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「偽りの隣人 ある諜報員の告白」野党大統領候補を監視・盗聴する諜報員の苦悩と決意

(2021年9月15日11:30)

「偽りの隣人 ある諜報員の告白」野党大統領候補を監視・盗聴する諜報員の苦悩と決意
「偽りの隣人 ある諜報員の告白」(© 2020 LittleBig Pictures All Rights Reserved.)

1985年、軍事政権下の韓国で民主化を求めて次期大統領に出馬を決意した野党の政治家が自宅軟禁され、隣家で24時間監視・盗聴する任務に就いた諜報員との攻防と交流のドラマを描いた社会派サスペンス。諜報員の監視チーム長のユ・デグォンにTVドラマシリーズ「応答せよ1994」(13年)でブレイクし「レッド・ファミリー」(13年)、「善悪の刃」(17年)、「ヒマラヤ~地上8000メートルの絆」〈16年〉などのチョン・ウ、野党政治家ィ・ウィシクに「大統領の理髪師」(04年)、「親切なクムジャさん」〈05年〉、「国際市場で逢いましょう」(15年)などのオ・ダルスなどのキャストで、「7番目の奇跡」(2011年)で韓国のアカデミー賞といわれる大鐘賞で4部門を受賞し、韓国歴代興収10位の大ヒットを記録したィ・ファンギョン監督の最新作として注目され、昨年12月韓国で公開され初登場1位になった話題作。

■ストーリー

1985年、軍事政権による民主派への弾圧が熾烈を極める中、次期大統領選に出馬することを決意した野党政治家ィ・ウィシク(オ・ダルス)は海外から帰国するが、空港に到着すると迎えに来た仲間の目の前で国家安全政策部に逮捕され、自宅軟禁を余儀なくされる。当時左遷されていたが愛国心が人一倍強いユ・デグォン(チョン・ウ)に目を付けた国家安全政策部の幹部(キム・ヒウォン)は大金と家を買い与え監視チームのリーダーに抜擢。ウィシクの隣の民家に機材を持ち込んで部下の2人を含めて3人で24時間監視し盗聴してテープに録音した。ある日の夜、デグォンが屋上でタバコを吸っているとウィシクが隣家の屋上に現れ、普通の隣人に接するように気さくに声を掛ける。慌てたデグォンだったが、ウィシクの大学生の娘と幼い息子が差し入れを持ってくるなど、ウィシクの一家と交流するようになる。ウィシクに頼まれ幼い息子と3人で銭湯に行くが、その間にデグォンの部下2人がウィシクの家に潜入して「共産主義者」に仕立て上げるためのメモを置いてくる。
そうしたなか、ウィシクと銭湯に行ったことを上層部にとがめられ足蹴にされるなど暴行される。さらにはウィシクの家を訪れた親友の野党幹部が諜報員に尾行され練炭自殺に見せかけて殺害され、ウィシクも暗殺しようとしているのを知り、デグォンは動揺し上層部に疑問を抱くようになる。

■見どころ

金大中元韓国大統領が1985年に自宅軟禁された事件をモチーフにしたフィクションといわれる。当時の韓国を取り巻く状況を背景に取り入れながら、次期大統領を目指して自宅軟禁され、党を壊滅させようと激しい弾圧にさらされる野党政治家ィ・ウィシクと、隣家に陣取る監視チーム長のデグォンの敵対的な緊張関係で始まり、対極にいる2人がやがて交流していき、最後にはウィシクの家族愛や国民を愛し民主化と平和に命を懸ける姿に心を動かされていく展開に最後まで目が離せない。その波乱のドラマをチョン・ウとオ・ダルスが熱演している。また、軍事政権下で暗躍する諜報機関のトップを演じるキム・ヒウォンの”悪役“ぶりも板にはまっている。社会派の内容だが、デグォンの部下2人がウィシクの家に潜入する時に家政婦に見つからないように必死に動き回るドタバタ劇や、正体がばれないように必死に取り繕うデグォンのコミカルな立ち回りなど笑いもあり、2人のそれぞれの家族への愛など人情話も絡んでな社会派サスペンスのエンターテインメントになっている。
(2020年・韓国、配給:アルバトロス・フィルム、提供:ニューセレクト)(9月17日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー)