「コット、はじまりの夏」静かな少女がひと夏の体験で目覚めた自我と家族愛

(2024年1月25日10:45)

「コット、はじまりの夏」静かな少女がひと夏の体験で目覚めた自我と家族愛
「コット、はじまりの夏」ポスタービジュアル

1981年、夏のアイルランドの田舎町を舞台に、9歳の少女コットが夏休みに親戚の家で過ごし生きる喜びを発見する姿を描いたアイルランド映画の感動作。「私は最悪」、「燃ゆる女の肖像」など若く作家性の強い才能を世に送り出して来た気鋭のスタジオNEONが北米配給権を獲得。第72回ベルリン国際映画祭でグランプリを受賞するなど国際的に高く評価され、多くの映画人や映画ファンを魅了した。

本作で鮮烈デビューを果たした主人公コット役のキャサリン・クリンチは、史上最年少の12歳でIFTA賞(アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞)主演女優賞を獲得。圧倒的な透明感でコットが抱えてきた問題と、生きる喜びにあふれていくさまを繊細な演技で見事に表現しきっている。
監督は1981年ダブリン生まれで、ドキュメンタリー作品を中心に子供の視点や家族の絆を描いて数々の映画賞を受賞しているコルム・バレード。本作が初の長編劇映画となる。

「コット、はじまりの夏」静かな少女がひと夏の体験で目覚めた自我と家族愛
「コット、はじまりの夏」静かな少女がひと夏の体験で目覚めた自我と家族愛
「コット、はじまりの夏」静かな少女がひと夏の体験で目覚めた自我と家族愛
「コット、はじまりの夏」静かな少女がひと夏の体験で目覚めた自我と家族愛

【ストーリー】
1981年、アイルランドの田舎町。大家族の中でひとり静かに暮らす9歳の少女コット(キャサリン・クリンチ)は、夏休みの間を親戚のキンセラ夫婦の家で過ごすことになる。寡黙なコットを優しく迎え入れる妻のアイリンだったが、口下手で不器用ながら妻のアイリンを気遣う夫ショーンは、最初はコットにそっけない態度をとるが、進んで牛舎の掃除をするなどけなげなコレットに次第に心を開いていく。2人の温かな愛情をたっぷりと受け、はじめは戸惑っていた彼女の心境にも変化が訪れる。いつしか本当の家族のように、かけがえのない時間を重ねていたコットだったが、夏が終わりに近づき、キンセラ夫婦の元を離れる日がそこまで迫っていた―。

■見どころ

原題が「Quiet Girl 」(静かな少女)とあるように、家の中や学校では居場所がないように感じて、あまり話さない物静かで引っ込み思案なコレットは、親戚のキンセラ夫婦の家で優しくされるうちに心を開いていく姿がけなげで心を打たれる。ある日、ショーンは、家からかなり距離のある門の郵便受けにコットを走らせ、郵便物を取って戻ってくるタイムを計測するゲームをする。コレットは夢中で走り、解放感と歓喜が顔中に広がっていくシーンはエモーショナルだ。
キャサリン・クリンチが愁いを帯びた表情や大人の対応への反応などを繊細な表情を見せて演じて圧倒的な存在感を放っている。家族に囲まれても学校でも孤独な日々を過ごしていた彼女に訪れる特別な夏休みの間、少女がそれまで自分の本当の家族の中では味わうことのなかった”家族愛”に囲まれて自分を取り戻し生き生きとしていくドラマに心洗われる。

【作品情報】
監督・脚本:コルム・バレード プロデューサー:クリオナ・ニ・クルーリー 撮影:ケイト・マッカラ 音楽:スティーブン・レニックス
出演:キャリー・クロウリー、アンドリュー・ベネット、キャサリン・クリンチ、マイケル・パトリック
原題:「An Cailín Ciúin」/英題:「The Quiet Girl」 原作:クレア・キーガン「Foster」
2022年/アイルランド/アイルランド語、英語/カラー/スタンダード/5.1ch/95分/字幕:北村広子/後援:駐日アイルランド大使館/G
配給:フラッグ
©Inscéal 2022
公式サイトhttps://caitmovie.jp
公式X:https://twitter.com/caito_movie
ハッシュタグ:#コットはじまりの夏
2024年1月26日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開