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「ファンファーレが鳴り響く」 殺人欲求のある女子高生とイジメを受ける男子高校生が繰り広げる異色のスプラッタームービー

(2020年10月14日11:20)

「ファンファーレが鳴り響く」 殺人欲求のある女子高生とイジメを受ける男子高校生が繰り広げる異色のスプラッタームービー
「ファンファーレが鳴り響く」(©「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会) )

「されど青春の端くれ」で2019年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のグランプリ&シネガーアワード(批評家賞)の2冠を受賞した森田和樹監督の注目の最新作で、今年のゆうばり映画祭のオープニング作品として上映された商業作品のデビュー作。クラスメイトからいじめを受けている引っ込み思案の男子高校生・神戸明彦と、殺人欲求に取りつかれたクラスメイトの女子高生・七尾光莉の殺人を繰り返しながらの逃避行を描いた異色の青春スプラッターロードムービー。明彦に「デイアンドナイト」、「ラ」、「花と雨」などに出演する笠松将。光莉を「左様なら」、「アイネクライネナハトムジーク」、「楽園」などに出演している祷キララ。ほかに川瀬陽太、黒沢あすか、大西信満、日高七海、上西雄大、木下ほうかなどが脇を固めている。

■ストーリー

高校生の神戸明彦(笠松将)は吃音症が原因で同じクラスの沢田(河野宏紀)らのグループにイジメを受けていた。そんなある日、明彦は同じクラスの七尾光莉(祷キララ)が河原で野良猫をナイフで殺しているのを目撃する。光莉は、自分の生理の血を見たときに自分以外の血も見たくなったといい、死ぬ瞬間の弱々しい感じに興奮して殺人欲求に取りつかれていることを告白する。そして明彦にいじめグループの殺害を持ち掛ける。それをきっかけに明彦はホームルームでいじめを受けていることを訴えるが、沢田らは逆上して明彦をリンチしようと追いまわす。グループの三沢(八条院蔵人)が河原で明彦を捕まえて暴行するが、河原で猫を殺していた光莉が、三沢をナイフで刺し殺してしまう。2人は町を離れて逃避行を続け、途中で出会った汚い大人たちを殺しながら逃亡劇を繰り広げる。

■見どころ

殺人欲求に取りつかれた女子高生・光莉を祷キララが不気味な存在感を見せて演じている。「人が死ぬ瞬間って見てみたい」と言うが、一方で「世の中を変えたい」とも言い「馬鹿な大人なら殺しても良いと思う」「今の総理大臣でもぶっ殺そうよ」と言い放ち、アナーキーなシリアルキラーぶりを発揮しながら殺人を繰り返すのがなんとも不条理で不気味だが、衝動の暴走で突き抜けて行き、ときにシュールでさえある。明彦役の笠松将も光莉の殺人を止めようとしながらも次第に巻き込まれていく屈折した高校生をリアルに熱演している。23年前に大病を患い現在も闘病中という森田監督は「そんな中でも映画に縋り、ニュースを見ては伝えたいことが出てきて、自身の欲を沢山入れたのが今作です。枠にハマる映画にはしたくない。好きだと感じた方々を面白おかしくする為だけな撮り方作り方はしたくない。今の自分にできる精一杯の事を」とコメントしているが、そんな監督の思いが詰まった作品になっている。(2020年10月17日、新宿K’sCinemaほかでロードショー)