映画「ippo」初日舞台あいさつ 柄本佑監督と脚本・加藤一浩が登壇

(2023年12月8日0:50)

映画「ippo」初日舞台あいさつ 柄本佑監督と脚本・加藤一浩が登壇
舞台挨拶を行った柄本佑監督㊧と加藤一浩(7日、東京・渋谷区のユーロスペースで)

俳優の柄本佑(35)が監督を務めた映画「ippo」が7日、公開になり東京・渋谷区のユーロスペースで初日舞台挨拶が行われ、柄本監督と脚本・出演の加藤一浩が登壇して映画について語った。

「ippo」は劇作家・演出家の加藤一浩による3本の演劇戯曲を原作に、俳優の柄本佑が監督として映画化した短編連作集で、「ムーンライト下落合」(出演:加瀬亮、宇野祥平)、「約束」(渋川清彦、柄本時生)、「フランスにいる」(高良健吾、加藤一浩)の3部構成。映画、ドラマで活躍の幅を広げる俳優の柄本佑だが、2021年には「アクターズ・ショート・フィルム」(WOWOW)にも参加し、短編「夜明け」(主演:森山直太朗)を監督している。実はそれ以前からすでに何本もの短編を自主製作で監督してきたという。

柄本監督は「作るのに5年かかってまして、今日という日を迎えられたのが本当に奇跡のようでうれしく思っています」とあいさつした。
同作の脚本を担当し出演もしている劇作家で演出家の加藤は「こうして初日を迎えられたことが本当に奇跡のようなというか感無量というか、とにかく無事にここまで何とかこぎつけることが出来てよかったです」と柄本と同様に公開を迎えたことを喜んだ。

柄本監督は、最初に加藤の脚本を読んだ時の感想について「かずさん(加藤)とは長い時間かけて、長編の映画の本の作業を共にさせて頂いてたんですけども、やっていく中で、加藤さんの文脈と言いますかそういったものにたくさん触れていたこともあり、加藤さんのこの短編、本当は4本立てだったんですけど、そのうちの3本をやらせてもらったんですけど、映画にする要素がたくさんある本だなあと思いました。そしてそれぞれ3本ともビジュアルが頭の中に落ちてきたという感じでしょうか。なんか不可思議なもんですよね」と語った。

続けて「書かれているセリフ一個一個がなんか、不思議なようで、あと間もいっぱいあったりするんですけど、なんかそこが妙にリアリティがあるというか、腑に落ちるというか…腑に落ちるだけじゃなくて、劇がその中に隠れているという印象ですね。なので、その劇を自分なりにつかみ出して行けたらなあということは思いました」と語った。

加藤は「もともとぼくは映画をつくりたかったんですね。ひょんなことから演劇を始めて、それが30年近く続いているみたいな感じで。この機会に撮影を見せてもらったりして、その時のスタッフの立ち回りだったり、役者さん同士のとか見てて、結構いい雰囲気で。それが編集されて形になって行って…もちろん僕の戯曲をということでもあるんですけど、それ以上に、書いたものは書いたものとして、そこから新たに人が関わって、いろんな人たちが撮影現場で一つの作品を作り上げていくっていう、そのスタートとして台本があって、それを僕が書いたものから始まったというのがとても光栄で、独特の嬉しさというか不安というか、今倒れそうなんですけど」と言って笑わせた。

自身が出演していることについては「あれがちょっと非常に恥ずかしいというか。ますます客観的に見れないですね」と照れた。

柄本監督の演出について「目線は多様というか、とても俗っぽいところもあれば、とても気高いものを感じるところもあるし。話してて面白いというか、見方が一言でいうと変だな」といって柄本監督を笑わせた。

キャスティングについて柄本監督は「撮影の順番で言うと『ムーンライト下落合』を最初に撮って、こちらで公開(2017年11月)もさせて頂いたんですけども、そのあとに実は一番最後の『フランスにいる』を2回目に撮ったんですね。『ムーンライト下落合』に関してはぱっと頭の中で、本を読んで加瀬(亮)さんにやっていただきたいな、(共演は)誰がいいかな、宇野(祥平)さんだなというのはすぐ思いつきました」という。

