「モガディシュ 脱出までの14日間」ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの緊迫の脱出劇

(2022年6月6日20:00)

「モガディシュ 脱出までの14日間」ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの緊迫の脱出劇
「モガディシュ 脱出までの14日間」(© 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS & FILMMAKERS R&K All Rights Reserved.)

 1991年、東アフリカのソマリアの内戦が激化し、反乱軍が首都のモガディシュを制圧し、空港が封鎖され通信網が断たれる中、韓国と北朝鮮の大使館員たちの生死をかけた脱出劇を描いた緊迫のドラマ。韓国と北朝鮮の大使たちは現地で激しく敵対していたため、脱出への死闘を共にすることになった脱出劇の詳細は語られず、近年になってようやく事件の顛末が公表され、丹念なリサーチが行われて映画化が実現したという。
韓国側を演じるキャストは、ハン大使役に「チェイサー」「1987、ある闘いの真実」のキム・ユンソク、カン・テジン参事官には、「ザ・キング」、「安市城 グレート・バトル」のチョ・インソン、大使夫人のキム・ミョンヒ役に、「麻薬王」「KCIA 南山の部長たち」のキム・ソジン。

「モガディシュ 脱出までの14日間」ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの緊迫の脱出劇
「モガディシュ 脱出までの14日間」(© 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS & FILMMAKERS R&K All Rights Reserved.)

 北朝鮮側は、リム・ヨンス大使に、「名もなき野良犬の輪舞」、「国家が破産する日」のホ・ジュノ。テ・ジュンギ参事官には、「新感染半島 ファイナル・ステージ」で強烈な存在感を放ち、監督としても活躍するク・ギョファンなどのキャスト。

 監督は、ベルリン映画祭に正式出品された「生き残るための3つの取引」で世界的にその名を知られ、“韓国のタランティーノ”と称されるリュ・スンワン。
2021年7月に韓国で公開され、コロナ禍にもかかわらず最終的には興行収入30億円を突破して2021年度の韓国映画No.1大ヒットとなった。メディアや評論家からも高く評価され、数多くの韓国の映画賞を受賞し、第94回アカデミー賞の国際長編映画賞部門の韓国代表作品に選ばれた。
2021年/韓国/カラー/121分/提供:カルチュア・エンタテインメント/配給:ツイン、 カルチュア・パブリッシャーズ。

「モガディシュ 脱出までの14日間」ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの緊迫の脱出劇
「モガディシュ 脱出までの14日間」(© 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS & FILMMAKERS R&K All Rights Reserved.)



■ストーリー

 1990年、ソマリア。韓国大使のハン・シンソン(キム・ユンソク)は、バーレ大統領に面談の約束を取り付け意気揚々としていた。国連への加盟が悲願の韓国にとって、最多の投票権を持つアフリカ諸国への根回しは必須だった。ところが、官邸へ向かう途中に、現地の若者たちに襲われ、大統領への贈りものを強奪される。何とか15分遅れで到着するが、大統領は次の面談に移動したと言われてしまう。暴徒の若者たちは北朝鮮大使館がひそかに仕込んでいた。
 翌日、ソマリアの長官とホテルで面会したハン大使とカン・テジン参事官(チョ・インソン)は、同じく長官に会いに来た北朝鮮のリム・ヨンス大使(ホ・ジュノ)とテ・ジュンギ参事官(ク・ギョファン)と鉢合わせする。「妨害工作をするな」と怒るハン大使に、リム大使は「我々は南より20年も早くアフリカと関係を築いてきた」と言い返す。

そうしたなか 反政府勢力「統一ソマリ会議」(USC)が暴動を起こし、人権、宗教、民主化を弾圧してきた不道徳で腐敗したバーレ政権を援助する国は、すべて敵だと宣言。街に溢れた暴徒は「独裁政府に協力した外国政府は出ていけ!」と、大使館に石や火炎瓶を投げ込む。通信手段は断たれ、韓国・北朝鮮の両大使館も完全に孤立するが、韓国はカン参事官の交渉力と押しの強でソマリア警察に大使館の警備を約束させる。

「モガディシュ 脱出までの14日間」ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの緊迫の脱出劇
「モガディシュ 脱出までの14日間」(© 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS & FILMMAKERS R&K All Rights Reserved.)

 12月30日、反乱軍が首都のモガディシュに突入、街は完全に政府軍対反乱軍の戦場と化す。空港は閉鎖され、現地の外国人の脱出の道は断たれてしまう。やがて、電気と水道が止まり、石油も切れる中、北朝鮮大使館はテ参事官に都合よく使われていた現地の若者たちに襲われ、食糧も車も奪われてしまう。大使たちは家族を連れて中国大使館を目指すが、火を放たれ燃え上がる中国大使館の光景を前に立ちすくむ。<br>  絶体絶命の窮地に陥ったリム大使は、武装警察に守られた韓国大使館に助けを求めようと決意するが、韓国側にしても北を助けるなどありえないことだった。果たしてハン大使は、北朝鮮を受け入れるのか。また全員で生きて脱出することはできるのか、そしてその方法とは―?

「モガディシュ 脱出までの14日間」ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの緊迫の脱出劇
「モガディシュ 脱出までの14日間」(© 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS & FILMMAKERS R&K All Rights Reserved.)



■見どころ

1990年、ソウル五輪で大成功を収めた韓国政府は国連への加盟を目指し、多数の投票権を持つアフリカ諸国へのロビー活動に励んでいた。ソマリアの首都モガディシュで韓国大使を務めるハンは、政府の上層部に何とか取り入ろうとしていた。一方、韓国より20年も早くアフリカ諸国との外交を始めていた北朝鮮のリム大使も国連加盟のために奔走し、両国間の妨害工作や情報操作はエスカレートしていく。

「モガディシュ 脱出までの14日間」ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの緊迫の脱出劇
「モガディシュ 脱出までの14日間」(© 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS & FILMMAKERS R&K All Rights Reserved.)

そうしたなか、ソマリアの現政権に不満を持つ反乱軍による内戦が激化し、国はたちまち大混乱に陥る。各国の大使館は略奪や焼き討ちにあい、ソマリアの人々だけでなく外国人にも命の危険が迫る。暴徒に大使館を追われた北朝鮮のリム大使は、絶対に相容れない韓国大使館に助けを求める決意をする。「今は南と北で争っている場合ではない」と北朝鮮の大使館員を受け入れるが、まさに呉越同舟の中でお互い反目しあいながらも韓国側と北朝鮮側のリーダーが反発するそれぞれの強硬派を説得して協力するドラマはスリリングで、あの2国でも極限の状況の中で協力し合えることを提起している。「38度線の壁」が崩壊する可能性はないのかと考えさせられる映画だ。
そして、にわか作りの防護を施した車で韓国と北朝鮮の大使館関係者が反乱軍の銃弾が飛び交う中、空港を目指して疾走するクライマックスのアクションシーンまで緊迫のドラマが続く。
(7月1日(金)新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー)