「島守の塔」 太平洋戦争末期の凄惨な地上戦「沖縄戦」で県民の命を守ろうとした県知事らの苦闘を描く

(2022年7月20日7:00)

「島守の塔」 太平洋戦争末期の凄惨な地上戦「沖縄戦」で県民の命を守ろうとした県知事らの苦闘を描く
「島守の塔」(©2022 映画「島守の塔」製作委員会)(配給:毎日新聞社、ポニーキャニオンエンタープライズ)

太平洋戦争末期に20万人が犠牲となった唯一の地上戦・沖縄戦のさなかに、命を懸けて「生きろ!」と後世に希望を託した2人の官僚と沖縄の人々の「苦悩と希望」のドラマを映画化した作品。戦中最後の沖縄県知事として赴任し、軍の命令に従いながらも苦悩し、県民の命を守り抜こうとした島田叡役に萩原聖人。島田と行動を共にし、職務を超え県民の命を守ろうと尽力した警察部長の荒井退造役に村上純。また、島田の世話役の県職員・比嘉凛に吉岡里帆、凛の妹で看護学徒隊の比嘉由紀に池間夏海、そして香川京子が現代の凜を演じている。監督は「地雷を踏んだらサヨウナラ」の五十嵐匠。

「島守の塔」 太平洋戦争末期の凄惨な地上戦「沖縄戦」で県民の命を守ろうとした県知事らの苦闘を描く
「島守の塔」(©2022 映画「島守の塔」製作委員会)(配給:毎日新聞社、ポニーキャニオンエンタープライズ)

■ストーリー

沖縄戦末期、学生野球の名選手として活躍した島田叡(萩原聖人)は、沖縄に県知事として就任するよう軍から要請を受ける。妻は米軍の上陸が迫っている沖縄に赴任するのは死にに行くようなものだと猛反対するが、「誰かがいかなければならない」と妻子を兵庫県に残して沖縄に向かう。1945年1月31日、沖縄の那覇市に到着して米軍の攻撃でがれきとなった荒廃した光景を前に立ちすくむ島田を、栃木県出身の警察部長・荒井退造(村上純)と知事付きの県職員・比嘉凛(吉岡里帆)が迎える。島田に沖縄の現状を聞かれた比嘉は「敵がいよいよというときにまだ目覚めのない国民がいます。非国民の国賊です」「アメリカを叩きのめしてやります」「一人十殺の覚悟で戦うべきだと思います」などと悲壮な覚悟を語る。
戦禍が激しくなるにつれて、島田は県政のトップとして軍の言うがままに戦意高揚を駆り立てることに苦悩し、県民の命を守ることこそが自分の使命と決意するようになる。
警察部長の荒井は島田と行動を共にして職務を超えて県民の命を守ろうとする。そうしたなか、本土に向かっていた学童疎開船が米軍の魚雷の攻撃を受けて子供たちが犠牲になり、さらには米軍が上陸して総攻撃をする中、「命どぅ宝、行き抜け!」と叫び1億層玉砕に抵抗して県民の疎開に尽力して県民を救おうとする。

「島守の塔」 太平洋戦争末期の凄惨な地上戦「沖縄戦」で県民の命を守ろうとした県知事らの苦闘を描く
「島守の塔」(©2022 映画「島守の塔」製作委員会)(配給:毎日新聞社、ポニーキャニオンエンタープライズ)

■見どころ

沖縄返還50年の節目でもあり、またウクライナ戦争が続く中、第2次世界大戦で唯一、米軍との地上戦を戦った沖縄の惨劇と、軍部の「1億総玉砕」に抵抗して県民を守ろうとした2人の官僚や関係者の死闘を描くことで「平和の尊さ」を訴えている。

「島守の塔」は、沖縄県糸満市の平和祈念公園内にある、沖縄戦で殉職した島田叡知事と荒井退造警察部長をはじめ、県民の安全確保に尽力した戦没県職員469人の慰霊塔。1951年委旧県庁の生存者三百数十人や県民の寄付により建立された。

沖縄県知事と警察部長をそれぞれ萩原聖人と村上淳が熱演。そして吉岡里帆が家族を空襲で亡くし「一人十殺の覚悟で戦うべき」などと徹底抗戦を主張する知事付きの県職員というこれまでにない役柄に挑戦して新境地を見せている。
まるで豪雨のように沖縄に降り注ぐ米軍の艦砲射撃や、上陸した米兵が塹壕にいる日本兵らに火炎放射器を浴びせる映像や、断崖絶壁から飛び降りる県民の自決映像などはしばしばテレビの特番やドキュメント映画などで流れるが、この沖縄戦で県民の死者は12万2278人、そのうち9万4000人が一般住民とされている。

(7月22日(金)よりシネスイッチ銀座ほかにて全国公開)