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大林宣彦監督死去 最新作「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」の公開予定日に

(2020年4月11日)

大林宣彦監督死去 82歳 「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」の公開予定日に
大林宣彦彦監督(「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」の公式サイトから)

映画「転校生」(1982年)、「時をかける少女」(83年)、「さびしんぼう」(85年)の”尾道3部作”などで知られる映画監督の大林宣彦さんが10日午後7時23分、肺がんのため東京・世田谷区の自宅で死去した。82歳。この日は最新作「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」の公開予定日だったが新型コロナウイルス感染拡大で公開が延期になっていた。

大林宣彦監督死去 82歳 「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」の公開予定日に
「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」のポスター(公式サイトから)

「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」の公式サイトでは「4月10日(金)19時23分、大林宣彦監督がご逝去されました」と報告。
「肺がんと診断され、余命の宣告を受けたのは、2016年8月。転移を繰り返すがんと闘いながら、みずからの命を削って、平和をたぐり寄せる映画を完成させた『海辺の映画館-キネマの玉手箱』」としている
「本作は、当初4月10日(金)の公開を予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大状況ならびに新型コロナウイルス感染症対策本部において示された方針等に鑑み、公開が延期となっておりました」と公開延期について明らかにして「大林監督は、公開を迎えるその日まで、ご病気と闘われていました。映画を心より愛し、撮り続けた大林監督、本当にお疲れ様でした。謹んでご冥福をお祈りします」と追悼した。

大林さんは2017年12月に公開された前作「花筐/HANAGATAMI」のクランクインを控えた2016年8月に肺がんのステージ4と診断され「余命6か月」と宣告されたが、抗がん剤治療を続けながら撮影を敢行した。2017年4月にスタッフ向けの試写会で肺がんとの闘病を公表。抗がん剤治療により「余命は未定」になったと話していたという。

大林さんの創作意欲は衰えず、2018年6月に新作「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」の撮影を開始して、2時間59分の大作に完成させた。通算44作目の作品で、大林映画の集大成といわれる。

■「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」公式サイトに寄せた大林監督のメッセージ全文

「自由に生きよ、それが平和の証だ」と父に言われ、当て所も無く18歳で上京した僕に、形見代りに持たせてくれた8ミリ映画を用い、銀座の画廊の一角で自作の8ミリ映画を上映した所、「新しきフィルム・アーチスト誕生」と世界から認定され、以降60年間テレビCM演出を資金に個人映画を創り続けて来ました。東宝映画からの招きで、門外漢が初めてメジャーの撮影所内で撮った『HOUSE/ハウス』から、ジャンルを選択すれば如何なる純文学も商業映画になり得ると学び、あの太平洋戦争の純真な軍国少年であった体験を元に、様々なジャンルの映画にその思いを潜めつつ「厭戦映画」を作り続けて来ました。 「売れない作家の女房になる覚悟」で61年間、僕の映画を支え「私が最初の観客よ」と世界と僕の映画を結びながら共に生きて来た大林恭子と、11歳で『HOUSE/ハウス』の原案者に名を連ねた長女千茱萸、ご亭主の絵の作家森泉岳土、そして親しい旧・新の世代の仲間たちと、今日も映画作りに励んでおります。時代はいつか、個人映画ばかりになり、僕が願った映画作りの世になりました。その個人の自由と権力者の不自由の証を、愉しんで下されば、と。僕の正体が炙り出されれば、愉しいかな。」

■大林宣彦(おおばやし・のぶひこ)

1938年1月9日、広島県尾道市生まれ。1964年、セイコーのテレビCMを皮切りにCMディレクターとして活躍。1977年、「HOUSE」で商業映画を初監督。「転校生」(1982年)、「時をかける少女」(83年)、「さびしんぼう」(85年)の”尾道3部作”で熱狂的な支持を集め、1984年にロケ地巡りで20万人以上の若者が尾道を訪れたという。「時をかける少女」は原田知世の初主演映画で原田がブレイクした作品としても知られる。薬師丸ひろ子主演の「ねわれた学園」(81年)も手掛けた。「青春デンデケデケデケ」(92年)で第17回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。「SADA~戯作・阿部定の生涯」(98年)で第48回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。「この空の花―長岡花火物語」(2012年)、「野のなななのか」(2014年)、「花筐/HANAGATAMI」(2017年)は“戦争3部作”といわれ、反戦のメッセージが込められ込められた。独特の映像美と奇想天外なストーリーで注目された「花筐/HANAGATAMI」は、第72回毎日映画コンクール日本映画大賞などさまざまな賞を受賞し、第91回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画ベスト・テン第2位に選ばれ、監督賞を受賞した。