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演劇「Kiss Me You~がんばったシンプ―達へ~」笑いと涙の特攻隊員たちの青春群像劇

(2021年9月16日15:30)

演劇「Kiss Me You~がんばったシンプ―達へ~」笑いと涙の特攻隊員たちの青春群像劇
「Kiss Me You~がんばったシンプ―達へ~」の東てる美(前列右から3人目)、富山健(中段右から3人目)ほか出演者(中目黒キンケロ・シアター)

第二次世界大戦末期に米軍の軍艦に体当たりの攻撃をした特攻隊(神風特別攻撃隊)の若者たちが出撃するまでの涙と笑いと激情のドラマを描いた演劇「Kiss Me You~がんばったシンプ―達へ~」(脚本・演出:藤森一朗、企画製作:エアースタジオ、15日~20日)が、東京・中目黒キンケロ・シアターで上演されている。東てる美、富山健などのキャストで繰り広げられる激動の青春群像ドラマに涙を流す客も続出して人気を呼んでいる。

戦争一色に染まっていた日本。一見のどかな町で武村軍曹(富山健)率いる小隊は、日々訓練に励んでいたが、奇妙な体操をしたり、大山ハナ(東てる美)が経営する大山食堂で騒いだりしていた。彼らは悩んで、笑って、恋をする、ごく普通の青年だったが、そんな彼らの日常も長くは続かなかった。やがて戦況はひっ迫し、いよいよ出撃の時が迫る。国のため、家族のため、愛する人のために飛び立ってゆく青年たちと、彼らを見守る女性たちの青春群像劇-という内容。(キャストはA組。東てる美、瀬良祐介などはA、B共通)

ちなみに同舞台のタイトルに「シンプー」とあるが、神風特攻隊の隊名の発案者は音読みの「しんぷう」としていたが、当時のニュース映画で「かみかぜ」と訓読みしたのが定着したといわれる。

戦後76年、戦争体験者は少なくなっているが、映画やドラマ、舞台で特攻隊は描かれており、特攻隊の戦闘機が米軍の艦砲射撃の砲弾が飛び交う中軍艦めがけて急降下していく当時の映像も残っている。その神風特攻隊という歴史的事実が舞台の向こう側にあるだけに、出撃が決まった隊員が女性に告白したり、妻と最後の別れをしたりするシーンだけではなく、彼らの恋人や妻やハナが深くお辞儀をするシーンを見ただけでエモーショナルになり、涙を流す観客が続出しているのも目撃した。

特攻隊員を中心にした様々なエピソードをフィクションとして盛り込みながら、前半では武村軍曹が想いを寄せるさっちゃん(半沢ありさ)にあの手この手で告白しようとするが純情すぎてぎこちなくうまくいかない。一方、さっちゃんは二枚目の津田少尉(瀬良祐介)のことが好きだった。武村の部隊の数人がチンピラに扮してやらせで彼女を襲って武村が現れ助けるという荒っぽいシナリオで恋を成就させようとするが、武村が登場する前に、津田少尉が現れチンピラを撃退してしまう。そしてさっちゃんと津田少尉はいいムードになるが、その後、津田の妻・晴恵(我妻美緒)が現れてといったドタバタ劇などで笑わせる。
そして上層部が現れ出撃が決まったことを伝え隊員を激励し、後半は緊迫していき特攻隊員と彼らに思いを寄せる女性たちや母親、妻、食堂大山のハナとの悲しい別れ、さらには隊員たちが本音をぶつけあい恐怖を告白するシーンは、フィクションとはいえ戦争そのものの悲惨さを改めて考えさせられた。
武村軍曹役の富山健が軍曹の一途さ、また恋愛ドタバタ劇などコミカルなシーンも熱演して存在感を見せている。武村の奇妙な振り付けの体操や恋愛ドタバタ劇などコメディタッチの前半と後半の出撃前夜の特攻隊員と彼らを見取り巻く人たちの愛と別れのシリアスな展開の構成が舞台に幅と深みを与え、様々な“シンプ―・エピソード”や青春群像劇のエンターテインメントを詰め込んだ舞台になっている。

演劇「Kiss Me You~がんばったシンプ―達へ~」笑いと涙の特攻隊員たちの青春群像劇
武村軍曹役の富山健

■武村軍曹役(A組)の富山健のコメント。

「今回劇中では一つの部隊が日常を送りながら特攻の指令を受けて特攻に行くまでを描いています。当時のことを調べている方ほど、実際の日本兵はそんなことをしてなかったはずだと思うかもしれません。恋をしたり、自分の弱音を吐いたり、泣いたり。そんなことは何ひとつ普通にやらせてもらえなかった当時の特攻隊の人たちに、今はあなた方のおかげでそういうことが普通にできますよ、本当はあなた達もこういうことがしたかったのでしょうという思いを、副題にもありますように、まず特攻隊の方々にこの劇を捧げている。そういった内容のフィクションになっています。そんな”おれたちの青春”をたっぷり観ていただきたいと思います」