「ボストン1947」特別試写会にカン・ジュンギ監督とベルリン五輪マラソン金メダルのソン・ギジョンの孫が登壇

(2024年8月6日13:00)

「ボストン1947」特別試写会にカン・ジュンギ監督とベルリン五輪マラソン金メダルのソン・ギジョンの孫が登壇
カン・ジュンギ監督㊧とソン・ギジョンの孫の孫銀卿さん

実話に基づいたヒューマンエンターテインメント「ボストン1947」(8月30日公開)の舞台挨拶付き特別試写会が1日、都内で行われ、カン・ジェギュ監督と、主人公のベルリン五輪マラソン金メダルのソン・ギジョンの孫の孫銀卿さんが登壇した。

1936 年、ベルリンオリンピックのマラソン競技において、日本は世界新記録を樹立、金メダルと銅メダルを獲得し、国民は歓喜に沸いた。しかし、その2個のメダルには秘められた想いがあった。日本代表としてメダルを獲得したソン・ギジョンとナム・スンニョンが、日本名の孫基禎と南昇竜として表彰式に立ったのだ。第2次世界大戦の終結と共に、彼らの祖国は日本の植民地支配から解放されたが、メダルの記録は日本のままだった。1910年の韓国併合から、1945年の日本の敗戦まで、朝鮮半島は35年に渡って日本の植民地として支配された。
ベルリンで活躍した2人がチームを組み、才能あふれる若きマラソン選手を発掘して指導し1947年のボストンマラソンに出場させて、祖国の記録と誇りを取り戻そうとする。出場までに数々の難題に見舞われるが、奇跡のラストが待ち受ける感動作。
,br> 監督は、全世界で熱狂を巻き起こした『シュリ』、『ブラザーフッド』を手掛けた大ヒットメーカーカン・ジェギュ。ソン・ギジョンを演じるのは、『チェイサー』『1987、ある闘いの真実』などに出演する、韓国のトップ俳優ハ・ジョンウ。ボストンで走る若手選手ソ・ユンボクには、「イカゲーム 2」への出演が決まったイム・シワンが扮している。

本作の舞台挨拶付き特別試写会は 1 日、国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催され、カン・ジェギュ監督と、主人公のソン・ギジョンさんの孫、孫銀卿(そん・うんきょん)さんが登壇し、映画や主人公ソン・ギジョンについて語り合った。

「ボストン1947」特別試写会にカン・ジュンギ監督とベルリン五輪マラソン金メダルのソン・ギジョンの孫が登壇
カン・ジュンギ監督

映画上映後、ステージに登壇したカン監督は「この映画は去年、韓国で公開されましたが、日本で公開できるだろうかと心配していました。ですから今日、観客の皆さまとお会いできたことをうれしく思いますし、ありがたいなと思っております」と感慨深い様子であいさつした。
本作をつくろうと思った理由について、「わたしは以前からマラソン映画をつくりたいとずっと思っていました。それで 4年ほど前に、愛すべき後輩が、まるで贈り物ともいうべき、このシナリオを持ってきてくれました。読んでみたら 1974 年に開かれたボストンマラソン大会の話でした。実は読むまでこの奇跡のようなサクセスストーリーを知らなかったんです。韓国では第二次世界大戦が終わり、国が解放されたあとに朝鮮戦争が勃発してしまうわけですが、その前の時期に起きた奇跡のようなストーリーをぜひとも映画化したいと思いました」と明かした。

本作で描かれたソン・ギジョンさんの孫である銀卿さんは「おじいちゃんが亡くなったのが 2002 年。その頃わたしは 20 代でした。わたしにとってのソン・ギジョンの記憶は、どこまでもおじいちゃんでしたが、亡くなった後は歴史上の人物となりました。そのために本を読んだりして学んだりもしましたが、今回あらためて映画という形でソン・ギジョンを客観的に見る機会となりました」としみじみ語った。

カン監督は、「今回、ソン・ギジョン先生のお孫さんにこうやってお会いすることができて、まるでわたし自身がソン・ギジョン先生にお会いできたような気持ちになりました。昨日は(都立西高等学校の)高校生たちと、この映画を通してお話をする機会があったのですが、その時に、自分でも分からないのですが、グッと涙がこみ上げてきて、泣きそうになってしまったのです。どうしてかなとあらためて考えてみたのですが、きっと実際にお孫さんとお会いすることで、先生を身近に感じられたのかなと思いました」とかみ締めるように語った。

「ボストン1947」特別試写会にカン・ジュンギ監督とベルリン五輪マラソン金メダルのソン・ギジョンの孫が登壇
孫銀卿さん

銀卿さんは祖父について「映画の中で、ちょっとだけおじいちゃんのシャツがオシャレだなと感じられたりはしなかったですか?実は本人はオシャレが好きなんです」と観客に明かし、「わたしが生まれたあともひんぱんに日本と韓国を行き来していて、日本ではわたしたちの家に泊まっていたんですが、その時は必ず新宿の伊勢丹に買い物に行っていました。そしてわたしが小学生になると、わたしにお洋服を買ってくれたんです。映画にオシャレなシャツが出てきたのを見て、そのことを思い出しました」と振り返った。

