「シビル・ウォー アメリカ最後の日」 近未来の米国で勃発した内戦をリアルに描き分断に警鐘

(2024年10月3日14:00)

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「シビル・ウォー アメリカ最後の日」ポスタービジュアル

近未来に起きる米国の内戦を描いたアメリカン・ディストピアの大作「シビル・ウォー」が4日から公開される。インディペンデント系のA24が史上最高の製作費を投じた話題作で、2週連続で北米週末興行収入1位を記録した大作。

米連邦政府から19の州が離脱して、テキサス・カリフォルニア同盟からなる西部勢力と政府軍の内戦が続く米国を舞台に、大統領に取材するために戦地へ車を走らせるジャーナリストチームが直面する内戦の実態と恐怖を描いた。

テキサス州とカリフォルニア州がファシストの大統領に反旗を翻したという設定の近未来のアメリカを舞台にした同作は、アメリカで実際に起きた内戦の南北戦争(シビル・ウォー=The Civil War)にちなんで、同戦争が始まった1861年4月12日から163年後となる今年の4月12日に北米で公開された。

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主役のベテラン戦場カメラマンのリーに、「ヴァージン・スーサイズ」(99)、「スパイダーマン」シリーズや、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(06)などのキルステン・ダンスト。彼女に同行するベテランジャーナリストのジョエルに、Netflixの人気シリーズ「ナルコス」(15~16)で実在の麻薬カルテルのボス、パブロ・エスコバルを演じてゴールデングローブ賞の主演男優賞(テレビシリーズドラマ部門)にノミネートされたヴァグネル・モウラ。リーに憧れる駆け出しのカメラマンのジェシーに「プリシラ」(23)でプレスリーの妻プリシラを演じてヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞し、「エイリアン:ロムルス」(24)の主役に抜擢されるなど活躍するケイリー・スピニー、リーの恩師のベテラン記者サミーに「フェンス」(16)、「リンカーン」(12)、「DUNE/砂の惑星」(21))などのスティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソンなどのキャスト。
監督・脚本は、「エクス・マキナ」(15)、「MEN 同じ顔の男たち」(22)などの、イギリスの小説家で映画監督アレックス・ガーランド。

米紙ニューヨーク・ポストによると、A24が最大の製作費5000万ドル(約73億円)を投じた、大統領選挙の年の勝負作で、3929館で公開され、オープニング週末の興行収入2570万ドル(約37億4200万円)を記録し、2週連続で週末興行収入トップの座を獲得して、全世界で6月27日現在、約1億2000万ドル(約175億円)以上の興行収入を記録しA24最高のヒットとなった。

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戦場カメラマン・リー役のキルステン・ダンスト
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若手カメラマン・ジェシー役のケイリー・スピニー
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戦場に向かうリーら4人
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民兵役のジェシー・プレモンス
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敵を狙う狙撃手
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窮地の米大統領
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西部勢力のキャンプ

【ストーリー】
西部勢力と大統領が率いる政府軍が各地で激しい戦闘を繰り広げ、西部勢力は首都ワシントンD.C.から200kmの地点まで進行して政府軍の敗色が濃厚になっていた。そうしたなか、ニューヨークに滞在中の戦場カメラマンのリ―(キルステン・ダンスト)と記者のジョエル(ヴァグネル・モウラ)は14か月の間一度も取材を受けていない大統領への単独インタビューを計画。D.C.マデは1379kmあるが、リーの恩師のベテラン記者サミー(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)と、取材中に出会った、リーに憧れる若手カメラマンのジェシー(ケイリー・スピニー)の4人で、前線のシャーロッツビルまで向かうことになり、ニューヨークから出発する。途中で、武装した男たちが”略奪者”と呼ぶ男を拷問する現場や、銃撃戦に密着したり、正体不明のスナイパーと軍人襲激戦に巻き込まれたり、民間人の遺体を処理する残虐な武装集団ィ遭遇して絶体絶命の危機を迎えるが、サミー軒天でその場を脱出したりしながら、やがてシャーロッツビルに到着。政府軍が投稿したことを知り、D.C.に進軍する西部勢力に従軍してD.C.に足を踏み入れ、内戦はクライマックスを迎える。

【見どころ】
ガーランド監督は、「もし何かが悪い状況へ進んでいたら、それがどんな状況なのかミづくべきです。『歴史を忘れたら、その歴史は繰り返される運命にある』という有名なフレーズがあります。その運命から逃れられるものなどいないと理解することが重要です。逃れられる国もありません。なぜなら歴史は国ではなくて人間が築いてきたものであるからです」と語っている。
ダンストは、「この映画は、人々がコミュニケーションを取らなくなり、誰も互いの意見に耳を傾けず、ジャーナリストを沈黙させ、共有されてきた真実を失った時に何が起コル化警鐘を鳴らす寓話です」と語っている。

南北戦争以来、米国の”内戦”が再び起こるという話はフィクションとはいえあながち荒唐無稽とは片付けられないかもしれない。3年前の2021年1月6日、トランプ大統領の支持者約800人が、バイデン大統領が当選した2020年の大統領選挙で不正選挙があったとして議事堂を襲撃して占拠する事件が起きて、31人が逮捕されたことが思い起こされる。銃撃戦はなかったが、アメリカの分断は1か月後に迫った大統領選をめぐって増幅されているかのようにも見え、あの議事堂襲撃事件がエスカレートしたらと考えさせられる映画だ。

なぜ内戦に発展したのかの経緯や、西部勢力の思想などの描写が不足しているようにも感じられたが、内戦状態の米国の描写はリアルで、戦争がもたらす無数の殺戮と破壊が描かれ、クライマックスの西部勢力軍がホワイトハウスに突入するシーンは、リーたちとともに戦闘の現場にいるような息詰まる展開が続く。戦場カメラマンを演じたダンストは、役作りでカメラマンになりきるために、2人の自身の子供を一日中撮影するなど特訓したという。内面に抱える問題なども含めて繊細に演じて存在感を見せている。スピーニーも失敗しながらリーのアドバイスもあり成長していくカメラマンを熱演している。本作での共演をきっかけに、ダンストは親友のソフィア・コッポラ監督にスピーニーを紹介して同監督の「プリシラ」の主役を演じることになったというエピソードの残されている。2人のコンビぶりがこの映画のもう一つの見どころになっている。

【クレジット】
監督/脚本:アレックス・ガーランド
キャスト:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニ―
配給:ハピネットファントム・スタジオ 
原題:CIVIL WAR|2024年|アメリカ・イギリス映画|PG12
公式HP:https://happinet-phantom.com/a24/civilwar/  公式X:@civilwar_jp
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 2024年、10月4日 (金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開