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「明日の食卓」菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が家族の崩壊と希望を熱演

(2021年6月2日12:00)

「明日の食卓」菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が家族の崩壊と希望を熱演
「明日の食卓」(新宿シネマカリテ)

同じ名前の息子を持つ住む場所も環境も全く違う3人の母親たちが、明るく幸せな生活から思いもよらない崩壊へと向かっていく様子を描いた椰月美智子の小説「明日の食卓」を原作に、菅野美穂、高畑充希、尾野真千子の演技派3人の女優を中心に、「64ーロクヨンー前編/後編」(2016年)、「有罪」(2018年)、「糸」(2020年)などの瀬々敬久監督がメガホンを取った話題作。

■ストーリー

神奈川に住む43歳のフリーライター石橋留美子(菅野美穂)は、2人の息子を育てながら仕事に復帰した。育ち盛りの兄弟はケンカばかりして、しつけに手を焼き長男の悠宇(外川燎)に「お兄ちゃんでしょ!」と強く当たってしまう。ブログ「鬼ハハ&アホ男児Diary」を書いて息抜きをしていたが、フリーカメラマンの夫・豊(和田聰宏)が仕事を打ち切られて家で家事も手伝わずゴロゴロし始め留美子はストレスを募らせていく。

30歳のシングルマザーの石橋加奈(高畑充希)は、借金を抱えコンビニやクリーニング工場の仕事を掛け持ちしながら昼夜がむしゃらに働いていた。そんな加奈にとって一人息子の勇(阿久津慶人)と過ごす時間が唯一の楽しみだったが、勇が抱える寂しさや悩みには気づけないでいた。そうしたなか、借金完済を目前にして、勇が留守番をしていた時に訪ねてきた弟の正樹(藤原季節)に通帳と印鑑を盗まれてしまい、クリーニング工場ではリストラにあい幸せに過ごしていたはずの母子の生活が大きく狂い始める。

36 歳の専業主婦・石橋あすみ(尾野真千子)は、遠距離通勤の夫・太一(大東俊介)を毎朝車で駅まで送っていた。夫の地元の静岡に家を建て、息子の優(柴崎楓雅)は恵まれた環境で健やかに育っているかに見えた。そうしたなか、優の同級生・レオンの母親(水崎綾女)から電話でレオンが優から暴力を受けているととがめられる。優は涙を流して否定するが、後日衝撃的な事実が判明する。優は別の同級生の光一に命令してレオンを殴らせていたことが発覚するが「実験だよ」と言い放つ。うろたえるあすみは夫から「お前のしつけが悪い」となじられ崩壊していく。

■見どころ

菅野美穂、高畑充希、尾野真千子の実力派女優3人がそれぞれの同じ呼び名の息子「ゆう」との関係の崩壊の壮絶なドラマを熱演している。そして3人が演じる子供を抱えるフリーライターや、一人息子を溺愛するシングルマザーや、一人息子を育てる専業主婦が経験する想像を絶する修羅場をリアルに描き、そのどん底の中で光が見えてくるところを描いている。外川燎、柴崎楓雅、阿久津慶人の3人の10代の息子役の俳優も役にはまった演技を見せてドラマを盛り上げている。瀬々敬久監督は「一見平穏で楽しそうな子育て中の三つの家族がゆっくりと崩壊してゆく様子を、決して悲観的にならず最後は希望を持って描いている原作にまず惹かれました。それはどんな家庭にも訪れうる悲劇で、他者の身になって想像するという、今の分断化された世界の中で一番必要なテーマだと思えました。より広い世界につながり映画にしたい、そう思いました」(「明日の食卓」の公式サイトより)とコメントしている。(2021年5月28日公開)