映画監督の吉田喜重さん死去 89歳 「秋津温泉」「エロス+虐殺」など 妻は女優の岡田茉莉子

(2022年12 月9日14:30)

映画監督の吉田喜重さん死去 89歳 「秋津温泉」「エロス+虐殺」など 妻は女優の岡田茉莉子
吉田喜重監督(Instagram/@kiju.yoshida)

「秋津温泉」「エロス+虐殺」などの映画監督、吉田喜重(よしだ・よししげ)さんが8日午前8時33分、肺炎のため都内の病院で死去した。89歳。喪主は妻で俳優の岡田茉莉子(89)。

1933年2月16日生まれ。福井県出身。1955年、東大仏文科卒業とともに松竹に入社し、大船撮影所で小津安二郎監督や木下啓介監督らの助監督を務め、1960年、「ろくでなし」で監督デビュー。「秋津温泉」(62年)などの作品を手掛け、大島渚監督や篠田正浩監督らと「松竹ヌーベルバーグ」の旗手として活躍した。

1966年に独立プロ「現代映画社」を設立して、前出の「女のみづうみ」(66年)、「情炎」(67年)、「エロス+虐殺」(69年)、「煉獄エロイカ」(70年)、「戒厳令」(73年)などの意欲作を次々に発表した。
「嵐が丘」(88年)、「鏡の女たち」(02年)がカンヌ国際映画祭に出品されるなど国際的にも高く評価され、2003年にフランス政府から芸術文化勲章オフィシエ章が授与された。2020年にはナチス・ドイツの副総裁ルドルフ・ヘスを題材にした歴史長編小説「贖罪 ナチス副総統ルドルフ・ヘスの戦争」を発行した。

■「秋津温泉」の主演女優・岡田茉莉子と結婚

1964年、「秋津温泉」に主演した松竹のスター女優・岡田茉莉子と結婚。岡田は同作のプロデュ―サーを兼ねていて、当時助監督に降格されていた吉田監督を指名し、自分のカラーにあわないというのを説得して監督に起用。岡山県の秋津温泉を舞台に、岡田演じる温泉宿の娘と長門裕之演じる胸を病んだ文学青年の宿泊客との17年に及ぶ愛の情念を描き、キネマ旬報主演女優賞など多数の賞を受賞した。岡田はその後も「女のみづうみ」(66年)、「エロス+虐殺」(69年)、「告白的女優論」(1971年)、「鏡の女たち」(03年)などの吉田監督作品に出演した。