“グランプリ女優”京マチ子さん95歳で死去 生涯独身貫く

(2019年5月15日)

  • 京マチ子
  • 「京マチ子映画祭」(公式ホームページから)

黒澤明監督の「羅生門」などの数々の名作で知られる女優の京マチ子さんが12日午後0時18分、心不全のために都内の病院で死去した。95歳だった。東宝が14日発表した。大阪市出身で、「羅生門」(1950年)がベネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞。さらに「雨月物語」(溝口健二監督、53年)が同銀獅子賞、「地獄門」(衣笠貞之助監督、53年)がカンヌ映画祭のグランプリを受賞するなど主演作が相次いで海外の映画祭で受賞し”グランプリ女優”といわれた。今年デビュー70周年を迎えたのを記念して2月から3月にかけて角川シネマ有楽町で京さんの出演映画を特集する「京マチ子映画祭」(写真=公式ホームページから)が上映された。

生前の遺志で石井ふく子さんら数人の友人が立ち合い14日に密葬を済ませたという。京さんはハワイが好きで、生前ハワイに手配したお墓に入るという。

1936年、小学校卒業と同時に大阪松竹少女歌劇団(OSK、42年に大阪松竹歌劇団=OSKと改称)に入団。娘役スターとして活躍。戦後の48年には日劇ショーなどで、グラマラスなボディとダイナミックな踊りで人気を得た。49年、スカウトされて大映に入社。「痴人の愛」(49年)のヒロイン・ナオミ役で妖艶な美しさを見せて出世作になり、山本富士子、若尾文子とともに大映の看板女優として活躍した。前述の「羅生門」「雨月物語」「地獄門」のほかにも、「偽れる盛装」(51年)、「源氏物語」(同)、「赤線地帯」(56年)、「鍵」(59年)などで大映の全盛時代を支えた。
マーロン・ブランドと共演したハリウッド映画「八月十五夜の茶屋」(56年)で芸者役を演じてゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされた。「鍵」はカンヌ国際映画祭の審査員特別賞、ゴールデングローブ賞の最優秀外国語映画賞を受賞した。 1971年に大映倒産後は「華麗なる一族」(74年、東宝)、「おとこはつらいよ 寅次郎純情詩集」(76年、松竹)などの映画や「犬神家の一族」(TBS系、1977年)などのドラマで活躍した。

黒澤監督は57年に京さんについて「非常に純情で地味な感じの人だし、結婚すれば、いい世話女房になるという気がする」と語っていたというが、本人は結婚することはなく生涯独身を通した。

池畑槙之介は5年ぐらい前にハワイで偶然会ったときに撮影したというツーショット写真を自身のインスタグラムに投稿して「日本人離れしたエキゾチックな雰囲気の中で、日本の古典の凛とした立ち振舞いが、 本当に大好きでした。 心よりご冥福をお祈り致します。合掌」と追悼した。