「麻雀放浪記2020」戦後復興期に活躍した伝説の雀士が2020年に降臨!?

(2019年4月8日)

  • 麻雀放浪記2020

  • 「麻雀放浪記2020」(渋谷TOEI)

「凶悪」「彼女がその名を知らない鳥たち」「孤狼の血」などで数々の映画賞を受賞している白石和彌監督が、斎藤工とコンビを組んで阿佐田哲也のベストセラー小説「麻雀放浪記」を大胆にアレンジして映画化した。

1945年の戦後、主人公の雀士・坊や哲(斎藤)は麻雀の最中に伝説の役満「九蓮宝燈」を上がったときに雷が落ちて2020年にタイムスリップする。第3次世界大戦が勃発して東京オリンピックは中止になっていた。街をさまよううちにドテ子(チャラン・ポ・ランタンのもも)に助けられ、芸能プロ社長・クソ丸(竹中直人)に麻雀の腕を買われ、ふんどし姿で麻雀をやりスターになる。
そうしたなか、元五輪組織委員会会長の杜(ピエール瀧)らが仕掛けて東京オリンピックに替わって麻雀大会が開催されることになり、坊や哲はAI搭載のアンドロイド雀士・ゆき(ベッキー)と闘うことになる。ゆきは1945年に入り浸っていたオックスクラブのママ・八代ゆき(ベッキーが2役)にそっくりで、昔の宿敵ドサ健(的場浩司)や出目徳(小松政夫)もやってきて大勝負が始まる。

登場人物やストーリーがとにかく破天荒で、麻雀だけではなくタイムスリップ話や、第3次世界大戦と東京オリンピック中止、AI搭載のアンドロイド雀士などをからめた奇想天外なドラマを映画にした異色作になっている。

ピエール瀧の出演シーンはノーカットで上映

ピエール瀧が3月12日にコカインを使用したとして麻薬取締法違反で逮捕され、4月2日に起訴された事件で公開が危ぶまれたが、「あってはならない罪を犯した一人の出演者のために、作品を待ちわびているお客様に、すでに完成した作品を公開しないという選択肢は取らないという結論に至った」などとして予定通りノーカットで公開となった。
ピエール瀧はそれほど出演シーンが多くないが東京オリンピック組織委員会の会長をカリカチュアライズしたような「杜」役で独特な存在感を見せている。

劇場には「この度、ピエール瀧容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたことは誠に遺憾であります。「麻雀放浪記2020」の公開にあたりましては社会的影響が計り知れないことも重々承知しております。このことを鑑み、「麻雀放浪記2020」製作委員会として対応について協議を重ねました。その結果、劇場につきましては配給を担当する東映の判断でピエール瀧容疑者の出演シーンも含めてノーカットで公開する結論に至りました。ご来場の皆様におかれましては、ご了承の上、ご鑑賞ください。東映株式会社」との異例の張り紙が掲示されていた。

テレビドラマやCMはともかく、映画や音楽(ピエール瀧と石野卓球のユニット「電気グルーヴ」のCD、映像商品の出荷停止、店頭在庫回収、音源、映像のデジタル配信停止)まで蓋をしてしまうのはやり過ぎで「映画や音楽に罪はない」という声が上がり、CD回収などに反対する署名が2万5000人を超えたという。そうしたなか東映の判断は、忖度だの右に倣えだのといった風潮に一石を投じた格好だ。 (2019年4月5日公開)