「ドライビング・バニー」 娘の誕生日を祝うために立てこもり事件を起こしたシングルマザーの闘いと生き様

(2022年9月28日17:15)

「ドライビング・バニー」 娘の誕生日を祝うために立てこもり事件を起こしたシングルマザーの闘いと生き様
「ドライビング・バニー」(©2020 Bunny Productions Ltd)

離れて暮らす幼い娘のために誕生日パーティーを開いてあげたいという切実な願いがかなわず、ついには家庭支援局に立てこもり事件を起こしたわけありのシングルマザー、バニーの闘いと波乱に富んだ生き様を描いたニュージーランド映画。
主人公のバニーに「ニトラム」(2022年)でオーストラリアアカデミー賞助演女優賞を受賞したエシー・デイビス。バニーの姪のトーニヤに「ラストナイト・イン・ソーホー」(2021年)、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(2021年)のトーマシン・マッケンジーなどのキャスト。メガホンを取ったのはニュージーランド在住の中国人映画監督ゲイソン・サヴァット。テレビCMディレクターを経て2009年に初の短編映画「Brave Donkey」を監督してメルボルンの映画祭など数々の映画祭で賞賛され、本作で長編映画デビューを果たし、第20回トライベッカ映画祭審査員特別賞などを受賞。米批評サイトのロッテントマトで100%を獲得した。
2021年/ニュージーランド/英語・108分/シネスコ/原題:The Justice of Bunny King/ 提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム

「ドライビング・バニー」 娘の誕生日を祝うために立てこもり事件を起こしたシングルマザーの闘いと生き様
「ドライビング・バニー」(©2020 Bunny Productions Ltd)

■ストーリー

ある事情から、妹夫婦に居候しているバニー(エシー・デイビス)は、笑顔とジョークを交えたトークで信号待ちの車の窓拭きをしながら生活していた。だが娘を虐待する夫を殺害して服役した事件で養育権を失い、愛する娘とは監視付きの面会交流しかできなかったが、娘の誕生日までに家を持ち、娘と水入らずの生活を再開させることを夢見ていた。そうしたなか、妹の新しい夫ビーバンが車の中で継娘のトーニヤ(トーマシン・マッケンジー)に言い寄る光景を目撃し、怒ったバニーはビーバンを懲らしめようとするが、逆襲されて家から追い出されてしまう。家も金もなく追い詰められたバニーは、家に居たくないというトーニヤと一緒に、娘の誕生日を祝うために家庭支援局に行く。娘に合わせるよう頼むが断られ、トーニヤを連れて支援局に立てこもり、誕生日パーティーをするために飾りつけをして警察に娘を連れてくるよう要求する。

「ドライビング・バニー」 娘の誕生日を祝うために立てこもり事件を起こしたシングルマザーの生き様
「ドライビング・バニー」(©2020 Bunny Productions Ltd)

■見どころ

娘を虐待した夫を殺害した過去と、家もなく娘と一緒に生活できないという逆境の中でもユーモアを失わず前向きで、義父から性的被害を受ける姪のトーニヤに救いの手を差し伸べるなど人情家のバニー。だが、ついには職員を人質にして家庭支援局に立てこもる事件を起こし暴発していく。そんなバニーに感情移入して最後まで見守っていくストーリー展開になっている。立てこもるバニーと取り囲んだ警官隊との攻防とその結末は衝撃的で、バニーの行動はさまざまな社会の矛盾を浮かび上がらせる。エシー・デイビスがバニーをパワフルに、そしてエモーショナルに演じている。また家出してバニーについてゆく姪のトーニヤをトーマシン・マッケンジーが好演して存在感を見せている。サヴァット監督は同作に影響を与えた映画としてアル・パチーノ主演の「狼たちの午後」(1976年)や「テルマ&ルイーズ」(1991年)、「スリービルボード」(2017年)などを挙げている。そんなハリウッド映画の名作のテイストも感じさせる注目の作品になっている。 (2022年9月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開)