「リトル・ガール」「私は女の子」という7歳サシャと家族の闘いの迫真ドキュメント

(2021年11月18日21:45)

「リトル・ガール」「私は女の子」という7歳サシャと家族の闘いの迫真ドキュメント
「リトル・ガール」(11/19(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開)((C) AGAT FILMS & CIE – ARTE France – Final Cut For real – 2020)

男の子として生まれたが「私は女の子」といい続け女の子として生きることを望んだフランスの7歳のサシャと家族の闘いを記録した迫真のドキュメント映画。監督のセバスチャン・リフシッツは、これまでもジェンダーやセクシャリティをテーマにした作品を撮り続け、カンヌ国際映画祭に4回、ベルリン国際映画祭に4回正式出品を果たし、世界的に高く評価されている。今作の「リトル・ガール」も2020年ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に正式出品され、モントリオール国際ドキュメンタリー映画祭ピープルズ・チョイス賞 など様々な賞を獲得している。トランスジェンダーのアイデンティは肉体が成長する思春期に芽生えるのではなく、幼少期で自覚されることについて取材を始めていた過程で、サシャの母親カリーヌさんに出会いこの作品が生まれたという。

■内容

フランス北部のエーヌ県に住むサシャは、出生時性別は男性だった。映画はサシャが鏡を見ながら髪飾りを選んでいるシーンから始まるがどう見てもとても可愛らしい女の子だ。母親が「サシャは自分が女の子だと思っています。思っているではなく実際女の子です」と語る。2歳半か3歳の頃には「女の子になりたい」といっていたという。
「あの子が大変なのは母親のせいだ」といわれ、学校でも「サシャが女の子だと主張するのは親のせいでは?」といわれたという。
4歳のとき「女の子になりたい」といい続け「それは無理」というとサシャは泣き始めるので、ひどいことを言ったと後悔する。そして調べるにつれ深い世界だと知ったという。ワンピースが欲しいといわれて戸惑いながら一緒に買いに行った。サシャはワンピースを着て鏡の中の自分を射て幸せそうにしていたという。「それを見て私も気にしないことにした」という。

母親は「女の子を望んだせいだと自分を責めた」といい、父親は「知ったときはびっくりしたがサシャはサシャだ。女の子として生きていいと思っている。親として手助けしないと自由に生きられない」という。

「リトル・ガール」「私は女の子」という7歳サシャと家族の闘いの迫真ドキュメント
「リトル・ガール」(11/19(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開)((C) AGAT FILMS & CIE – ARTE France – Final Cut For real – 2020)

サシャは学校で「女の子みたいだと男子に拒まれるし、女子にも『男のくせに』と拒まれる」という。最大の問題は、学校の先生たちが理解せず、サシャを「女の子」として認めようとしない。スカートをはきたいが赦されず、母親は「大人たちがサシャの幼少期を奪っている」と憤る。そしてサシャを連れてパリに行き小児精神科医に見てもらう。母親あ「妊娠したときに”女の子がいい“と願った」ことが原因ではないかと悩んでいることを打ち明けると、医師は「答えは単純です。現在”性別違和“と呼ばれているものです」という。「未だ原因はよくわかっていませんが、親が異なる性を望んで起きるものではない」といわれる。 「女性の服を着せたり、女の子と呼んだりしても問題ないか」と聞くと「子供の望み通りにして構わない」といわれる。

医師から学校での様子を聞かれると、サシャは多くを語らなかったが、その時見せたサシャの大粒の涙に彼女を取り巻く環境がまだ偏見に満ちていて彼女に大きなプレッシャーを与えていることをうかがわせた。

「リトル・ガール」「私は女の子」という7歳サシャと家族の闘いの迫真ドキュメント
「リトル・ガール」(11/19(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開)((C) AGAT FILMS & CIE – ARTE France – Final Cut For real – 2020)

母親は医師に学校に手紙を書くように依頼して、医師は「サシャは性別違和で専門的ケアが必要。出生時の性と自認する性の相違に苦しんでいる。そのため家庭や学校などでサシャを受け入れる取り組みが必要。サシャを女性と認め女性扱いを」と書いた。
その後、女友達のローラはサシャを女の子と呼んでくれるようになり、ローラを家に呼ぶなど少しずつ好転していくが、バレエ教室では「サシャ君」と呼ばれて男の子用の服を着せられる。そして学校側はなんと3か月先に医師と会うことを提案する。
父親は「サシャは女の子の服装をして学校に行ける日を心待ちにしている。サシャにとっては当然の権利だけど学校のハードルは高い。サシャの担任に事情を理解してもらえず、校長も聞く耳を持たなかった。見下したような態度で我々に話してくる。私利私欲しか頭にない男だ。でも騒ぎ立てるわけにはいかない。サシャは見世物じゃない。平穏な暮らしを守ってもらわないと」と学校の対応を非難した。やがて夫妻と校長の話し合いの日が来て、夫妻はある決意を胸に秘めて学校に向かう。
「私は女の子」「女の子として生きたい」と7歳にして自分のアイデンティに忠実に生きようとする少女サシャと、彼女を守り彼女の自由を取り戻そうと決して諦めずに闘い続ける両親、姉、兄ら家族が現状を切りひらいてゆく姿を余すところなくとらえ「性別違和」の深層に迫って感動を呼ぶドキュメンタリーになっている。
(2021年11月19(金) より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開)