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「ミナリ」 韓国系移民一家の苦闘と希望を描いてアカデミー賞の作品賞など6部門ノミネートの話題作

(2021年3月21日11:50)

「ミナリ」 韓国系移民一家の苦闘と希望を描いてアカデミー賞の作品賞など6部門ノミネートの話題作
「ミナリ」(TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)

農業で成功することを夢見て米アーカンソー州に渡ってきた韓国系移民一家の苦闘と希望を描いた作品で、本年度の第93回アカデミー賞(現地時間4月25日授賞式)に作品賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作品賞の6部門にノミネートされ、昨年の「パラサイト 半地下の家族」に続いてアカデミー賞に波乱を起こすのか注目されている作品。監督・脚本は米コロラド州デンバー生まれの韓国系移民2世のリー・アイザック・チョン。「君の名は。」のハリウッド実写版の監督に抜擢されたことでも注目されている。

■ストーリー

1980年代、農業で成功することを夢見て米アーカンソー州の高原に妻と2人の子供を伴ってやってきた韓国系移民のジェイコブ(スティ―ヴン・ユァン)だったが、妻のモニカ(ハン・イェリ)は荒れ果てた土地と一家の棲家となる粗末なトレーラーハウスを見て驚き不安に駆られル。長女アン(ネイル・ケイト・チョー)と心臓に病気を抱えた幼い弟のデビッド(アラン・キム)に加えて、その後祖母のスンジャ(ユン・ヨジュン)も一緒に住むようになる。幼いデビッドは毒舌で破天荒な祖母に反発して飲み物にいたずらをして両親に叱られたりするが、やがて心を通わせるようになる。祖母は韓国から持ってきた「ミナリ」(セリ)を森の中で密かに育てる。しかし、肝心の農場の作物は売れず、モニカは一家でカリフォルニアに引っ越すことを提案して夫と対立する中、思いがけない危機が訪れる。

■見どころ

アカデミー賞の作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞した「ムーンライト」(2016年)や「レディ・バード」(2017年)などでアカデミー賞の常連になっているスタジオ「A24」と、アカデミー賞作品賞、助演女優賞、脚色賞を受賞した「それでも夜は明ける」(2013年)などを手掛けたブラッド・ピットの映画製作会社「PLAN B」が脚本にほれ込んで製作した作品だという。韓国系移民一家が荒れた土地を耕し様々な問題を抱えながらも希望を捨てずに懸命に生きる姿や、2人子供たちの生活、さらには祖母と孫の交流などを情感豊かに描いている。TVシリーズ「ウォーキング・デッド」のグレン・リー役で知られる韓国俳優スティ―ヴン・ユァンがアーカンソー州での農業に夢を持ち続ける主人公を熱演しアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。また祖母スンジャ役で助演女優賞にノミネートされた韓国の国民的女優ユン・ヨジョンが表情豊かに歯に衣を着せない言動で一家に影響力を持つ祖母を演じて存在感を見せている。夫としばしば衝突する妻役のハン・イェリも好演。そして息子役のアラン・キムが祖母との掛け合いで笑わせたり、姉役のネイル・ケイト・チョーが弟の面倒を見てけなげにふるまうなど2人の子役が貴重な脇役として活躍している。ミナリとは韓国語で独特の強い香りのある香味野菜のセリ(芹)のことで、たくましく地に根を張り、2度目の駿が最もおいしいことから、子供世代の幸せのために、親の世代が懸命に生きるという意味が込められているという。さまざまな困難に遭遇しながらも決してあきらめない一家を象徴するキーワードになっている。(2021年3月19日公開)