「最後の決闘裁判」マット・デイモン、ベン・アフレック、リドリー・スコット監督による決闘裁判をめぐる迫真の人間ドラマ

(2021年10月19日21:45)

「最後の決闘裁判」マット・デイモン、ベン・アフレック、リドリー・スコット監督による決闘裁判をめぐる迫真の人間ドラマ
「最後の決闘裁判」(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

14世紀末にフランスで実際に行われた国王が認めた最後の合法的な決闘を題材にしたエリック・ジェイガーのノンフィクション「決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル」を映画化した作品。アカデミー賞脚本賞を受賞した「グッド・ウイル・ハンティング/旅立ち」(1997年)以来35年ぶりにベン・アフレックとマット・デイモンのコンビが脚本を担当して出演し、アダム・ドライバー、ジョディ・カマーらが共演。監督は「エイリアン」(1979年)、「ブレードランナー」(1982年)、「グラディエーター」(2000年、アカデミー賞作品賞)、「オデッセイ」(2015年)などで知られる巨匠リドリー・スコット。

■ストーリー

百年戦争のさなかにあった14世紀末のフランスが舞台。壮絶な肉弾戦の先頭で勇猛果敢に戦い続けるノルマンディの騎士ジャン・ド・カル―ルジュ(マット・デイモン)はある日、美貌の妻マルグリット・ド・カルージュ(ジョディ・カマー)から、夫の友人の従騎士ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)にレイプされたと衝撃の告白をされる。ジャックは日頃からアランソン伯ピエール2世(ベン・アフレック)に取り入って優遇され、武骨なジャンは疎まれて冷遇されたため確執があった2人だが、最近仲直りをしたばかりだった。こともあろうに妻を凌辱され激怒するジャン。マルグリットはジャックを告発して罪を償わせるといい、ジャンも重罪犯としてジャックの処刑を望むがジャックは無罪を主張する。
そうしたなか、ジャンは国王のシャルル6世に決闘で決着をつけることを直訴。国王が史上最後となった決闘を認めてどちらかが倒れるまで戦うことになる。中世ヨーロッパで広く行われていた決闘裁判は決闘によってどちらが正義かを決定する。ジャンが勝てばレイプが認定され、ジャックは死を免れたとしても死罪となる。しかし、夫のジャンが負ければジャンが死罪となるだけでなく、妻のマルグリットも偽証の罪で全裸にされて火あぶりの刑にされる。マルグリットはそれでもレイプ被害の主張を曲げなかった。そして決闘場で国王やアランソン伯、大群衆が固唾をのんで見守る中、鎧兜に身を固め槍を手に馬に乗った2人がお互いをめがけて突撃する死闘が始まる。

■見どころ

ジャン夫婦や母親、従者らが住む勇壮な城や内部での生活、アランソン伯ピエール2世の豪華絢爛な城の内部の様子や騎士や兵士たちの甲冑姿、貴族の女性の豪華絢爛な衣装など、中世のフランスがスクリーンに再現され、当時にタイムスリップしたかのようにリアルで重厚だ。そしてマット・デイモンとアダム・ドライバーが正義と命を懸けた圧巻の決闘シーンを繰り広げる。そうした中繰り広げられるレイプをめぐるドラマは、誇り高き騎士ジャン、ジャンが不在の時に城にいるマルグリットに愛を告白して追いかけ強引に関係するジャック、レイプ被害を告発するマルグリットの3人のそれぞれの視点から3章に分けて描かれ、真実を浮かび上がらせていくが謎も残る。泣き寝入りも多かったといわれる14世紀当時にレイプ被害を自ら告発して最後まで主張を曲げなかったマルグリットに近年のハリウッドの関原を告発する「#MeToo」運動が重なり、現代に通じるテーマを突き付けている。国王が決闘を認める前に行われる裁判で、マルグリット、ジャン、ジャックの3人がそれぞれの主張を繰り広げる裁判シーンもスリリングだ。そして決闘ではエモーショナルな結末が待ち受ける。ベン・アフレック、マット・デイモン、リドリー・スコット監督のハリウッドを代表する3人ならではの見ごたえのある作品になっている。
(2021年10月15日より全国公開中)