カン監督も「実際に資料を見た時から、先生は外見に気を使われている方だなと思いました。同じユニホームでも、先生はカッコ良く着こなしていましたし、ヘアスタイルもカッコよくまとまっていました。それは選手時代だけでなく、指導者になったあとも、スポーツ界のファッショニスタと言われるほどに、とてもオシャレな方だったと聞いています。ですから衣装や靴などをわたしなりに気を付けました」と明かした。

監督は、ソン・ギジョンを演じた韓国の国民的スター、ハ・ジョンウについて、「わたしが思うに、実際の先生の性格や外見に一番似ているのが、ハ・ジョンウさんじゃないかなと思いました。今回はハ・ジョンウさん本人の姿を感じさせないくらい、ソン・ギジョンそのものになりきってくださった」と語った。
そしてソ・ユンボク選手を演じたイム・シワンについては「以前から演技がうまい方だなと思っていたので、いつか機会があったら仕事をしてみたいと思っていました。劇中のソ・ユンボクは背が低くて小柄な人ではありましたが、その身長のわりに足が長く、腰回りは小さい。その意味ではマラソンランナーに適した人でした。この映画をリアルに感じさせるためには、ソ・ユンボクに近い俳優を探す必要がありました。そしてその役柄を演じるのにイム・シワン以上の人はいないだろうと思いました」とキャスティングの経緯を明かした。
「彼は撮影の準備の段階から終わりまで、マラソンランナーとしての訓練を続け、体形や姿勢を維持するよう努力してくれました。体脂肪率を 6%に絞るのは本当に難しいことなんですが、渾身(こんしん)の力で努力を続けてくれました」と感謝の思いを語った。

最後に映画を鑑賞した観客、そしてこれから映画を鑑賞する人に向けて銀卿さんが「わたしは映画を観ていくつかのシーンで泣きました。わたしの友人が『涙は心の汗だ』と言ってくれたことがあって。映画を観て疲れたというか、いい汗をかいたという感じになりました。ぜひまた 1回でも 2 回でも観ていただいて、運動した気分になってくれたらいいなと思っています。実は祖父が亡くなったのが 2002 年なんですが、2001 年から、おじいちゃんの気持ちを感じたくて、自分でもマラソンをはじめたんです。もちろん、おじいちゃんと同じ経験はできないんですが、“走る”という経験はできるなと思ったんです」と語った。

カン監督も「現代を生きる若者たちは、生きることに大変さを感じていたり、悩みを抱えていたりしていると思います。それは日本のみならず、韓国の若者も同様です。ただ、今の若者たちも大変だと思いますが、ぜひとも本作で描かれる時代を生きた若者たちの姿を見てほしいなと思っています。1947 年という時代は本当に厳しい世の中だった。その中でも若者たちは夢や希望や勇気を失うことなく、自分の夢を追いかけて、お互いを激励し、お互いを犠牲にし、挑戦を続けていました。その姿をぜひ今の若者たちにも見ていただきたいなと思います。そこから何かしら得るものがあるんじゃないかなと思うんです。だから今日足を運んだ方にも、若い人にも見てもらえるよう薦めていただけたら」と語り、「皆さんは日々、ものすごく一生懸命にお仕事をしていらっしゃるかと思います。それは親世代もそうだったと思います。一生懸命働いて、お金を使うためには健康でないといけません。健康のために、ぜひともマラソンをしてください」とメッセージを送った。

『ボストン1947』は 8 月 30 日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。

【STORY】
「私たちが望むのは、祖国の国旗をつけて走ることです」──。1936 年、ベルリンオリンピック。マラソン競技に日本代表として出場した孫基禎は、世界新記録を樹立し金メダルに輝く。だが、表彰式で日本国歌が流れる間、月桂樹の鉢植えで胸元の国旗を隠したことが問題視され引退を強いられる。1946 年、ソウル。祖国が日本から解放された後、荒れた生活を送っていたソン・ギジョン(孫基禎)の前に、ベルリンで共に走り銅メダルを獲得したナム・スンニョンが現れ、“第 2 のソン・ギジョン”と期待されるソ・ユンボクを、ボストンマラソンに出場させようと持ち掛ける。高額の保証金を始め数々の問題を乗り越えた 3 人は、1947 年、ついに消された祖国の記録を取り戻すべく、ボストンに旅立つ。しかし、さらなる難題が彼らを待ち受けていた──。

【クレジット】
監督・脚本:カン・ジェギュ 共同脚本:イ・ジョンファ
出演:ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビン
2023 年/韓国/108 分/スコープ/5.1ch/日本語字幕:根本理恵/G/原題:1947 보스톤/配給:ショウゲート 1947boston.jp/
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