「フラッグ・デイ 父を想う日」 ショーン&ディラン・ペン、贋札犯とその娘の数奇な人生を競演

(2022年12 月22日13:00)

「フラッグ・デイ 父を想う日」 ショーン&ディラン・ペン、贋札犯とその娘の数奇な人生を競演
「フラッグ・デイ 父を想う日」(© 2021 VOCO Products, LLC)

1992年、アメリカ最大級の贋札事件の犯人ジョン・フォーゲルとその娘ジェニファーの数奇な人生を描いたヒューマン・サスペンス。大好きな父親が実は犯罪者だったという複雑な思いを抱えてもがきながらも自身の人生を切り開いてゆくジェニファーと、娘を溺愛しながらまともな職に就けず犯罪に手を染めていくジョンの複雑な父娘の人生をドラマチックに描いている。原作は偽札犯ジョンの娘でジャーナリストになったジェニファー・フォーゲルが2005年に発表した回顧録。
「ミスティック・リバー」(2003年)と「ミルク」(2008年)で2度アカデミー賞主演男優賞を受賞した名優で、監督としても活躍するペンが構想15年をかけて監督・主演して映画を完成させた。娘のジェニファーを、ペンと2番目に妻で女優のロビン・ライトとの間の長女で女優のディラン・ペンが、そしてジェニファーの弟ニックをペンの息子のホッパー・ジャック・ペンが演じている。
タイトルの「フラッグ・デイ」とは6月14日のアメリカ国旗制定記念日のことで、この日に生まれたジョンは、その日に全米から祝福されていると思い込み、特別な存在として成功する権利があると信じていた。
2021年/アメリカ/英語・112分/原題:FLAG DAY/配給:ショウゲート

「フラッグ・デイ 父を想う日」 ショーン&ディラン・ペン、贋札犯とその娘の数奇な人生を競演
「フラッグ・デイ 父を想う日」のショーン㊧とディラン(© 2021 VOCO Products, LLC)



■ストーリー

ジェニファー(ディラン・ペン)が警察に呼ばれ、父親のジョン(ショーン・ペン)が巨額の精巧な贋札を高度な技術で印刷し、最高で禁固75年の実刑判決に相当する犯罪を起こしたことを知らされるところから始める。ジェニファーはそれでも「私は父が大好き」とつぶやく。そして「平凡な日々を見違えるほど驚きの瞬間に変えた」父親との宝物のような幼い頃を回想してゆく。
王子様のような存在の父親だったが、母親とケンカしては家を出てゆき、子供に会いたいときだけ帰ってきた。やがてジェニファー(子供時代は子役=一番上の写真)は弟のニックと家出をして、叔父のベック(ジョシュ・ブローリン)に車で送られて若い女と暮らす父親の湖畔の家に転がり込む。4人での楽しい日々が続いていたが、謎めいた男たちがやってきて、ジョンは負傷し血だらけになった。そしてジェニファートニックはバスに乗せられ家に帰される。そして時が過ぎ高校生になったジェニファーはドラッグにはまりクラブで踊り狂う日々を送っていたが、母親の再婚相手の義父に性的虐待を受け、たまらずに家を飛び出しバックパッカーを続けながら、父親の家にたどり着く。娘の成長に感激したジョンは人生を改めようと就活をし、ジェニファーは仕事を見つけて父娘は人生の再スタートを切ったかに見えたが、ジョンが銀行強盗をして逮捕され、刑務所に。ジェニファーは大学に進学してジャーナリストの道を歩んでいくが、出所したジョンが愛に来て再び波乱の父娘の関係が始まる。

「フラッグ・デイ 父を想う日」 ショーン&ディラン・ペン、贋札犯とその娘の数奇な人生を競演
「フラッグ・デイ 父を想う日」(© 2021 VOCO Products, LLC)

■見どころ

巨額贋札事件を起こすジョンとジャーナリストの夢を実現していくジェニファーの父娘の愛情や葛藤など複雑だがそれでも深く愛し合うドラマをショーン・ペンとディラン・ペンが“父娘競演”で見事に演じ切っている。娘を愛しながらも弱さや自己欺瞞から、いいところを見せようと、事業を拡大しているとか部長になったなどとうそをついて取り繕い、追い詰められて犯罪に手を染めていくどうしようもなさをペンが圧倒的な存在感を見せながら演じている。そして、幼い頃にヒーローだった父親の嘘と欺瞞に満ちた素顔を知って、失望したり反抗してけんかをしたりするが、それでもなお幼い頃に父親と過ごした夢のように美しかった生活を回想するにつけて、見捨てられない深い絆や愛情を抱く葛藤や愛憎をディランが繊細にエモーショナルに演じて見せた。ジョンとジェニファーの数奇な人生のドラマは最後まで目が離せない。
(2022年12月23日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国公開)