「モリコーネ 映画が恋した音楽家」巨匠エンニオ・モリコーネの映画音楽と波乱の生涯に迫ったドキュメント

(2023年1 月11日11:30)

「モリコーネ 映画が恋した音楽家」巨匠エンニオ・モリコーネの映画音楽と波乱の生涯に迫ったドキュメント
「モリコーネ 映画が恋した音楽家」(公式サイトから)

モリコーネが音楽を担当した「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督がメガホンを取り、モリコーネの最期5年間に密着してインタビューや稀少映像、さらにはクリント・イーストウッドなどゆかりの著名人のインタビューも含めてモリコーネの音楽と生涯をスクリーンに蘇らせている。

クリント・イーストウッドの出世作となったマカロニウエスタン「荒野の用心棒」(1965年)、や「夕陽のガンマン」(同)などで流れるモリコーネの強烈な印象を残した独特の音楽は、壮絶なガンファイトシーンと共に永遠に耳に残る。セルジオ・レオーネ監督から黒澤明監督の「用心棒」(1961年)のような音楽をというリクエストがあったことなどのエピソードがモリコーネ自身のインタビューで明かされる。

名作「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988年)では、モリコーネの圧倒的で美しい旋律がストーリーと一体化して感動を盛り上げている。本作のドキュメンタリー製作にあたってモリコーネは「ジュゼッペ以外はダメだ」と自ら指名したという。その監督の前だからこそのマエストロが語る作曲府秘話、自身の半生、映画音楽をやめようと思ったこともあったなどの衝撃の告白も盛り込まれている。

「天国の日々」(1978年)、「ミッション」(1986年)、「アンタッチャブル」(1987年)、「バグジー」(1991年)、「マレーナ」(2000年)でアカデミー賞に5度ノミネートされ受賞を逸し続けて嘆くモリコーネだが、2007年に第79回アカデミー賞名誉賞を受賞。そして「ヘイトフル・エイト」(2015年)で、モリコーネに音楽を依頼したクエンティン・タランティーノ監督は、マカロニウエスタンのような曲をイメージしていたが、モリコーネはその期待を裏切り斬新な音楽を作曲し、ついに第88回アカデミー賞作曲賞を受賞した。そうしたアカデミー賞との因縁が描かれているのも興味深い。タランティーノ監督は「私のお気に入りの作曲家だ。映画音楽の作曲家というより、モーツアルト、ベートーヴェン、シューベルトに匹敵する人物だ」と評している。

マカロニウエスタンで人気が出たイーストウッドやタランティーノ、ハンス・ジマー、ブルース・スプリングスティーンなど著名人たちがモリコーネの音楽や仕事ぶりについて語っている。スクリーンではなかなか見られない数多の傑作の名場面とワールドコンサートツアーの演奏なども盛り込まれた。 モリコーネのメロディを聴くだけで、あの日、あの映画に胸を高鳴らせ涙した瞬間が蘇る満ちた音楽ドキュメンタリーになっている。

2021年/ イタリア/157分/原題:Ennio/配給:ギャガ
(2023年1月13日(金)TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー)