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映 画
「ひらいて」「彼女はひとり」のとっておき情報
(2021年10月20日18:50)
映画評論家・荒木久文氏が、「ひらいて」と「彼女はひとり」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、10月18日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 荒木さん お願いします。
荒木 今日はねー 女子高校生 学園モノ 2本…と言うと、え、女子高校生モノ? いい歳した親父が何やってんだー、気持ちわりーなー、と言われそうですが…
今回のこの2本はね、ただの女子高生の学園モノじゃありません。
毒もあれば渋みも、えぐみもある大クセモノ映画です。
だいたい健全な学園ものなんて、だいちゃんとのこの番組では、はなから取り上げるつもりはありませんよね。
鈴木 そうですよね。
荒木 まずは1本目、10月22日公開「ひらいて」という作品です。
ベストセラー芥川賞作家 綿矢りささんの小説「ひらいての映画化作品です。
鈴木 話題になっているじゃないですか。
荒木 ストーリーです。
女子高校生の愛ちゃん。明るく、アイドル顔負けの可愛さ、しかも成績優秀で超人気者。この愛ちゃんは、同じクラスの男の子「たとえ」君という変わった名前の男の子にひそかに片思いをしています。
たとえ君は、かっこは悪くないんですが、目立たなくて、教室でもひっそりと文庫本を読んで過ごすような地味―なタイプ。
愛ちゃんは、彼の聡明さと、どことなく謎めいた雰囲気の彼にずっと惹かれていましたが、なかなか彼にアプローチできずにいました。
ある日 愛ちゃんはたとえ君が、誰かからの手紙を、大切そうに読んでいる姿を目撃します。そしてある夜、愛ちゃんは、その手紙を盗んでしまいます。
その手紙は、別のクラスの陰気でジミーな、しかも若年性の糖尿病を患っている女子高生・美雪ちゃんが、たとえ君に書いたものだったのです。
学校でも目立たない美雪とたとえが秘密の交際をしている…ということを知ります。
そのことを知った愛ちゃんは、いいようのない悔しさで心が張り裂けそうな想いで、もう、爆発しそうーになります。…嫉妬で、混乱しますが、彼女はその気持ちを隠して、なんと美雪ちゃんに、近づいていくんですね。
まず 美雪ちゃんのくちびるを…して、そればかりか…。
鈴木 えー!! えー!!
荒木 そこから愛と美雪、そしてたとえの三角関係が始まります…。
まずこの主人公・愛ちゃんがすごいヒロインで、性格が悪い。むしろ悪すぎと言えるかもしれません。
鈴木 病みすぎますね。この方…。
荒木 こんなのヒロインにしていいのかっていうぐらいですよね。
相手に振り向いてもらわない、つまり好きな人が全く自分に興味を向けてくれなかったとわかると、その矛先が「好きな人」の「好きな人」にいく。それ直接ディスルんじゃなくて奪いに行って壊しに行く?というパターン。
鈴木 怖いですねー。
荒木 どうですか?こういう何が何だかわからないことに突っ走っちゃうこのタイプ、だいちゃんの恋愛経験やまわりには、こんな娘いましたかね?
鈴木 さすがに、ここまで・・・この映画の愛ちゃんみたいな子はねー。
荒木 そうでしょうね。でもねー、愛ちゃんという女性の中に、昔の自分自身自分を見ている人、あんなに極端ではないでしょうけど…そういう要素 必ずありますよという人もいましたよ。聞いてみると…。
鈴木 嫉妬心はね、ありますよね。
荒木 こんなこと言うと怒られちゃうかもしれませんが、女性のほうが、好きだけど通じなかったら、壊してやるみたいなところがあって、この愛ちゃんには なんか若い女性の持っている嫌な部分を集めたような存在にも見えてくるという人もいますよね。
綿矢りささんの小説の女の子は、こじらせ系が多いのですが、この作品の主人公の愛ちゃんはとてつもなくこじらせで、極端です。
主人公の高校生・木村愛を演じているのは、『樹海村』などで知られる山田杏奈さん
山田杏奈さん、最近いいですよね。意志の強そうな唇 頭の回転がいかにも速そうな瞳…
身のこなしもキュートですよね。気の強そうな…内側の火のように激しい気性―。
鈴木 そうですよね。気性の激しさがにじみ出ているのがいいですよね。
荒木 アイドルみたいなぽっちゃり顔なんですけどね。
また、愛ちゃんが恋するたとえ君役は映画初出演の作間龍斗くんHiHi Jets/ジャニーズJr.のメンバー。
愛の同級生でたとえくんの秘密の恋人美雪役は芋生悠さん。昨年の「ソワレ」という作品では村上虹郎と共演していました。 個性的ないい女優さんですよね。注目です。
監督は26歳の女性 新鋭・首藤凜さん。脚本もですね。演出にも非常にセンスを感じます。
そうですね。本も読んでみたんですけど、文章をそのまま上手く伝えている部分とデフォルメしている部分とあって、非常にバランスいいですね。
この愛ちゃんの恋愛というか、若い人の恋愛、私みたいな年寄りから見れば、経験も交えていえば、高校生や中学生のころは目の前の恋愛や恋愛ごっこに夢中になりますよね。
だいちゃんは若い人から恋愛相談なんてたくさん受けるでしょう?
鈴木 ありますねー、リスナーさんからの恋の相談ていうのはね。
荒木 特に三角関係なんかに関しては難しいでしょうね?
鈴木 正直 あまり難しい相談が来ると…番組ではピックアップできないものありますよ。
荒木 そうでしょうね。あまり気楽には言えないよね。
鈴木 その人にとってはすごく重要な問題ですからね。
荒木 わたしみたいな老人から言わせると、若い時は、今この恋が実らなきゃ、もう一生恋なんかできない、しないなんて思うんでしょう。そこで私、もう終わりなんて思うでしょうけどそんなことないですよね。なんて言ったらいいか、不動産屋さんじゃないけど 後になってどんどんいい「物件」や「出物」があるからさー。
鈴木 あはは、 そうそう この年になればわかりますよね。
荒木 まあ、いっぱい楽しいことありますよ。目の前の恋だけじゃなくって
もうちょっと長いタームで見たほうがいいでしょうねというしか言いようがないね。
鈴木 そんなこと年寄りが言ったって通じる訳がないですよ。あはは。
荒木 私たちも これからだよね。恋愛…そんなことないか…。
まあ、狂気の恋愛もいいよね。そんなことで・・「ひらいて」10月22日公開です。
もう一本この作品の主人公も半端じゃない…どころかちょっと犯罪ギリギリかもね。
とんでもない女子高校生がヒロインの作品 まあ、学園ドラマですよね。
「彼女はひとり」 10月23日公開です。
主人公は高校3年生の女の子 澄子。彼女は一年前、橋から川に身を投げて自殺を図ったものの、死ぬことができずに生き残ってしまいました。彼女のお父さんはどこかに引っ越そうと言うのですが、彼女は自分の意思で今の家に残ることを選び、その結果1年留年して下の学年に入って、学校に通っています。
その彼女、学校で幼なじみの男の子秀明君が女性教師とひそかにおとなの交際しているという秘密を握ってしまいます。
すると、彼女はなんと、その秘密をネタに秀明君をじわりじわり脅迫し始めるのでした。
鈴木 これも怖いなー!! この子…。
荒木 そうですよね、さあ、だんだん、この女子高校生の悪魔のような本性が見えてきますが、そもそも彼女はなぜ自殺を図ったのか?そして霊も見えるという彼女…。さあ、彼女は誰も想像しない行動に出ます…。
というこれも半端ないブラック高校生。ホラー的要素も強くあります。
鈴木 だいぶ ホラーっぽいですねー。
荒木 そうですね。監督は中川奈月さんという、まったくの新人女性なのですが、自分が通っていた、立教大学大学院映像身体学科の修了制作として手がけたもので、脚本の完成度がとても高かったということから、黒沢清作品などを多数担当してきた撮影監督さんなどが参加して作りあげた作品なのですが、黒沢清さんのお弟子さんということになりますかね。黒沢さんも大変ほめています、
全体を通してうまいなあーと思えるのは、言葉での説明を多くしないでなんとなくにおわせながら進める…これが一貫して意外性とストーリー展開に魅力を与えていますよね。
確かにたどたどしい部分や、まあ、「あら」とは言いませんが、そこここにちょっと舌足らずな部分、それから幽霊設定や描写の部分に?が付くとかはありますが、このようなひとひねりしたブラックな学園ドラマを、これだけのレベルでまとめ上げる手腕は大したものだと思います。
鈴木 荒木さん、絶賛ですね。
荒木 インディーズ映画の登竜門の田辺辺・弁慶映画祭の賞のほか、第15回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のSKIPシティアワードなどを受賞しています。
非常に魅力があって惹かれた作品です。
鈴木 有望ですね。
荒木 主演の女子高校生役は福永朱梨さん。暗い瞳がとても印象的です。独特の存在感 悪意とゆがんだ性格を旨く表現していますよね。
また、無名の俳優さんが多く、ほとんど名前の知られていない俳優さんばかりですので、普通の高校生や 教師、親などみんな、リアリティがありますよね。
是非、見てください。「彼女はひとり」10月23日から公開です。
今日ご紹介した2本の映画 両方とも女優さん、監督とも暴走女子高生や学園生活の破壊に通じる独特の世界観、とても若い女性のものとは思えない感覚を垣間見られて面白かったですよ。すごい才能も感じました。
鈴木 二本とも面白そうですね。
荒木 はい、特に「彼女は一人」は短いですから、60分ぐらいしかありませんので。是非 どうぞ。
鈴木 荒木さん、ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。