」と呼ばれて恐れられていた。一方で、強硬派の警護室長クァク・サンチョン(イ・ヒジュン)は大統領に取り入り、穏健派のギュピョンにことごとく対立して追い落とそうとしていた。2人はつかみ合いの大喧嘩をしたりするが、大統領はそんな2人を競わせ、時のは「君のそばにはいつも私がついている。し好きにしろ」といって闇の工作をさせるなど意のままに使っていた。そうしたなか、ギュピョンの前任者の元中央部長パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)が米国の下院の公聴会でパク大統領の腐敗を告発。手記を発表することが分かり、ギュピョンは暗殺も辞さない大統領を説得して穏便に済ませるため米国に飛び、ヨンガクを説得して手記を預かることに成功する。ところが手記が何者かの手でマスコミにリークされ大統領の怒りを買い、サンチョン警護室長からも激しく追及され事態は大きく動いていく。大統領の側近との会合から外されたギョピンは会合場所に潜入し隣の部屋から盗聴して、大統領が電話でギョピンを激しく非難し「君のそばにはいつも私がいる。好きにしろ」と常套文句を言うのを聞き、自分の身に命の危機が迫っているのを知り、「命がけで革命(軍事クーデター)を共に戦った」はずの大統領の裏切りに怒りを募らせていく。そして釜山と馬山で起こっていた民主化運動のデモが激化する中、会議でサンチョンが軍幹部を前に戦車でつぶして黙らせろと主張。ギョピンがそんなことをしたら今度はソウルでデモが起きると猛反対するが、大統領はサンチョンの強硬策を採用し戒厳令を発令。ギョピンは追いつ詰められていく。

■見どころ

朴大統領暗殺事件の真相や動機については謎が残るとされているが、映画では事件に基づいたフィクションとして、中央情報部部長ギョピンと警護室長サンチョンの壮絶な権力争いや、ギョピンの仕事に対するプライドや苦悩、パク大統領の独裁政治への複雑な感情、そして「革命の裏切り」に対する怒りなどをイ・ビョンホンがきめ細かく演じて大統領暗殺の闇に迫っている。ほとんど笑わず堅物なサラリーマン部長のような扮装が印象的だ。そして韓国の国民的スター、イ・ソンミンがパク大統領の面影を漂わせながら独裁者をリアルに熱演して暗殺までの40日間がスリリングに展開してゆく。大統領暗殺をめぐるさまざまなドラマやサスペンスが満載で最後までスクリーンに引き込まれる。

ウ・ミンホ監督は観客に向けたメッセージで「この映画は、韓国現代史の非常に大きな事件を背景にした作品です。しかし、そこに登場した人々の感情や内面を覗き見れば、そこには我々が普段抱えている感情に通じる部分が必ずある。本作のタイトルは『南山の部長たち』ですが、別の視点で見ればどこかの『〇〇の部長』の話かもしれない。そんな視点でご覧いただけると幸いです。過去の遠い歴史、過去の事件としてではなく、今の私たちにどのような影響を与えているのか、是非皆さんで話し合ってみていただきたい。この作品の先には、更にドラマチックな未来が続いているはずだと思います。単純にスクリーンの中で終わる映画ではなく、この映画で語り尽くすことのできなかったものが、その外で皆さんを通じて広がっていってくれるならば、これほど幸せなことはありません」(映画のパンフレットから)とこの作品に込めた思いを語っている。
(2021年1月22日公開)