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「はちどり」韓国映画のニューヒロインになった14歳ウニ

(2020年6月23日11:50)

「はちどり」14歳ウニが韓国映画のニューヒロインになった
「はちどり」(東京・渋谷区のユーロスペース)

コロンビア大学院に留学中の1981年に監督した短編「リコーダのテスト」がアメリカ監督協会による最優秀学生作品賞を始め、各国の映画祭で受賞して注目された韓国のキム・ボラ監督(38)の初の長編映画。韓国で昨年8月に公開され大ヒットして、ベルリン国際映画祭など国内外の映画祭で50を超える賞を受賞した。韓国の代表的な映画雑誌の2019年公開映画ベストテンで「パラサイト 半地下の家族」に次ぐ2位に選ばれたという。「パラサイト」のような奇想天外な設定や派手な展開はないが、中学2年生の少女ウニを中心に彼女の日常や彼女を取り巻く韓国社会の問題をドキュメントタッチで繊細に描き静かな共感を呼び起こす。

■ストーリー

1994年の韓国・ソウルが舞台。家族と集合団地で暮らす14歳の中学2年生ウニ(パク・ジフ)の日常が淡々と描かれていく。餅菓子屋を営む父親(チョン・インギ)は、長男に名門ソウル大学に合格するよう叱咤し続ける毎日で、姉のスヒ(パク・スヨン)やウニにはあまり関心がない。兄は受験のストレスでウニに暴力を振るい、姉のスヒは彼氏を家に連れ込んでウニが寝ている前でいちゃついたりしている。母親(イ・スンヨン)は夫の浮気を知り鬱気味と壊れかけている一家。そうしたなか、ウニは通っていた漢文塾の女性教師のヨンジ(キム・セビョク)に心を開いて相談するようになる。ある朝ソンス大橋崩落のニュースをテレビで見て、いつも姉が乗るバスが通る橋で、姉が事故にあったのではないかとパニックになるが、姉は無事だった。やがて塾をやめて連絡が取れなくなっていたヨンジからウニに手紙が届く。

■みどころ

タイトルのはちどりは世界で最も小さい鳥の一つで、羽を1秒に80回もはばたかせて蜜を求めて飛び続ける姿から、希望、愛、生命力の象徴とされているという。それは1990年代の韓国の経済急成長下での受験戦争や家父長制、男尊女卑といった世相の中で成長し、自己主張していくようになるウニに重なる。そしてキム監督の少女時代の体験も投影されているようだ。そのウニを演じるパク・ジフ(16)は、小学5年生のときにスカウトされて芸能界入りし、本作が釜山国際映画祭で上映されて大きな注目を集めた。この作品のヒロイン・ウニの凛とした雰囲気や芯の強い少女を繊細に力強く演じていて最後まで引き込まれる。塾の先生役のキム・セビョクは個性的な演技が印象的で、韓国映画の名脇役チョン・インギがウニの父親役で存在感を見せている。(6月20日公開)