「燃えよ剣」岡田准一が新選組・土方歳三の剣に生きた壮烈な闘いを熱演

(2021年10月117日20:50)

「燃えよ剣」岡田准一が新選組・土方歳三の剣に生きた壮烈な闘いを熱演
「燃えよ剣」 (TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

幕末に近藤勇、沖田総司らとともに新選組を結成して京都守護職の配下で倒幕派勢力の制圧に奔走した土方歳三の壮烈な闘いやお雪との恋などを描いた時代劇大作。土方に岡田准一、近藤に鈴木亮平、沖田に山田涼介、お雪に柴咲コウなどの豪華キャストで「クライマーズ・ハイ」(2008年)、「わが母の記」(2012年)、「日本の一番長い日」(2015年)、「関ケ原」(2017年)、「検察側の証人」(2018年)などの原田眞人監督が脚本・監督を務めた。原作は歴史小説界の巨匠・司馬遼太郎の小説「燃えよ剣」。

■ストーリー

新政府軍との戦いで新選組と共に函館の五稜郭を占拠した新選組福長の土方歳三(岡田准一)が、これまでの新選組の闘いを語るところから映画は始まる。武州多摩(現在の東京都の三多摩地区)で近藤勇(鈴木亮平)や沖田総司(山田涼介)らとともに”バラガキ”(乱暴者)と呼ばれてケンカに明け暮れながら剣をみがいて武士を目指していた土方。やがて近藤、沖田らと京都に向かい、幕府の京都守護職・松平容保(尾上右近)の預かりで新選組を結成し、幕末の京都で討幕派を斬りまくる。土方はたぐいまれな手腕と厳しい法度で新選組を統率する。そうしたなか初代新選組局長・芹沢鴨(伊藤英明)の酒乱や女癖、借金などの乱脈ぶりが目に余り、土方と近藤は芹沢を粛清し、土方は近藤を局長にして、沖田は一番隊組長となり新選組の盤石の体制を築く。そして元治元年6月5日、有名な池田屋事件を起こす。京都の旅籠・池田屋に長州藩・土佐藩などの尊王攘夷派の志士が集結して、御所に火を放ち徳川慶喜(山田裕貴)、松平容保らを暗殺して孝明天皇(坂東巳之助)を連れ去るという計画を謀議しているとして、近藤、沖田を先頭に近藤隊が池田屋に突入して尊攘志士らを襲撃。遅れて別の場所にいた土方隊も到着して血で血を洗う壮絶な死闘になり、尊攘派に大打撃を与え新選組の名が世にとどろく。
土方は斬り合いで負傷したときに手当てをしてくれた絵師・お雪(柴咲コウ)と想いあうようになり愛を深めてゆく。一方で沖田の労咳(結核)が悪化してゆく。やがて薩長同盟が締結され幕府は急速に弱体化し、慶喜は大政奉還を表明して政権を朝廷に返上して幕府は事実上崩壊。戊辰戦争で敗北し新選組は幕府軍と共に江戸へ撤退。その後近藤は官軍に投降してとらえられ斬首されるなか、土方は時勢がどうなろうとも幕府に殉ずる覚悟を決め東北を転戦した後に函館の五稜郭を拠点にして迫りくる官軍と最後の決戦に挑む。

■見どころ

動乱の幕末に新選組副長として局長の近藤勇の右腕として組織を率いた土方歳三の激動の生涯を描いた見ごたえのある時代劇の超大作になっている。岡田准一が武州多摩の”バラガキ“と呼ばれた暴れん坊から幕末に名を轟かせた新選組の中心人物となり、尊王攘夷派を震え上がらせるが、300年続いた徳川の江戸時代が終焉を迎え明治政府が誕生する時代の流れに抗して函館・五稜郭を占領して最後まで政府軍と戦った土方の壮烈な生き様を岡田准一が熱演している。五稜郭で撮影して小姓・市村鉄之助に遺髪と写真を渡して日野の家族のもとに届けるよう命じたといわれる写真の土方をほうふつとさせる岡田・土方の五稜郭での姿が印象的だ。近藤が投降・斬首され沖田が病に倒れる中、最後まで新選組を名乗り1869年(明治2年)6月20日、函館の地で官軍に突撃して34歳の短い生涯に幕を閉じた土方の躍動や信条、男気などを迫真の斬り愛のシーンを交えながら描き切っている。
山田涼介の沖田総司も秀逸だった。土方への尊敬と愛情を隠さない沖田。肺を病んで病床に就いている沖田に土方が刀を抜いて顔に近づけるシーンがあったが沖田は妖しく輝く白刃を見ながら「どんなに美しい女性より美しい」という。あのセリフに屈指の剣豪を誇りながらも病魔に潰えていった沖田の滅びの美学とでもいったものが描かれていたように思う。池田屋事件の壮絶な斬り合いや函館戦争など圧巻の戦闘シーン、さらには抒情的に描かれた土方と近藤、沖田、そしてお雪との人間ドラマが絡んで最後まで目が離せない展開が続き魅了される時代劇になっている。
(10月15日より全国公開中)