「ケイコ目を澄ませて」大ヒット記念トークイベント 岸井ゆきの&三宅唱監督登壇

(2023年1月11日23:50)

「ケイコ目を澄ませて」大ヒット記念トークイベント 岸井ゆきの&三宅唱監督登壇
岸井ゆきの㊧と三宅唱監督(11日、東京・新宿区のテアトル新宿で)

映画「ケイコ目を澄ませて」大ヒット記念トークイベントが11日、都内で行われ主演の岸井ゆきの(30)と三宅唱監督(38)が登壇して撮影エピソードなどについて語った。

聴覚障害のプロボクサーとして実際にリングにたった小笠原恵子さんをモデルに、彼女の生き方に着想を得て、「きみの鳥は歌える」などの三宅監督が岸井を主演に映画化した同作は第72回ベルリン国際映画祭ほか21の映画祭に出品され国際的にも注目されている。また「第77回毎日映画コンクール」では日本映画大賞・日本映画優秀賞、女優主演賞、男優助演賞、監督賞など6部門にノミネートされているほか、第65回ブルーリボン賞の作品賞、主演女優賞にノミネートされるなど評価されている。昨年12月16日に公開され初日満足度ランキングで1位を獲得し、口コミやSNSで評判が広がり満席に近い回続出するなどヒットしている。

■岸井「いろんなところでいろんな声がきけてとても嬉しい」

岸井は「まわりの友人とかからこの人が紹介してくれてたよとか、私に直接じゃなく発信してくださる方がすごく多くてとても嬉しく思います。自分の知らないところまで飛び立っていってくれてるんだなというのをすごく感じていて。あの人が見たから気になっていたんだよねという人もいたし、いろんなところでいろんな声がきけてとても嬉しいです」と反響の大きさに喜んだ。

三宅監督は「映画館で観てよかったといっていただけるのは、とってもこの映画を作った甲斐があるといいますか、僕らも映画館で観てほしいと思って作ったものをそう受け取ってくださったというのはとても嬉しいです。あるいは久しぶりに映画館で見たけどやっぱり映画館はいいなと、そういうきっかけになればいいと思います」と手ごたえを語った。

「ケイコ目を澄ませて」大ヒット記念トークイベント 岸井ゆきの&三宅唱監督登壇
岸井ゆきの

撮影は2021年3月に行われ、どんな状況で撮影されたのかという司会の質問に、岸井は「トレーニングをずっとその前からやってたんですけど、マスクでトレーニングするので、肺活量を鍛えられた」という。「マスクをしながらトレーニングするのは苦しいので(マスクをしない)本番の方が楽でしたね。マスクがないってこんなに楽なんだと思って」と明かした。

三宅監督は「撮影自体というよりは、(コロナ感染拡大の)パニックが始まって最初のころ、映画館も閉まって、ぼくらが住んでる町でもあの見せなくなったかっていうのが沢山あると思うんですよね。そんな中では、コロナかかった人やいろんな人がいると思うんですけど、とにかくこの2年、3年ですか、劇中を生きていく人も僕らも本当にいろんなことを感じながら生きていくということが多分この映画を見る経験にもきっと影響しているんだろうなと思いますね。というか、われわれは本当によう頑張ってると思うんですよマジで。しんどいことがいまだに続いていて、そんな中で、でも映画見たいから映画館に足を運ぶとか、作りたい映画創るとか、しんどい中でみんなやっている。しんどいしんどいといわなきゃいけない時もあるし、楽しまなきゃいけない時もあるし、そういういろんなこの数年のそれぞれの人生の感じというもの込みで映画を見るという経験なのかなということを、この映画の公開中に振り返って感じます」と初めて経験する長いコロナ時代と映画についての持論を語った。

「ケイコ目を澄ませて」大ヒット記念トークイベント 岸井ゆきの&三宅唱監督登壇
三宅唱監督

映画の設定をコロナ禍の今にしたことについて監督は「マスクのない世界をスクリーンの中で描くというのはその当時の時点では僕には想像できなかった。なんか逃げているような気がして。まあ今は考え方も違います。さっさとなくなればいいと思っているしそうじゃない世界を描きたいと思いますけど。当時は何もわかんなかったじゃないですか。まだワクチンのワもない頃で。そういうものがいっぱい詰まってるなあとは思います」と語った。


