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「ブラックバード 家族が家族であるために」オスカー女優2人が母親の決断をめぐる家族の葛藤を熱演

(2021年6月9日11:15)

「ブラックバード 家族が家族であるために」オスカー女優2人が母親の決断をめぐる家族の葛藤を熱演
「ブラックバード 家族が家族であるために」(©2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED)

難病に冒され病状が進む中、重大な決断をした母親をみとるために2人の娘とその家族や恋人が集まり最後の週末を過ごすドラマをスーザン・サランドンとケイト・ウイィンスレットのオスカー女優2人の初共演で描いた作品。ピレ・アウグスト監督のデンマーク映画「サイレント・ハート」(1914年)を、同作の脚本家クリスチャン・トープがアメリカでの映画化に向けて脚色して、「ノッティングヒルの恋人」(1999年)、「ウィークエンドはパリで」(2013年)のロジャー・ミッシェル監督が濃密で深淵なヒューマンドラマに仕上げた。

■ストーリー

ある週末、医師のポール(サム・ニール)と妻のリリー(スーザン・サランドン)が暮らす瀟洒な海辺の家に娘たちが集まってくる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)が進行して体の自由が利かなくなりつつあったリリーは、間もなく食事もできなくなり声も出なくなりながら生きながらえることを嫌い、重大な決心をして医師の夫ポールにも理解を得て、家族と最後の時間を一緒に過ごそうとしていた。長女のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)は母の決意を受け入れてはいるが、揺れ動く気持ちは隠せず、夫マイケル(レイン・ウィルソン)の行動に苛立ったり、家族だけで過ごすはずがリリーの親友のリズ(リンゼイ・ダンカン)がいることに納得がいかなかった。ジェニファーの15歳の息子のジョナサン(アンソン・ブーン)は祖母の家を訪問する目的を両親から聞いていなかったが、祖父のポールから計画を聞かされて心を揺さぶられる。次女アンナ(ミア・ワシコウスカ)は、くっついたり別れたりしていたゲイの恋人クリス(ベックス・テイラー=クラウス)を伴ってやってくるが、母親の決断に納得がいかず、その地域で尊厳死は認められていないことから止めるために警察に通報すると言い出して長女のジェニファーと衝突する。そうしたなか、8人全員が同じテーブルを囲みそれぞれの思いを語り合い感情を溢れさせる”最後の晩餐“を迎える。食事が終わった後でポールとリズの秘密を目撃したジェニファーは、一夜明けてアンナを巻き込んで母親の決意を覆そうと説得を試みてひと悶着起きる。

■見どころ

美しい自然に囲まれた海辺の家を舞台に、8人の登場人物が尊厳死という重いテーマをめぐって心を揺さぶられ、それぞれの思いをぶつけあうディープなドラマに引き込まれ、改めて尊厳死について考えさせられる。「デッドマン・ウォーキング」(1995年)でショーン・ペン演じる死刑囚のスピリチュアル・カウンセラーになる女性を演じてアカデミー賞主演女優賞を受賞したスーザン・サランドンと、レオナルド・デイカプリオと共演した大ヒット作「タイタニック」(1997年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされてブレイクし、「愛を読むひと」(2008年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したケイト・ウィンスレットの2人のオスカー女優が圧倒的な存在感を見せて安楽死をめぐり葛藤する母娘を熱演している。
そして、次女アンナ役のミア・ワシコウスカ、ノンバイナリー(男女のいずれか一方に限定しない性別の立場を取る人)を公表しているクリス役のベックス・テイラー=クラウス、ジョナサン役のアンソン・ブーンが個性的なキャラクターを見せ印象的な演技でこの映画に多様性を加えて脇を固めているのも見どころになっている。
最後の夜にクリスマスパ―ティをしようというリリーの提案で、豪華なクリスマスツリーとディナーとマリファナが用意され、最後までジョークを言ってみんなを笑わせるリリーは、みんなにプレゼントを渡し、それぞれが思いを語り合う”最後の晩餐“のシーンは、笑いあり涙あり感動あり、母娘の口論もありで人生の賛歌と人生の深淵をエモーショナルに描いている。
(6月11日(金)よりTOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー)