映画「ビニールハウス」ビニールハウスで暮らす中年女性の予測不能な壮絶生き様

(2024年3月13日17:30)

映画「ビニールハウス」ビニールハウスで暮らす中年女性の予測不能な壮絶生き様”
「ビニールハウス」ポスタービジュアル

夫と離婚してビニールハウスに住む中年女性が、訪問看護士として働く元大学教授と重い認知症の妻の老夫婦宅で、予測不能の事態に巻き込まれていく壮絶な生き様を描いた異色のサスペンス。

主人公の孤独な中年女性イ・ムンジョンをアクション大作『悪女/AKUJO』(17)やTVシリーズ『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』(18-19)、『誰も知らない』(20)、『Mine』(21)、『紙の月』(23)などで活躍する名優キム・ソヒョンが熱演。韓国のアカデミー賞と呼ばれる第59回 大鐘賞を始め、第43回韓国映画評論家協会賞、第32回釜日映画賞、第43回黄金撮影賞で主演女優賞など6冠の快挙を成し遂げた。

監督は、「パラサイト 半地下の家族」(19)のポン・ジュノ監督や「スキャンダル」(04)のイ・ジェヨン監督らを輩出した名門映画学校、韓国映画アカデミーで学んだ1994年生まれのイ・ソルヒで、長編監督デビュー作。ビニールハウスで暮らす中年女性の想像を絶する運命と、その果てに待ち受ける衝撃的なエンディングが注目され、第27回釜山映画祭で3冠を獲得。韓国での封切り後1週間で観客動員1万人突破を達成するなど、同国のインディペンデント映画としては異例の反響を呼び起こした。  

■ストーリー
ソウル郊外の農村地帯にぽつんとたたずむ黒いビニールハウスに住む孤独な中年女性イ・ムンジョン(キム・ソヒョン)は、夫との離婚後、少年院に収容されている十代のひとり息子ジョンウ(キム・ゴン)と一緒に暮らすことが夢だった。見晴らしのいいアパートに引っ越す資金を蓄えるため、老夫婦テガン(ヤン・ジェソン)とファオク(シン・ヨンスク)の家に通って訪問介護士兼家政婦として働いていた。元大学教授のテガンは視力を失っているが紳士的な人物で、仕事熱心なムンジョンに厚い信頼を寄せている。しかし重い認知症を患うファオクには被害妄想の気があり、「このアバズレ女め」「この女が私を殺そうとする」などと突然叫び出し、しばしばムンジョンを困らせていた。
 そんなある日、ファオクが風呂場で突然暴れ出し、ムンジョンと揉み合ううちに転倒して頭を打ち死亡。頭が真っ白になったムンジョンは、一度は救急車を呼ぼうとしたものの、もうじき少年院から出てくる我が子との未来を守るため、風呂場の床にこびりついた大量の血を洗い流し、ファオクの遺体を運び出し、予測不能の展開に巻き込まれていく。

映画「ビニールハウス」ビニールハウスで暮らす中年女性の予測不能な壮絶生き様”
イ・ムンジョン役のキム・ソヒョン
映画「ビニールハウス」ビニールハウスで暮らす中年女性の予測不能な壮絶生き様”
映画「ビニールハウス」ビニールハウスで暮らす中年女性の予測不能な壮絶生き様”
映画「ビニールハウス」ビニールハウスで暮らす中年女性の予測不能な壮絶生き様”

■見どころ

韓国のドラマシーリーズ「Mine」(21)(Netflixで配信中)で、大財閥一家の優柔不断な長男に嫁いだ賢くクールなヒロインを演じて人気を呼んだキム・ソヒョンが、上流階級の女から一転して、まるで別人のようになって、貧困と孤独、高齢者をめぐる介護や認知症といった問題を背負い、負のスパイラルに巻き込まれていく中年女性を熱演している。
韓国では不動産価格の高騰、経済の低迷により、正規の住宅を失った低所得者層、移民労働者が掘っ立て小屋やビニールハウスに転がり込むという社会問題が起こっているという。
主人公イ・ムンジョンが訪問介護中に、風呂場で体を洗ってあげていた認知症の老夫人に絡まれ揉みあううちに夫人が転倒死するという窮地に陥ったときに、なぜ遺体を隠して盲目の元大学教授をだますという取り返しのつかない選択をしてしまったのかをドラスティックに描いているが、この映画のテーマが浮かび上がってくる秀逸な作家性が感じられた。

【スタッフ・キャスト・フィルムデータ】
監督・脚本・編集:イ・ソルヒ
出演:キム・ソヒョン、ヤン・ジェソン、シン・ヨンスク、ウォン・ミウォン、アン・ソヨ
2022年/韓国/韓国語/100分/カラー/2.39:1/5.1ch原題:비닐하우스 字幕:大塚毅彦
配給:ミモザフィルムズ
©2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:https://mimosafilms.com/vinylhouse/
2024 年 3 月 15 日(金)よりシネマート新宿、 ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー