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「MOTHER マザー」長澤まさみが魔性の母親を熱演

(2020年8 月2日11:30)

「MOTHER マザー」長澤まさみが魔性の母親を熱演
「MOTHER マザー」(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

実際にあった少年による祖父母殺害事件に着想を得たシングルマザーと母親のゆがんだ関係を描いた意欲作。長澤まさみが男と行きずりの関係を持ちながら息子に異常な愛情を抱く母親というこれまでになかった役柄に挑戦した作品として注目される。内縁の夫に実力派の阿部サダヲ。息子役にオーディションで抜擢された新人の奥平大兼などのキャスト。 プロデューサーは、「新聞記者」「宮本から君へ」などの意欲的な社会派作品を手掛ける河村光庸。監督は「日日是好日」「光」の大森立嗣。

■ストーリー

シングルマザーの秋子(長澤まさみ)は仕事もせず金がなくなると息子の周平(幼少期・郡司翔)を連れて実家に行き両親にお金をせびっているが、秋子が仕事もせずパチンコに使っていることを知る母親(木野花)や妹の楓(土村芳)に厳しく拒絶される。秋子は息子に異様な執着を見せる一方、息子を学校に行かせず、実家に行かせてお金をもらおうとするなど息子を集金の使いに使うなどしていた。そうしたなか、ゲームセンターで知り合ったホストの遼(阿部サダヲ)と知り合いアパートに連れ込んで同棲するようになる。生活保護費を使い果たし、電気もガスも止められ、生活に困った秋子と遼は、以前から秋子に好意を持っていた市役所の職員の宇治田を恐喝するが、遼が宇治田を刺してしまい、3人はホテルを転々とする逃亡生活を続ける。やがて秋子は妊娠したことをきっかけに遼は去ってゆく。5年後周平(奥平大兼)は16歳になり学校にも行かず妹・冬華の面倒を見ていた。秋子は相変わらず仕事をせず、次第に破滅へと追い詰められていくなかで周平は惨劇を起こす。

■みどころ

「海街diary」(2015年)、「散歩する侵略者」(2017年)、「50回目のファーストキス」(2018年)、「マスカレード・ホテル」(2019年)、「キングダム」(2019年)、「コンフィデンスマンJP プリンセス篇」(2020年)とシリアスな役からコメディもこなし幅広い役柄を演じて今や日本映画界のトップ女優の一人として活躍する長澤まさみだが、これまでにない究極の汚れ役に挑戦して新境地を見せた。息子の異常な執着を見せながら、一方では金をせびる走り使いに使う。自堕落で奔放で、男たちを色仕掛けで誘惑して取り込む魔性の女ぶりを発揮する。その心の闇の深い部分も演じた。阿部サダオやラブホテルの従業員役の仲野大賀らを相手に濃厚過ぎるベッドシーンも演じている。
一方、現実社会で実際に起きている少年による親や祖父母の殺害事件の背景やゆがんだ家族関係。そして秋子のようなまともな生活感覚が全くない壊れた母親を持つ周平の心の葛藤や、母親のために罪を犯しても母親が好きだという心理など、さまざまな問題を考えさせられる作品になっている。(7月3日公開)