「フィルム・ノワール映画祭」アンコール上映決定 「生き残ったものの掟」など4作品上映

(2024年5月23日17:30)

「フィルム・ノワール映画祭」アンコール上映決定 「生き残ったものの掟」など4作品上映
「フィルム・ノワール映画祭〈アンコール〉」メインビジュアル

フランスのノワール映画を中心にした「フィルム・ノワール映画祭」のアンコール上映が決定した。 6 月 15 日(土)より1週間限定で、反響の多かった4作品が上映される。

同映画祭は4 月27 日から5月17日まで東京・新宿区の新宿 K’s cinema で開催され、満席続きの好評を博したことから、アンコール上映が行われることになった。

フランスの映画批評家ニーノ・フランクが第二次大戦中に製作されたアメリカの犯罪 映画を”フィルム・ノワール”と称したことから始まったフイルム・ノワールの歴 史。源流は 1930 年代に一世を風靡したギャング映画にあると言われている。フイル ム・ノワールはフリッツ・ラングやロバート・シオドマク、ジャン・ルノワールら、 ヨーロッパから亡命した映画作家の再出発の場となり、アンソニー・マン、ジョセ フ・H・ルイス、ニコラス・レイ、リチャード・フライシャーらアメリカの若き映画 作家たちの登竜門となった。

ハリウッド映画史にその名を刻む監督たちが描き出したアメリカの闇は、ゴダール、 トリュフォーが高評価したことからフランス映画界に浸透し50 年代ヌーヴェル・ヴ ァーグ以前のフランス映画界に大きな影響を与え、以降多くのフランス・ノワールが 製作された。フランス・ノワールはアメリカのノワールとも違う独自な世界を繰り広 げる。この映画祭はフランス・ノワールを中心に、近年あまり上映されてこな かったノワール映画の魅力をつきつめる映画祭となる。

今回のアンコール上映では、もっとも反響の大きかった作品のうち、35mmフィルム での上映を中心にセレクトして4作品を上映。コルシカ生まれのセリ・ノワールの旗手ジョゼ・ジョヴァンニが自身の小説を映画化した監督デビュー作『生き残ったものの掟』。同じくジョヴァンニがイギリスのジョン・カリックのベストセラー「禿タカ」を映画化した傑作アクション『ベラクルスの男』。リノ・ヴァンチュラ、ジャン=ポール・ベルモンド共演のクロード・ソーテ『墓場なき野郎ども』。そして、巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルの初期を代表する『賭博師ボブ』。これを逃すとなかなかスクリーンで観ることが難しい作品群だという。

「フィルム・ノワール映画祭〈アンコール〉」
劇場:新宿 K’s cinema 東京都新宿区新宿3丁目35−13, Showakan-Bld, 3F
上映期間:2024 年 6/15(土)~6/21(金) 連日1日1回上映
配給:アダンソニア 宣伝・配給協力:ブライトホース・フイルム
解説:吉田広明(映画評論家) 協力:仙元浩平 デザイン:千葉健太郎

■作品紹介

『生き残ったものの掟』

「フィルム・ノワール映画祭」アンコール上映決定 「生き残ったものの掟」など4作品上映

1966│100 分│カラー│35mm
監督・原作・脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ
主演:ミシェル・コンスタンタン
コルシカ生まれのセリ・ノワールの旗手ジョヴァンニが自身の小説を映画化した監督デビュー作。亡き友の墓参でコルシカ島を訪れたスタンは“生き残った男”のひとりだった。同じ原作から作られた『冒険者たち』の“その後のような物語”だが、男の生き様を独特のハードなタッチで描いた本作はジョヴァンニの鮮烈なデビュー作となった。多くのノワール映画に出演している“怪優”M・コンスタンタンが主人公スタンを好演している。

『ベラクルスの男』

「フィルム・ノワール映画祭」アンコール上映決定 「生き残ったものの掟」など4作品上映

1968│110 分│カラー│35mm
監督・脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ 原作:ジョン・カリック
主演:リノ・ヴァンチュラ
イギリスのジョン・カリックのベストセラー「禿タカ」を映画化したジョヴァンニ・ノワール第二作。1938 年、独裁政治打倒のため反政府リーダーに雇われて中南米ベラクルスに降り立ったフランスの殺し屋“禿タカ”。クーデター当日彼は独裁者大統領を一発の銃弾で倒し、暗殺に成功するが事情を知りすぎたため、禿タカは依頼主から狙われる羽目になる...。フイルム・ノワールの雄リノ・ヴァンチュラの圧倒的な存在感が全編に漂う傑作アクション・ノワール。

『賭博師ボブ』

「フィルム・ノワール映画祭」アンコール上映決定 「生き残ったものの掟」など4作品上映

1955│100 分│モノクロ│35mm
監督・脚本・原案:ジャン=ピエール・メルヴィル 脚本:オーギュスト・ル・ブルトン
主演:ロジェ・デュシェーヌ、イザベル・コーレイ、ダニエル・コーシー
犯罪から足を洗ったボブ、若いものに優しく、女を食い物にする奴が嫌い、孤独が身に沁みついたような初老の男だが、今は賭博で身を立てている。カジノに収まる 8 億フランを狙って最後の仕事に臨むボブだが、待機中つい始めた賭博で何故かツキまくって...。夜のピガール地区のにぎわい、明け方の寒々しい盛り場をとらえたカメラ(アンリ・ドカエ)、ぶっきらぼうに進む語りがリアルで、ケイパーものフィルム・ノワールであると同時に、ヌーヴェル・ヴァーグ前夜を感じさせる。フレンチ・ノワール最大の作家メルヴィルの初期の傑作。

『墓場なき野郎ども』

「フィルム・ノワール映画祭」アンコール上映決定 「生き残ったものの掟」など4作品上映

1960│103 分│モノクロ│BD
監督・脚本:クロード・ソーテ 脚本・原作:ジョゼ・ジョヴァンニ
主演:リノ・ヴァンチュラ、ジャン=ポール・ベルモンド
逃亡中の死刑囚がイタリアからフランスへ。妻子連れという不利もあり、行動が荒く、行く先々に死体が積みあがる。この間のあれよあれよというスピードから一転、パリでの逼塞は、厄介者となってしまった彼が抑圧された時間が続くギャップ。突き放したようなナレーション(ラストの一言に痺れる)、ヴァンチュラのハードボイルド、かくまうベルモンドの男気。『穴』に続くジョゼ・ジョヴァンニの原作、脚本、カメラも同じギスラン・クロケ。