■岸井「ケイコの何かが確実に自分の体にも考えにも残っている」

特訓を受け聴覚障害のプロボクサー、ケイコになり切って本格的で迫力のあるボクシングのファイトシーンを演じて見せた岸井は「ボクシング今でも続けているんですけど、ケイコの時は身体も増量して重いしパンチも重かったんですけど、今やってるとあゝ軽いなあとか、速さでケイコに勝ちたいなとか、まだケイコを追いかけている印象があって、あんなふうにかっこよくなりたいなあみたいな、そういう瞬間はありますね。んですけど、もうそのものじゃないだな、岸ゆきのの生活があるんだなというところにさみしさを感じる場面がいまだにあってって。追いかけていましたね」と明かした。

「今の自分であの時のケイコに勝ちたいっていう思いがありますね」とも語る。「今だったらパンチは軽いけど、速さで彼女に勝てるんじゃないかな、みたいな。でもそういう風に継続していくことで遠ざかっていくものを追いかけているような感覚はあります。でも追いかけているんだけど前に進んでいるような印象もあるし、不思議な経験をしてるなと自分でも思います」とケイコ役に深く没入した体験を語った。

■岸井「好きなパンチはフック」

その後観客からあらかじめ寄せられた質問に答えるコーナーになり「ケイコのコンビネーション、強くてかっこよかったです。ジャブ、ストレート、アッパー、フックの中でやっていて一番スッキリしたパンチはどれでしょうか」負いう質問が紹介された。

岸井は「私が好きなのはフックですね」だという。「フックは一番衝撃が自分に来るので、受け止めてる感じもあるし、ふり投げてる感じもあるし、その両方を体中で感じる事ができるのですごく好きですね。いまだに好きです」と明かした。
「私は手が小さいので、向かっていくしかないんですよね。入り込めば下からいけるんですよ。なのでストレートとかジャブよりも、下の攻撃をよくトレーニングさせてもらったので、潜り込めさえすればいけるという感覚でフックを打っていた」という。

三宅監督は「一部すでにメイキングとしてユーチューブに挙げているので見てくださったた方もいるかもしれませんが、他にも練習中のいろんなパンチを出してこれいいなとか言ってるシーンがあるのでいずれ見てもらって、あとオレもジャブの方が好きだけどな」と明かすなど、ボクシング談議に盛り上がった。

「ケイコ目を澄ませて」大ヒット記念トークイベント 岸井ゆきの&三宅唱監督登壇
のとっておき情報
「ケイコ 目を澄ませて」(全国公開中)(配給:ハピネットファントム・スタジオ)(©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS)



■三宅監督、ラストシーンを3回撮った真相を明かす

また印象深いラストシーンについて「最高のラスト」などの声も上がっていたというが、三宅監督は「僕らができるのはいつ撮るかということなんです。初日に撮るわけにもいかない。じゃあいつ撮るか。さっきプロデュ―サーに教えてもらったんだけど、ぼくらは試合のシーンの撮影の翌日にスケジュールに入れようかと。試合経験した後と前で流れてくるものはきっと変わるだろうということで、実際にケイコとしていろんなものを味わいました。さあラストシーンですよというところをスケジュールで用意するだけで。あとはキャメラを向けて何が起きようと僕らは受け止めるだけで、撮り逃さないようにしようと、そこに現れるものをと。そういう思いで撮っていた」と語った。

岸井は「言葉にはできない時間が自分でも流れていたので。撮影前に特に演出でこういう風にしたいという話はなかったので、どんな顔をしようかなっていうか、どんな顔になるんだろうな自分はと思って。でも3回ぐらい撮りましたか?」と語った。

三宅監督は「1回でOK出すとそのシーンは終わっちゃうじゃん。もう2度と見れないから、何回でも見たいわけ」と明かすと、岸井は「あーなるほど。そういうことか。納得しました」としきりにうなずいていた。

最後に岸井は「いろんな人がいろんなことをこの映画について行ってくださってて、たくさんの人に見てもらってとても嬉しいです。これからももっともっと羽ばたいていけるようにお力を借りたいなと思ってます。私自身もこの映画にいまだに勇気をもらっていて、すごく大切なことを思いださせてくれて。継続的な努力だったりとか情熱を傾けたもの対しての態度といったものをとても大切にしている映画だと思うし、それを思い起こさせてくれる映画ができたと思っているので、これからもこの映画を愛してくれたら嬉しいと思います」と呼びかけた。