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ハリウッド特急便
マイケル・ムーア監督が「ジョーカー」を絶賛「この映画を観ないと社会の危険が大きくなる」
(2019年10月9日)
「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)、「華氏911」(2004年)、「華氏119」(2018年)などアメリカの社会問題やトランプ政権の問題などに鋭く切り込んだドキュメント映画で知られるマイケル・ムーア監督(65)が、自身のインスタグラムで同国で物議をかもしている「ジョーカー」を「傑作」と絶賛して「この映画を観なければ社会の大きな危険になるかもしれない」などと”ムーア流“の持論をアツく展開した。
ムーア監督は2日(現地時間)、ニューヨーク・フィルム・フェスティバルに出席して「ジョーカー」を観たという。コメディアンを目指す売れない孤独な大道芸人が最凶のヴィラン・ジョーカーに変貌を遂げるまでを描いた同作を「映画の傑作」と絶賛した。
「すべてのアメリカ人がこの映画に恐怖を感じて避けるべきだと聞いていた。暴力と病気とモラルの崩壊だという。警察は週末に”トラブル“に備えてすべての映画館に配備されるという。われわれの国は深い絶望に沈み、クイーンズの狂気のごろつきどもが核のコードにアクセスするという。しかし、これはある意味でわれわれが恐れるべき映画です」とムーア監督。
そして「私は反対のことを提案する。もしあなたがこの映画を観に行かないなら、社会の大きな危険になるかもしれない。なぜなら、(映画の)ストーリーと提起された問題はとても深遠で避けがたいもので、この芸術作品の非凡な才能に目を背けると、我々に提供された鏡の贈り物を失ってしまうからだ」という。
「鏡の中にはかき乱された道化師がいる。しかし彼は一人ではない。われわれも彼のそばに立っている。『ジョーカー』はコミック映画ではないのです」と指摘した。
「この映画は1970年代のゴッサムシティ(ニューヨーク)のどこかを舞台にしている。そこはあらゆる悪魔の根城で、われわれを支配している富裕層、われわれが仕えている銀行と会社、毎日ニュースをわれわれに与え、われわれは同化すべきだと考えてメディアがある」という。さらに「この映画はトランプに関するものではない。トランプをわれわれに与えたアメリカについての映画だ」と指摘。
そして「ホアキン・フェニックス、トッド・フィリップス(監督)、ワーナー・ブラザース、そしてこの重要な時に、この重要な映画を製作したすべての人に感謝します。この映画が『タクシー・ドライバー』や『ネットワーク』、『フレンチコネクション』、『狼たちの午後』に敬意を払っていることも愛しています。スタンリー・キューブリックが到達したレベルを志す映画を観てからどれぐらいたったのでしょうか」とムーア監督。そして「この映画を観ましょう。あなたの10代の子供たちを連れて行きましょう。決断しましょう」と呼びかけた。
4日に日米同時公開された同作は先週末の北米の興行収入が9620万ドル(約102億円)で10月公開の作品としては過去最高を記録。社会現象になっている。日本でも先週末の観客動員数が、前週1位の「記憶にございません!」を抜いて1位(興行通信社調べ)になるなど世界的に大ヒットしている。