Plusalphatodayツイッター

「シー・イズ・オーシャン」9人の女性の”海への深い愛“とスーパーキャリア

(2021年9月14日12:30)

「シー・イズ・オーシャン」9人の女性の”海への深い愛“とスーパーキャリア
「シー・イズ・オーシャン」((©SHE IS THE OCEAN, INWAVES PRODUCTION. ALL RIGHTS RESERVED.)(配給:レイドバック・コーポレーション)

プロサーファーになる夢に向かって進むバリ島の少女、ハワイのスター・プロサーファー、サメと一緒に泳ぐ「サメの魔術師」、20メートルを超える高さから海に飛び込むダイビングの欧州チャンピオン、救急救命士のサーファーなど年齢、職業、国籍は異なるが海と深くかかわる9人の女性へのインタビューを行い”海への深い愛“と大自然の奥深さや美しさを斬新な映像と独特の感性で描いた異色のドキュメント映画。
監督・脚本はドイツ・ドレスデン出身のインナ・ブロヒナ。2005年、ロシアのテレビ・ラジオ・ジャーナリズム大学を卒業。2000年から09年までロシアのテレビ局でプロデュ―サー、ジャーナリストとして勤務。2010年制作会社インウエーブス・プロダクションを設立。2012年初の長編ドキュメンタリー映画「オン・ザ・ウエーブ」を監督。ロシアでは初めての長編サーフィン・ドキュメンタリーで、世界中の映画祭から高い評価を受けた。この成功の後に、海が女性的なルーツを持ち、人々が海を「SHE」と名付けたというインドネシアの伝説に触発され本作「シー・イズ・オーシャン」(原題:She is the ocean)に取り組んだ。同作はホノルル・レインボウー・フィルム・フェステイバル2018のベスト・ドキュメンタリー・フィルムなど8つの賞を受賞した。

「シー・イズ・オーシャン」9人の女性の”海への深い愛“とスーパーキャリア
「シー・イズ・オーシャン」((©SHE IS THE OCEAN, INWAVES PRODUCTION. ALL RIGHTS RESERVED.)(配給:レイドバック・コーポレーション)

■ 出演者

冒頭に登場するのは2016年、WSLビッグ・ウエーブ・アワードで、史上初めて男女オープンでバレル(チューブ)のコンテストが行われ優勝したプロサーファーで、DJ、女優としても活躍するケアラ・ケネリー(43)。授賞式のスピーチで「私に“女だからムリ”と言ってきた人々に本当に感謝したい。今日ほど女性であることを誇りに思った日はありません」と語る。このドキュメントのテーマの一つになっている女性のパワーや魅力を象徴するシーンになっている。

そしてハワイのノースショアのパイプラインに挑戦するサーファー達を見ながら、サーフボード・シェイバーのブルース・ハンセルが語る。1954年オハイオで生まれたハンセルはパイプラインを乗りこなすことを目指し大会での優勝を夢見たが、その夢はかなわなかった。だが「娘はうまいよ。俺とは違う。闘争心があるんだ。俺よりもずっと競技にむいている」と語る。
その娘・少女チンタ・ハンセン(トップの顔写真)は、伝説のサーファー、ハンセルとバリ島の女性との間で生まれ、母親は出てゆきシングルファーザーのハンセルが育てている。チンタはバリ語で「愛」だという。父親がノースショアの巨大なパイプラインを征服することができなかったことを知り、父の目標を引き受けようとしている。初めて出場したサーフィンの大会で優勝し「世界チャンピオンになることが夢。最高のサーファーになる」と語り屈託なく笑う。

「シー・イズ・オーシャン」9人の女性の”海への深い愛“とスーパーキャリア
「シー・イズ・オーシャン」((©SHE IS THE OCEAN, INWAVES PRODUCTION. ALL RIGHTS RESERVED.)(配給:レイドバック・コーポレーション)

次に登場するのはハワイのサーファー、ココ・ホー。(上の写真)父親のマイケル・ホーはサーフィン界のレジェンドで「キング」と呼ばれている。叔父デレク・ホーは世界チャンピオンで「ハワイの誇り」といわれ、兄メイソン・ホーはハワイアンサーフィン新世代の天才といわれる。サーファー一家に育ったココは7歳で最初に波に乗り、8歳でプロになり、18歳でルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれる。20歳の時に世界で2番目に人気のある女性サーファーに選ばれ、世界ランキング3位を獲得と目ざましい活躍を見せる。そんな彼女がハワイ・オアフ島のサンセットビーチで華麗なサーフィンを見せ「最初に海との結びつきを感じ愛情を抱いたのは、学校の前にサーフィンをしたとき。父と2人きりで楽しんだ。全てのことに意味があった。父には海のことを教わったわ。サーフィンの技を覚える前にまず学ぶべき重要なことは、海を知ることとその力強さだとね。世界中のどこでも私は波の知識を駆使する」と語る。そして「趣味でやるにも世界を目指すにも、海と自分を信じることが何よりも大切なの。海の中で女性は最高に輝ける。それをきちんと理解し自分の美しさを表現する」と語る。

「サメの魔術師」といわれるのはハワイ出身の科学者で海洋生物学者、海洋保護活動家のオーシャン・ラムジー(31)。「私は地上より水中にいるほうが心地よく優雅に感じるの。家族といるより多くの時間をサメと過ごしている」と語る。サメの研究と保護に人生を捧げ、大きなサメと一緒に泳ぎ、サメが「キラーマシン」ではないことを力説し、普通の人が自然環境でサメと一緒に泳ぐことができる独自の機会を実現する「One Ocean Diving」を設立。そのツアーの模様も紹介される。
「7~8歳のころサメに出会い、一目ぼれして以来夢中になってしまった。サメは完璧でほかの海の生物とは一線を画す。15年以上サメと泳いでいる。サメは私を感動させ続けてくれるわ」と語る。「『ジョーズ』などの誤って描かれたサメを見て怖がってしまう人も多い。その気持ちはよく分かる。でも実際は違うの。だからサメの美しさを伝えることに意義を感じる」という。「”サメの魔術師”と呼ばれる私が操るのは人間。実際はサメの方が私を操っている」などと彼女が語る”サメ学“はディープでまさに”目からウロコ“ものだ。

他にもドイツ出身のハイダイバーで、クリフダイビングで8回ヨーロッパチャンピオンになっている。アンナ・バーダー。
ハワイ・マウイ島在住のサーファーで救急救命士の顔も持ち、ビッグウェーブ・サーファー&WSL「ベストパフォーマンス2016」のチャンピオン、アンドレア・モーラー。
冒頭に登場したジェンダーを超えて活躍するプロサーファー、ケアラ・ケネリー。
チリ在住のフリーダイバーでバレエダンサーのローズ・モリーナ。
伝説のサーファー、故トッド・チェッサーの母でハワイのサーフボードのエアブラシ・アーテイスト、ジニー・チェッサー。
海洋生物者で探検家、米国初の女性主任科学者のシルビア・アールが出演している。

「海を深く愛する9人の女性たちのストーリー」が繰り広げられる。1人1人が1本のドキュメント映画になりそうな華麗なキャリアの持ち主で、彼女たちが語る海の魅力や海への畏敬の念、深い愛、さらにはサーフィンなどの個々のテリトリーについての考え方、知識などは素晴らしく濃密で魅力にあふれるドキュメントになっている。
(2021年9月17日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー)