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「キネマの神様」沢田研二、菅田将暉らが活動屋たちの青春と50年後の奇跡を熱演

(2021年8月9日11:45)

「キネマの神様」沢田研二、菅田将暉らが活動屋たちの青春と50年後の奇跡を熱演
「キネマの神様」(TOHOシネマズ渋谷)

山田洋次監督が人気作家原田マハ氏の同名小説を原作に、沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、宮本信子、小林稔侍、北川景子、寺島しのぶ、前田旺志郎などの豪華キャストで映画化した松竹映画100周年記念映画。菅田とW主演で主人公を演じることが決まっていた志村けんさんが昨年3月、クランクイン後に新型コロナウイルスに感染して急逝し、沢田研二が代役を務めてコロナ禍の中撮影が行われ完成。公開が2010年12月から2021年4月に延期され、さらに延期になり満を持して8月6日に公開となった。「数々の名画を生み出してきた松竹映画100年の歴史を見つめ、これから100年の映画界へのバトンになってほしいという希望が込められた作品」(公式サイトから)

■ストーリー

無類のギャンブル好きで闇金の借金を抱え酒浸りの主人公ゴウこと円山郷直(沢田研二)は妻の淑子(宮本信子)や娘の歩(寺島しのぶ)から見放されるほどのダメおやじの生活を送っていたが、ある日旧友の名画座の館主・テラシンこと寺林新太郎(小林捻侍)に、若き日のゴウ(菅田将暉)が助監督を務めた昔の映画を見せられ映画に情熱を燃やした青春の日々を思い出す。50年前、ゴウと撮影技師のテラシン(野田洋次郎)は松竹撮影所で働く仲間で、ゴウは時代を代表する出水宏監督(リリー・フランキー)の助監督としてスター女優の桂園子(北川景子)に可愛がられながら監督を目指して日々奮闘していた。テラシンから撮影所の前の食堂の娘の淑子(永野芽郁)に恋をしていことを告白され、2人の仲を取り持とうとしたりするが、淑子はゴウが好きでひと悶着起きる。やがてゴウが「キネマの神様」で監督デビューするが、撮影初日にセットから転落してけがをしたのをきっかけに映画をあきらめ帰郷。淑子は桂園子の手助けでゴウの後を追う。そして半世紀後の2020年、「キネマの神様」の脚本を見つけた孫の勇太(前田旺志郎)がゴウの才能を見抜き脚本を描き直して脚本家の登竜門・木戸賞に応募することを計画しゴウは映画への情熱を取り戻す。

■見どころ

映画は50年前の松竹撮影所を舞台に、ゴウとテラシンを取り巻く名監督やスター女優、撮影所前の食堂の娘、撮影スタッフらの世界と、2020年の現代のゴウと妻、娘、孫の家族と名画座の館主になったテラシンを中心にした世界の2つから構成されている。その2つの世界を行ったり来たりしてドラマが進む。ゴウを菅田と沢田、テラシンを野田と小林、淑子を永野と宮本が演じているが、新旧の実力派が違和感なくつながりながら映画を愛する活動屋たちをめぐる笑いあり、涙ありのハートウオーミングなドラマを熱演している。
主演の志村さんの死去は新型コロナ感染が原因となったこともあり芸能界だけでなく社会全体に衝撃を与えたが、「キネマの神様」の監督・出演者・スタッフに大きな影響を与えたことは想像に難くない。そうしたなか、山田監督と会った翌日に代役を引き受けることを快諾したという沢田の志村さんへの想いや決意がスクリーンから伝わってくる。沢田と志村さんはかつて同じ渡辺プロに所属し、「8時だョ!全員集合」などで沢田がコントをやるなど共演することも多かった。そして菅田将暉も若き日のゴウを生き生きと演じている。さらには永野芽郁がマドンナ的存在の淑子をはつらつと好演、宮本信子や小林稔侍が円熟した存在感を見せている。スター女優・桂園子役の北川景子が往年の銀幕のスター女優をほうふつとさせるオーラを振りまき絵になっている。
山田監督が「寅さんシリーズ」など数々のヒット作、名作を撮影した松竹大船撮影所は1936年1月から2000年6月まで神奈川県鎌倉市大船にあった。淑子が働く実家の食堂は実際に撮影所前にあった食堂がモデルになっているという。かつての映画のセットや機材などから、撮影所前の食堂も再現され、山田監督が描きたかったという当時の大船撮影所の活気にあふれた様子をうかがわせる。映画愛を中心に友情、恋、家族の絆から現在のコロナ禍の問題も描かれるなど様々な要素が詰まった作品になっている。
(2021年8月6日公開)