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映画「日本独立」 終戦直後に憲法作成をめぐってGHQと渡り合った吉田茂と白洲次郎の苦闘

(2020年12月16日14:10)

「日本独立」 終戦直後に憲法作成をめぐってGHQと渡り合った吉田茂と白洲次郎の苦闘のドラマ
映画「日本独立」(©2020「日本独立」製作委員会)

終戦直後のGHQの占領下で日本の再出発と独立のためにGHQと渡り合ったのちの首相の吉田茂と、その右腕の白洲次郎の苦闘を描いた実録映画。憲法作成にまつわる熱いドラマなどが描かれる。特殊メイクで吉田茂になり切った小林薫をはじめ、浅野忠信、宮沢りえ、柄本明、渡辺大、松重豊、伊武雅刀、佐野史郎、石橋蓮司らの豪華キャストで、監督・脚本は「女囚さそり」シリーズ(1972年~73年)や「誘拐報道」(1982年)、「花園の迷宮」(1988年)、「プライド 運命の瞬間」(1998年)などの伊藤俊也。

■ストーリー

1945年8月15日、第二次世界大戦で敗戦した日本はGHQ(連合国最高司令官総司令部)の占領下に置かれ、連合国最高司令官マッカーサー(アダム・テンプラー)が第一生命ビルの総司令部で指揮を執った。昭和天皇(野間口徹)とマッカーサーのツーショット写真が新聞に掲載されて国民は敗戦の事実の衝撃を受けた。そうしたなか、外務大臣に就任した吉田茂(小林薫)は、日本再出発のために旧知の仲で、日本の敗戦を予測して実業界から退いて妻(宮沢りえ)と東京郊外に引っ越して農業に専念していた白洲次郎(浅野忠信)を呼び寄せ、GHQとの交渉役となる終戦連絡事務局の仕事を託す。吉田は「占領はすぐ終わる。だが、その間の対応を日本が間違えると、一度負けたどころか、二度も三度も負けることになる」といい、その思いを共有した白洲はケンブリッジ大学留学経験がある抜群の英語力でGHQと交渉していくが、GHQは全体的な権力で、戦争犯罪人を逮捕し、憲法草案作成の極秘プロジェクトを立ち上げ、天皇を象徴として戦争放棄の条項を含む憲法草案を日本に突き付け、勝ち目のない戦に白洲は苛立ち、「従うふりしてやり過ごす。早くGHQに退散してもらって、早く独立することだ」という吉田と対立する。

■見どころ

まずは共演者も最初は小林薫とはわからなかったというほど、特殊メイクで見事に変身を遂げた小林演じる吉田茂が存在感を見せている。そして浅野忠信が熱演している白洲次郎の存在とGHQとの交渉で果たした役割が再現されるなど終戦直後のGHQと日本の関係の中で2人が果たした役割が描かれている。特に、憲法草案の作成をリードしたGHQと吉田、白洲や国務大臣・松本(柄本明)らの対応のドラマは終戦直後を憲法成立の観点から描いた作品として見ごたえがある。

伊藤俊也監督は「戦後の日本を振り返る時に、アメリカとの関係というのは強く意識せざるを得ないものですが、そういうプロセスの中で、戦後の日本を規定した二大事件は、東京裁判(極東国際軍事裁判)、そしてもう一つが日本国憲法の成立だと考えています。『プライド 運命の瞬間』(1998年)では、東京裁判がどのようなものであったかを描きました。そして、どうしてももう一つの事件、日本国憲法の成立にかかわる映画を作りたいと思い、『プライド 運命の瞬間』を作ってから2~3年経った頃、シナリオを作ったのです。かなり改題して現在のシナリオになってはいますが、基本的にはその時に作ったものです」とコメントしている。

また、同作には戦艦大和に副電測士として乗船し1945年4月の坊ノ岬沖海戦で米軍空母艦載機部隊の猛攻撃で撃沈されたが生還して「戦艦大和ノ最期」を書いた小説家・吉田満(渡辺大が演じている)のエピソードも描かれている。
伊藤監督は「『戦艦大和ノ最期』は、美しい文章と戦艦大和の生き残りとしての思い、亡くなった沢山の戦友達への思いが描かれているという意味で、文学的価値や歴史的価値が高いものだと思います。それがGHQの検問に引っかかって、日本が講和・独立した後にようやく出版が認められた。GHQは言論の自由を謳いながら、その一方で出版させたくないものには徹底的に弾圧を加えた。その両刀使いというのが日本人に今日まであるある種の誤解を残したポリシーであったと思います。その辺を憲法制定の話と同時に重要なエピソードとして描けたのが、今回ユニークなところだと思います。本作の中で、『戦艦大和ノ最期』をいち早く文学的に評価した文芸評論家・小林秀雄の台詞にもありますが、軍国主義で検閲されたというよりも、死んでいった日本人と生き残った日本人との絆を絶たれたということ。戦前の日本を否定されたところで戦後日本のレールを敷かれて歩まされるという、まさに世界第一の戦略国家アメリカに仕切られて日本の戦後ができてしまった、その無念さというのを吉田満のエピソードで描けたのではないかと思っています」と「日本独立」に込めた思いを語っている。
(2020年12月18日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開)