「ギャング・オブ・アメリカ」伝説のマフィアの巨大な犯罪ビジネスと数奇な人生

(2022年2月1日15:00)

「ギャング・オブ・アメリカ」伝説のマフィアの巨大な犯罪ビジネスと数奇な人生
「ギャング・オブ・アメリカ」(2022年2月4日(金)新宿バルト9ほか全国公開)(© 2021 MLI HOLDINGS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.)(配給:アルバトロス・フィルム)

全米最大の犯罪組織を率いて禁酒法時代から戦後までアメリカの暗黒街を支配した伝説のギャング、マイヤー・ランスキー(1902年~1983年)の血塗られた犯罪歴や壮大な賭博ビジネス、数奇な人生などを描いたクライム・サスペンス・アクション大作。ランスキーの晩年を「バグジー」(1991年)、「ピアノレッスン」(1993年)、「ユリシーズの瞳」(1995年)などで知られる名優ハーヴェイ・カイテル、若き日のランスキーに「オーヴァーロード」のジョン・マガロ、ランスキーにインタビューする作家に「アバター」(2007年)などのサム・ワーシントンなどのキャストで、「The Abandoned」(2015年)で監督デビューしたエロン・ロッカウェイが監督・脚本を担当した。

■ストーリー

1981年、マイアミ。売れない作家デヴィッド・ストーン(サム・ワーシントン)は伝説のマフィア、マイヤー・ランスキーの伝記を書くことになり、ベストセラーを狙って年老いたランスキー(ハーヴェイ・カイテル)にインタビューを重ねる。ランスキーが生い立ちから犯罪組織のトップに上り詰めるまでの活動や戦中の政府に協力した反ナチ工作などを語る構成で、血塗られた犯罪歴やアメリカ社会の闇が描かれる。
ランスキーは「俺が生きているうちは、誰にも読ませるな」と条件を付けて自分の人生を赤裸々に語り出す。ユダヤ系ロシア人として生まれ、1912年、10歳の頃にニューヨークに移住。若いころ「女より殺しが好き」で“バグジー”(イカレた奴)と呼ばれたベン・シーゲル(デヴィッド・ケイド)と組んで密売と賭博で稼ぎ、全米犯罪シンジケートを創設したラッキー・ルチアーノ(シェーン・マクレー)と出会い、「マーダー・インク」(殺人株式会社)を組織して、アル・カポネやフランク・コステロと肩を並べるまでの存在になっていく。そして「自分はビジネスマンだ」と語り長けた商才で賭博ビジネスを成功させ、マイアミ、ラスベガスで巨万の富を築き、キューバにも進出する。その一方で、戦時中にNYで台頭したナチズムに「天罰を下す」と集会に殴り込みをかけて壊滅的なダメージを与えたり、スパイを潜入させて米国に潜入しようとするドイツ軍の動きを阻止したり秘密裏に政府に貢献。さらにはイスラエルに武器や兵器を買うための資金援助をしたとされる一面も描かれる。そうしたなか、ランスキーが隠し持つと噂の莫大な資金を摘発すべくFBIが執拗に捜査を続け、ストーンに15万ドル(約1700万円)の報奨金と家族の安全を条件に情報提供するよう圧力をかける。

■見どころ

エロン・ロッカウェイ監督の父親は犯罪の歴史と裏社会の専門知識を持つ歴史家で、ランスキーが死ぬ直前に、彼にインタビューしたことがあるという。実話に基づいた映画でリアリティがありランスキーの犯罪歴や数奇な人生、してその背景にあるアメリカの闇が描かれて興味深い。老獪に振る舞い作家のストーンやFBIの捜査を翻弄する老年のランスキーをハーヴェイ・カイテルが圧倒的な存在感を見せて演じている。また、若き日のランスキーを ジョン・マガロが「ゴッドファーザー」のアル・パチーノのような存在感を見せながら熱演している。ユダヤ人としてイスラエルに請われて武器や兵器の資金提供を続けていたランスキーが、イスラエルに逃亡し帰化を求めた時、当時のメイヤ首相はニクソン米大統領に戦闘機の提供を条件にランスキーを米国に引き渡すことを決め、ランスキーが「この国に尽くしたのにこれが私に対する仕打ちか」と激怒するシーンがあるが、組織を意のままにしてきたランスキーが国際政治に翻弄される姿も描かれていて興味深い。ただ帰国したランスキーは法廷侮辱罪と共謀罪に問われるが結局不起訴になりCIAとの密約説も取りざたされている。3億ドル(約340億円)以上の財産を残したといわれたがいまだに発見されていないという。そうした謎も残されており最後まで目が離せない実録マフィア映画になっている。

■エロン・ロッカウェイ監督のコメント

「犯罪の歴史と裏社会の専門知識を持つ歴史家だった父親に育てられた私は、常にマフィアの危険な生活に興味をそそられていました。社会の影で活動する独自のルールを持つ、その暗くて捉えどころのない裏社会は魅力的でした。若い頃、それは現実よりもファンタジーの世界のように見えました。一番魅了されたのは、そのキャラクターでした。彼らは、神話のキャラクターを思い出させる、邪悪な力と意志を持っていました。マイヤー・ランスキーは、夫や父親であると同時に、殺人者、愛国者、そしてアメリカ史上最大の犯罪組織の創設者でした。
父はランスキーが死ぬ直前に、彼にインタビューする機会を得ました。この複雑な男を理解するために、この映画は、彼の人生の重要な瞬間を再現し、彼の過去から老人としての現在を往来しながら、人生のさまざまな側面を描いています。人生は多くの場合、黒と白の境界が曖昧な、灰色の線で分離されています。ランスキーは、常にこの灰色の線上に住んでいたのです。映画の目的はこの男を愛したり憎んだりすることではなく、彼を理解することです。そして、多分その過程で、私たち自身についての何事かも。」
(2022年2月4日(金)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)