「さらば愛しきアウトロー」 ロバート・レッドフォード俳優引退作で”伝説の銀行強盗“役

(2019年7月13日)

さらば愛しきアウトロー
「さらば愛しきアウトロー」(TOHOシネマズシャンテ)

「明日に向かって撃て!」(1969年)、「スティング」(1973年)、「追憶」(同)、「華麗なるギャッツビー」(1974年)、「大統領の陰謀」(1976年)など数々の名作、ヒット作でハリウッドを代表するトップスターとして君臨してきた名優ロバート・レッドフォード(82)は昨年8月に俳優引退宣言をしたが、俳優引退作として演じたのが19回銀行強盗と脱獄を繰り返たが1人も傷つけたことがなく、対応した銀行員からは「紳士的だった」「あの人は悪い人じゃないわ」などといわれた実在の”伝説の銀行強盗“フォレスト・タッカーだった。

1980年代初頭の米国で、銀行の窓口の女性や支店長に、ポケットに忍ばせた拳銃を見せて穏やかに微笑さえ浮かべてバッグに現金を入れさせ、セダンで逃走する銀行強盗を繰り返していたフォレスト・タッカー、74歳。偶然知り合った農場を経営する初老の女性ジュエル(シシー・スぺイセク)と惹かれ合うが、足を洗って身を落ち着かせることはしなかった。銀行強盗と脱獄の波乱万丈の人生が楽しいからだという。タッカーを追う刑事ジョン・ハント(ケイシー・アフレック)は、彼の身辺を洗ううちに破天荒だが人間味のある生き方に次第に魅了されていく。

そうしたなか、タッカーは仲間のテディ(ダニー・クローヴァー)とウォラー(トム・ウェイツ)と組んで綿密な計画を立ててかつてない大掛かりな銀行強盗を成功させるが、初老の3人組は「黄昏ギャング」とテレビや新聞で大々的に報道され、FBIも捜査に乗り出して想定外の展開が待ち受ける。 今年4月に公開された「アベンジャーズ/エンドゲーム」にスーパーヒーローを管理する国家組織S.H.E.L.Dの幹部役で出演していたレッドフォードは、派手なアクションをこれでもかと見せる若いヒーローたちに囲まれ、さすがに年齢を感じさせたが、主演作「さらば愛しきアウトロー」は、その老いた顔のしわ一つ一つがハリウッドスターの年輪を感じさせて魅力的に見え、アクションスターが束になってもかなわない存在感を見せて独壇場だった。70過ぎても銀行強盗に喜びを感じる男というのもはまり役でいぶし銀の演技とこれまで演じてきたダンディズムを見せてた。

タッカーを追い続ける刑事を独特の抑制した演技で演じているケーシー・アフレック(43)は、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016年) で念願のアカデミー賞主演男優賞を受賞して、さらに磨きがかかった陰影を漂わせ渋い演技を見せている。そして「キャリー」(1976年)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、「歌え!ロレッタ愛のために」(1980年)で同主演女優賞を受賞した演技派のシシ―・スぺイセク(69)もいい味を出している。さらにはメル・ギブソンとのコンビで人気を呼んだ「リーサル・ウェポン」シリーズのダニー・クローヴァー(72)、シンガーソングライターで俳優のトム・ウェイツ(69)といった演技派がレッドフォードの引退作に花を添えた。

レッドフォードは「普通の人々」(1980年)でアカデミー賞監督賞と作品賞を受賞するなど監督やプロデュ―サーとしても活躍しており、俳優は引退したが今後は監督としてどんな作品を見せてくれるのか注目される。
(2019年7月12日公開)