「その声のあなたへ」初日舞台挨拶 野村道子らが”伝説の声優“内海賢二を語る

(2022年10月1日20:00)

「その声のあなたへ」初日舞台挨拶 野村道子らが”伝説の声優“内海賢二を語る
左から野村道子、かないみか、勝杏里、谷山紀章、逢田梨香子、榊原有佑監督(9月30日、東京・新宿バルト9)

「北斗の拳」のラオウなどの声で知られる伝説の声優・内海賢二の業績や人柄を追ったドキュメンタリー映画「その声のあなたへ」が9月30日、公開となり同日夜、東京・新宿バルト9で初日舞台挨拶が行われた。

声優業界の歴史の中で、数多くの名作・名言を世に残し、声優業界を黎明期から強烈な個性と演技力で引っ張ってきた大御所中の大御所、内海賢二。「北斗の拳」のラオウや「Dr.スランプアラレちゃん」の則巻千兵衛、「鋼の錬金術師」のアレックス・ルイ・アームストロングなど、常に第一線で活躍し続けたが、2013年6月13日に惜しまれながら75歳で亡くなった。訃報は当時大きなニュースとして報じられた。そしてこの度、伝説の声優・内海賢二の仕事、また、その偉業を追ったドキュメンタリー映画「その声のあなたへ」が完成。9月30日に公開となった。

「その声のあなたへ」初日舞台挨拶 野村道子らが”伝説の声優“内海賢二を語る
「その声のあなたへ」の内海賢二(©映画「その声のあなたへ」製作委員会)



本作は、主人公の新人ライターの結花(葵あずさ)が、内海賢二を生前からよく知る声優陣たちの証言を通して「内海賢二」について、そして声優という職業の変遷を辿っていくドキュメンタリー。豪華声優陣によるインタビューパートとドラマパートで構成されており、多くの声優から語られる言葉たちは、歴史の証言のようでもあり、一方で現在にも響く“生の声”という二つの側面がある。本作はアニメ関連情報配信サイト「アニメイトタイムズ」の全面協力で、メディアから生まれた全く新しい映画となった。

イベントでは、内海賢二が創設した賢プロダクションのメンバーが集結し、「優しくてチャーミングでかっこよくて…でもどこかミステリアスな一面もあり、一言では語れない偉大な存在だった内海賢二」について語った。声優という道を共に歩み、最も身近な存在であった賢プロメンバーたちのトークで、賑やかかつ和やかな雰囲気のアットホームな舞台挨拶となった。

「その声のあなたへ」初日舞台挨拶 野村道子らが”伝説の声優“内海賢二を語る
「その声のあなたへ」の葵あずさ(©映画「その声のあなたへ」製作委員会)

本作で新人ライターという役柄で出演した葵あずさがMCを務め、内海賢二が創設した賢プロダクションのメンバーである野村道子(84)、かないみか(58)、勝杏里(45)、谷山紀章(47)、逢田梨香子(30)と、榊原有佑監督(36)が登壇。内海の夫人で声優の野村は「内海賢二が映画になるなんて思ってもいなかったので、こんなにたくさんの皆さまにお越しいただいてとても感謝しています。一番びっくりしているのはあっちの方にいる内海賢二だと思います」と満席の客席に向かい感謝の気持ちを述べ、舞台挨拶がスタートした。

本作の企画を初めて聞いた時の感想を聞かれると、かないは「最初は“誰が内海さん役をやるのかな?”と思ったほど、どんな風になるのか全然わからなかったです。出来上がった作品はドキュメンタリーテイストで、内海さんがまだそこにいらっしゃるような感じがしました」と感想を語った。

谷山は、「“当然だよ、うちのボスだもん”と思いました(笑)。監督は今回ドキュメンタリータッチな手法をとられて、偉人・内海賢二を世の中に知らしめたかったのかな?という意志の強さを感じました。“子分”としてはとても嬉しかったです」と振り返った。

また逢田は「私にとって内海さんはとても偉大な存在なので、今まで映画になっていなかったの?とそこが不思議なくらいの気持ちになりました。こんな大きな作品にそうそうたる役者の方々が出演されると知っていたので、そこに自分が出させていただけるという事が、すごく大きな驚きでした」と心境を語った。
また、完成した映画を観て、改めて内海賢二さんはどのような方だったのかを聞かれ、野村は「交際期間を含めて、一緒にいたのは50年近いんですけど、生い立ちを全然知らなかったんです。なので、内海賢二という人を、全部理解していたのかな?と疑問なんです。皆さんがこの映画の中でおっしゃっているのを聞いて、“あぁ、こういう面もあったんだな”と、本当によくわかりました」と話した。

勝は「本当に現場の雰囲気を明るくしてくれたり、現場をよくすることを第一に考えていた方。ですがこの映画を観て、みんなには見せないミステリアスな部分があったんだ、とても一言では表せない部分があったんだなと思いました」としみじみと語った。

谷山は「わかってはいたつもりでしたが、本当に偉大な人。人物を演じるにおいて、その人自身の人間力が役柄の裏に見え隠れするもの。映画にも出てくる、水樹奈々さんのエピソードがまさにそうで、今のベルーナドームで水樹さんがライブをやったときに、あんなに開放的な場所で、内海さんの“奈々~~!!”って声が響いて(笑)。技術的な事もさることながら、まずは人間力だと思っていて、内海さんはその最たる人」と、振り返った。

そして最後に榊原監督は「映画を作って、映画の中には入れられなかったいろんなエピソードを聞いて、すごくチャーミングだな思いました。豪快で、優しくて…というイメージですけど、なぜこんなに優しい人になったんだろう、こういうことがあったからじゃないか、という所まで見えてきて。どうしてそんなに人に優しくできたのか、というところも映画に入れました。一見豪快で優しくてシンプルでわかりやすいと思いきや、いろんな面がある方だなと思いました。あとは本当に、めちゃくちゃカッコいい!」と話し、内海賢二さんの人柄が反映されたような暖かな雰囲気の中、舞台挨拶は幕を閉じた。