米人気俳優ジャシー・スモレットのヘイトクライムねつ造事件で検察が起訴を取り下げ大波紋

(2019年3月27日)

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	ジャシー・スモレット
  • ジャシー・スモレット(Instagram/@jussesmollet)

米人気テレビドラマ「Empire 成功の代償」で知られる俳優のジャシー・スモレット(36)が、シカゴで2人組の男に襲われ人種差別・同性愛差別のヘイトクライム(憎悪犯罪)の被害にあったと自作自演して16の罪で起訴された事件が意外な展開を見せた。州検察当局は26日、全面的に起訴を取り下げたことを発表した。スモレットは10万ドル(約1100万円)の保釈金の没収と2日間の社会奉仕をするだけで無罪放免となった。
検察の起訴取り下げにシカゴ市長が「正義の隠蔽」と非難し、シカゴ警察が激怒しているという。

アフリカ系アメリカ人で同性愛者であることを公表しているスモレットは1月29日、2人組の男に襲われ、人種・同性愛を差別する言葉で罵倒され、首にロープをまかれ液体をかけられたなどと被害を訴え、シカゴ警察が捜査していた。ところが事件は「Empire」のギャラに不満を持ったスモレットが脅迫状を自分あてに送り、知人2人を雇って襲撃させたヘイトクライムねつ造事件だったとしてシカゴ警察は2月22日、スモレットを逮捕した。
シカゴ警察のエディ・ジョンソン本部長は記者会見で「事件はスモレットが給料に不満があったため注目を集めようとして襲撃事件をでっち上げた」と明らかにした。ちなみにスモレットの1話のギャラは12万5000ドル(約1375万円)だったという。逮捕されたことでドラマから降ろされた。

検察は警察に対する虚偽の報告など16の罪状で起訴。スモレットは一貫して無罪を主張していたが、有罪になると3年以下の禁固刑になるという。ところが起訴取り下げという意外な展開になり波紋を広げている。 芸能サイト「TMZ」によると、ジョセフ・マガッツ検事は、起訴を取り下げた理由についてスモレットに暴行の犯罪歴がないこと、また襲われたと嘘をついたのは暴力的な犯罪ではないことなどと説明したという。
起訴取り下げを受けて記者会見したスモレットは、サポートしてくれたドラマの共演者やシカゴの関係者に対する感謝の言葉を語った。しかし、シカゴのラーム・エマニュエル市長は「正義の隠蔽」だと強い不満を表明。また捜査に当たったシカゴ警察は激怒しているという。

一方、米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、FBI(米連邦捜査局)はスモレットが、自作自演の襲撃事件の直前に「Empire」のシカゴの事務所に自分あてで脅迫文を送った件を捜査しているという。スモレットは襲撃事件の1週間前に、自分あてに雑誌から切り抜いた文字で「黒人のお前は死ぬ」などとつづった文章と木につるされた人形のイラストが描かれた脅迫文を送り付けたという。まだ一件落着とはいきそうもなく予断を許さない展開が続きそうだ。