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「ストックホルム・ケース」ストックホルム症候群を生んだ人質銀行強盗事件

(2020年11月14日11:00)

「ストックホルム・ケース」ストックホルム症候群を生んだ人質銀行強盗事件
「ストックホルム・ケース」(東京・渋谷のヒューマントラストシネマ渋谷))

誘拐事件や監禁事件などの被害者が犯人と長い時間を過ごすなかで犯人に連帯感や好意的な感情を抱くようになる「ストックホルム症候群」の語源となったスウェーデンの銀行強盗事件を基にしたクライム・サスペンス映画。イーサン・ホークとノオミ・ラパスなどのキャストでロバート・バドロー監督がメガホンを取ったカナダ・スウェーデン合作の作品。

■ストーリー

1970年代のスウェ―デンのストックホルム。何をやってもうまくいかない前科者のラース(イーサン・ホーク)は、銀行に押し入り銀行員のビアンカ(ノオミ・ラパス)ら3人を銃で脅して人質にとって、警察署長に要求をのまないなら人質を殺すと宣言して犯罪仲間のグンナー(マーク・ストロング)を刑務所から釈放させることに成功する。さらに、人質と交換に多額の現金と逃走に使う車を要求して、グンナーと逃走することを計画する。警察はラースらを銀行に閉じ込める作戦を取り、報道陣が集まり事件は長期化するなか、ラースとビアンカたち人質の間に奇妙な共感が生まれていく。

■見どころ

強硬派の警察署長と人質の命を盾に銀行に立てこもり様々な要求を突きつけるラースの攻防戦が5日間にわたってスリリングに展開されて最後まで目が離せない。そして極限状況になかでラースと銀行員のビアンカが次第に惹かれ合っていき、お互いを命がけで守ろうとする”ストックホルム症候群“が発生してゆく過程をイーサン・ホークとノオミ・ラパスが熱演している。劇中にボブ・ディランのヒット曲「新しい夜明け」「今宵はきみと」「明日は遠く」「 トゥ・ビー・アローン・ウィズ・ユー」などが流れ、自由の国アメリカに憧れ銀行強盗を手段にアメリカに逃亡しようとするラースの心情や、1970年代当時のスウェーデンの雰囲気を醸し出す。ビアンカをはじめ3人の人質はラースら犯人に協力するようになるのだが、その原因を作ったのは事件解決のためには人質の犠牲もやむを得ないと考えているかのような警察側の強硬路線を犯人と人質が察知したからだったのではないか。そうした事件の構図について考えさせられる作品になっている。(2020年11月6日公開)