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「水を抱く女」 水の精ウンディーネの神話をモチーフにした神秘的ラブストーリー

(2021年4月17日12:45)

「水を抱く女」水の精ウンディーネの神話をモチーフにした神秘的ラブストーリー
「水を抱く女」( 東京・新宿区の新宿武蔵野館)

ギリシャ神話に登場する「水の精ウンディーネ」の神話をモチーフに「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペッツォルト監督が現代の話に置き換えて映画化した2020年製作のドイツ・フランス合作映画。神秘的でミステリアスなウンディーネを演じたドイツの女優パウラ・ベーアが第70回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した。

■ストーリー

ベルリンの都市開発を研究する歴史家のウンディーネ(パウラ・ベーラ)は、博物館のガイドとして働いていた。ある日ほかの女に心を移した恋人のヨハネ(ヤコブ・マッチェンツ)から別れを切り出され、「私を捨てたらあなたを殺すことになる」と告げるが、ヨハネは彼女の前から去ってゆき悲嘆に暮れているときに、潜水作業員のクリストフ(フランツ・ロゴフスキ)と運命的に出会い2人は情熱的な恋に落ちる。クリストフと一緒に潜水したときに、水の中にUNDINEと書かれたレンガを発見し、現れた巨大なナマズの後を追って消えてしまう。やがて失神して水面に漂うウンディーヌを発見してクリストフは蘇生させ、2人は一層深く愛するようになりが、ある日クリストフはウンディーネとヨハネの関係を疑い電話で問い詰め、ウンディーネは釈明するが一方的に別れを告げられてしまう。ウンディーヌはクリストフの仕事場に行き釈明しようとするが、今度はクリストフが潜水中の事故で脳死状態になっていた。ウンディーヌはベルリンに取って返し女と一緒にホテルの滞在していたヨハネをプールで殺してしまう。やがて回復したクリストフは潜水中にウンディーヌを発見する。

■見どころ

「『ウンディーネ』とはラテン語の「unda(波)」に由来し、人間との結婚によってのみ不滅の魂を得ることができる女性の形をした水の妖精」(「水を抱く女」の公式サイトから) だという。「ウンディーネをモチーフにした物語は『愛する男が裏切ったとき、その男は命を奪われ、ウンディーネは水に還らなければならない』というストーリーラインで描かれている」(前同)。そのモチーフはギリシャ神話に登場し、アンデルセンの「人魚姫」などさまざまな戯曲や楽曲、小説などの題材になっている。この水の精ウンディーネの神話を現代の物語にアレンジして展開していくのだが、パウラ・ベーアが”水の精“をミステリアスに演じて存在感を見せている。そして、ウンディーネがクリストフと初めて出会うときにカフェの大きな水槽に小さな潜水夫の人形があり、水槽が突然壊れて2人が水浸しになりウンディーヌが潜水夫の人形に手を伸ばすシーンや、クリストフが潜水作業中に水中で巨大なナマズに遭遇するシーンなど、ミステリアスで神秘的なシーンが映像詩のように積み重ねられていく展開が印象的だ。(2021年3月26日公開)