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「痛くない死に方」 在宅医と患者と家族の”死に方“をめぐるヒューマンドラマ

(2021年3月14日14:20)

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「痛くない死に方」(シネスイッチ銀座)

尼崎市で在宅医として活躍する在宅医療のスペシャリスト長尾和宏氏のベストセラー「痛くない死に方」「痛い在宅医」をモチーフに、在宅医と患者と家族の物語を、柄本佑、坂井真紀、余貴美子、大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二などの演技派俳優のキャストで映画化した。脚本・監督は「TATTO〈刺青〉あり」「BOX袴田事件 命とは」「赤い玉」などの高橋伴明。

■ストーリー

在宅医療に従事する河田仁(柄本佑)は、末期の肺がん患者・大貫敏夫(下元史朗)を担当することになる。娘の智美(坂井真紀)は父親のために「痛くない在宅医」を選択したのだが、激痛に苦しみながら死んでいくのを見て、病院から家に連れ戻したのが間違いだったのかと自責の念に駆られる。河田も自分の処置は適切だったのかと悩み、先輩医師の長野浩平(奥田瑛二)に相談すると、肺がんよりも肺気腫を疑って処置すべきだったと指摘され、悔恨の念に駆られ、長野の元で在宅医としての現場を見学させてもらい、在宅医としてどうあるべきかを模索して行く。2年後、新たな末期の肺がん患者の本多彰(宇崎竜童)を担当することになり、看護婦の中井春菜(余貴美子)と本多の家で妻のしぐれ(大谷直子)が見守るなか治療に当たる。河田は以前とは全く違う患者への向き合い方をするようになり、陽気な本多に寄り添いながら、管につながれただけの不自然な「溺死」をすることなく、無駄に苦しまないで最後を迎えるように導いてゆく。

■見どころ

高橋伴明監督はクランクイン前のコメントとして「65歳を過ぎた頃から「死」というものを意識し始めました。自分はどのように死にたいのか……。そんな時「在宅医療」という言葉に出会い、心にヒットしました。この映画は私の「死に方の提案」です。ローバジェットながら理想のスタッフ、キャストが集結してくれました。重いテーマですが、楽しく観て、深く考えていただければ幸いです。この作品が遺作だと思って頑張ります」(公式サイトから)と語っていた。医学の進歩で「延命治療」が可能になった一方で、「死に場所や死に方」を自由に決めることはできないのかという問題について問いかけている。高齢化社会が進むなか切実な問題として注目される。
柄本佑が矛盾や葛藤を抱えながらも在宅医師としてのあるべき姿を模索していく在宅医師を熱演して存在感を見せている。また在宅のベッドの上で激痛に苦しみ呼吸困難になり食事も排泄もままならなくなる患者を下元史朗がリアルに演じ、対照的に宇崎竜童は俳句を楽しみ河田や看護師に軽口をたたきながら最期を迎えてゆく患者を豪快にかつ軽妙に演じている。また奥田瑛二や坂井真紀、大谷直子などの演技派がそろい、「生と死」について考えさせられる一方で、ユーモラスな人間ドラマもあって深みがあり見ごたえのある作品になっている。(2021年2月26日からシネスイッチ銀座などで公開中)