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「アイリッシュマン」デ・ニーロ、パチーノ、ペシが圧倒的存在感の超大作ギャング映画

(2019年11月29日)

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The Irishman. In select theaters November 1st and on Netflix November 27th.

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トラックの運転手からマフィアの幹部に見込まれ犯罪行為や殺しも行うようになり、やがて大統領に次ぐほどの権力を誇った全米トラック運転組合の委員長ジミー・ホッファのボディガードになって暗躍した実在の男を中心にしたギャング映画。「タクシードライバー」(1976年)、「ディパーテッド」(2006年)、「沈黙―サイレンスー」(2016年)などで知られる巨匠マーティン・スコセッシ監督が、チャールズ・ブラントの2004年のノンフィクション「I Heard Your Paint Houses」を原作に、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシら豪華キャストで映画化した。製作費が膨れ上がって2017年に製作が暗礁に乗り上げたが、Netfixが1億2500万ドルを出資して完成にこぎつけたという。製作費1億5900万ドル(約174億円)の超大作になり2019年11月27日からNetflixで配信された。

■ストーリー

年老いて引退した主人公のフランク・シーラン(デ・ニーロ)が回想するシーンから始まる。全米トラック運転組合(チームスター)の一員として仕事をしていたシーランは、マフィアのラッセル・ファブリーノ(ジョー・ペシ)に見込まれて、「ペンキ屋」(殺し屋)の仕事にも手を染める。銃撃で飛び散った血が家の壁を塗ることからついた名前のようだ。やがてファブリーノの紹介で全米トラック運転組合の委員長ジミー・ホッファ(アル・パチーノ)のボディガードを務めるようになる。原作のタイトル「I Heard You Paint Houses」(君はペンキ屋だと聞いた)は、映画でホッファがシーランに言うセリフで、「君は殺しもやると聞いたが」という意味。シーランはそうだと即答してホッファに気に入られる。マフィアと深く関わり絶大な権力を持ち、当時のケネディ大統領や弟のロバート・ケネディ司法長官を敵視するホッファだったが、マフィアのトニー・プロ(スティーヴン・グレアム)と対立して命を狙われる。実在した”組合のドン“ホッファは1975年に謎の失踪を遂げ1985年に死亡を宣告され真相は闇のままになったが、この映画では原作に基づき”真相”が明かされる。

■見どころ

スコセッシ監督といえばデ・ニーロとジョー・ペシが出演した「グッドフェローズ」(1990年)、「カジノ」(1995年)、レオナルド・ディカプリオ主演の「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002年)と「ディパーテッド」(2006年)があるが、「アイリッシュマン」はそれらのギャング映画の集大成といった作品になっている。前出の2作でコンビを組んだデ・ニーロとジョー・ペシに加えてアル・パチーノが出演して、3人の男の忠誠と友情、裏切りの壮大なドラマが繰り広げられる。

ペシ扮するファブリーノが大統領選でケネディ大統領をマフィアがバックアップしたのはキューバの利権を獲得するためだというくだりや、マフィアがケネディ大統領を暗殺したとほのめかすシーン、アル・パチーノ扮するホッファがロバート・ケネディ議員から組合犯罪で追及されると「ニクソンに献金したから(ケネディ大統領兄弟に)恨まれている」と怒りをぶつけるシーンなど、生々しい歴史上の裏話が随所に登場するのも興味深い。

いかにもマフィアの幹部のような雰囲気を見せるジョー・ペシ。まくしたてるようなセリフ回しで”組合のドン“ホッファを熱演するパチーノ。冷静で物静かな物腰だが、いったん決めたら冷酷に引き金を引くシーラン役で圧倒的な存在感を見せるデ・ニーロ。3人の競演に最後まで引き込まれる。アカデミー賞でアルフォンソ・キュアロン監督の監督賞や外国儀映画賞、撮影賞を受賞したNetflixの映画「ROMA/ローマ」(2018年)に続いて、今作「アイリッシュマン」もアカデミー賞に作品賞・演技賞などで絡んでくるのは間違いないようだ。 (2019年11月27日からNetflixで配信中)