そして「高良健吾(『フランスにいる』に出演)に関しては付き合いが15、6年ぐらいになるんですね。役とかを見ていると、これは彼の芝居がどうこうということではなくて、結構背負っているものが多かったりするという印象があって。普段付き合っている健吾、俺と一緒にいつもしゃべっている健吾をいつか撮りたいなとずっと思ってたんです。この『フランスにいる』という本を読んで、何のためにこんなにフランスに長期滞在しているのかわからない、なんかぼんやりとした青年という役をやっていただきたいという風なのでピンときて」決めたという。

さらに「『約束』はまず、安易な関係ですけど弟を(柄本)時生さんにやってもらって。この『約束』が結構後々になってしまったんですけど、(兄役の)渋川(清彦)さんはぱっと思いついたんですね。思いついたときに絶対いけると思いました」という。

そして「(『フランスにいる』に登場する)問題の画家なんですけど、これは(台本を)読んだ時に、絶対役者さんではないなと思っちゃったんですね。描こうとして描けない画家さん。その姿が、加藤さんと5年ぐらい長編の本のやり取りをやっていたんですけど、じっとしている加藤さんの姿とかぶりまして、これは絶対加藤さんにやっていただきたいなと思って直接お願いをしたら、やっていただけることになって。自分で書いてるのにセリフが覚えずらいと言ってました(笑い)」と明かした。

加藤は柄本の演出について「具体的にここはこうしてとか、ここに座りなおしてとか、結構具体的な指示がもらえたので…とにかく不安でしたから僕は。演出しているときには、役者さんにはとにかくセリフはしっかり覚えてくれといってる割には自分では覚えられなくて。結構前から練習してたんですけど出てこなくて。散々迷惑をかけるだけで、まあ具体的な指示をいただいてたんで助かりました」と語った。

さらに「ippo」の製作エピソードや映画音楽などのトークが続いて盛り上がった。 柄本監督としての今後の予定については「内容をお伝えすることは出来ませんが、次は長編で鋭意製作中」だと明かした。

なお、東京・渋谷区のユーロスペースでは、7日の加藤一浩と柄本監督の舞台挨拶のイベントに続いて8日に加瀬亮、宇野祥平(共に「ムーンライト下落合」に出演)と柄本監督が登壇。9日には高良健吾(「フランスにいる」出演)と柄本監督による舞台挨拶などのイベントが行われる。(いずれも午後7時の回の上映終了後)

■「ippo」の内容

映画「ippo」初日舞台あいさつ 柄本佑監督と脚本・加藤一浩が登壇
「ムーンライト下落合」(© がらにぽん)

「ippo」の3作品は、原作戯曲を書いた加藤と柄本監督のふたりによるコラボレーションの積み重ねによって生まれた短編連作集で、ユーモアと知性に溢れた加藤の戯曲に、柄本佑が「映画」という新たな息吹を与えた。そしてこの短編3本すべてが、男2人の物語になっている。演じるのは、「ムーンライト下落合」で久々に再会する友人2人に加瀬亮と宇野祥平。「約束」の兄弟に渋川清彦と柄本時生。「フランスにいる」の画家とそのモデルに加藤一浩と高良健吾が演じている。

映画「ippo」初日舞台あいさつ 柄本佑監督と脚本・加藤一浩が登壇
「約束」(© がらにぽん)

スタッフには、柄本佑が主演を務めた「きみの鳥はうたえる」(2018年)の四宮秀俊が、全編撮影を担当。ほかにも映画監督の三宅唱や俳優、映画監督の森岡龍らが助監督で参加している作品もある。俳優もスタッフも、柄本が一緒に映画を作りたい人々に声をかけ、小さなチームで丁寧に撮りあげた3本の短編で、「真面目で不思議、ユーモラスでセンチメンタル、そしてときに楽しくも不条理なその世界を、ぜひ味わってみてください」(配給・宣伝のブライトホース・フィルム)としている。

映画「ippo」初日舞台あいさつ 柄本佑監督と脚本・加藤一浩が登壇
「フランスにいる」(© がらにぽん)

2022年/76分(総尺)/カラー/1.85 監督・脚色・編集:柄本佑/脚本:加藤一浩/エンディング曲:山口ともこ「知らない人の足音だ」
製作:がらにぽん Pigdom/配給・宣伝:ブライトホース・フィルム
2023年1月7日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開