モハマド・ラスロス監督「聖なるイチジクの種」が第97回アカデミー賞国際長編映画賞のショートリストに選出

(2024年12月20日9:30)

モハマド・ラスロス監督「聖なるイチジクの種」が第97回アカデミー賞国際長編映画賞のショートリストに選出
「聖なるイチジクの種」ポスタービジュアル

イランのモハマド・ラスロス監督作品で衝撃のサスペンススリラー「聖なるイチジクの種」(来年2月14日公開)が第97回アカデミー賞国際長編映画賞のショートリストに選出された。アカデミー賞は来年1月17日(現地時間)にノミネーションが発表され、3月2日(同)にロサンゼルスで授賞式が開催される。

同作は、2022年に実際に起き社会問題となった、ある若い女性の不審死に対する市民による政府抗議運動が激化するイランを背景に、家庭内で消えた一丁の銃をめぐって家族も知らなかった家族の顔が炙り出されていく様を描いたサスペンススリラー。モハマド・ラスロフ監督が母国イランを脱出し、命を懸けてまで世界に問うた衝撃の作品。17日(現地時間)に発表された第97回アカデミー賞長編国際映画賞のショートリストに選出された。

同作は、第77回カンヌ国際映画祭で、審査員特別賞を受賞。上映後の12分間に及ぶスタンディングオベーションには、衝撃と感動、熱いリスペクトなど賞賛のすべてが込められていた。喝采を浴びたのは、これまで手がけてきた自作映画でイラン政府を批判したとして有罪判決を受けていた、イラン人監督モハマド・ラスロフ。

『聖なるイチジクの種』も2022 年に、イスラム教国内の女性が頭や身体を覆うヒジャブの着用義務に違反したとしてテヘランの地下鉄駅で拘束され、拘置所に移送後に死亡したマフサ・アサミニさん(当時22)の不審死が発端となった、若い女性たちによる激しい抗議行動を背景に、イラン国内の家父長制度、女性の人権と自由についての問題に自国イランへの批判も込め鋭く切り込んだ作品になっている。

そうした本作を世界に問うために、まさに命を懸けて自国を脱出、28日間かけてカンヌにたどり着いたのだという。

監督は「私は、イスラム共和国政府の検閲による介入を受けない、より現実に近いストーリーを目指しました。表現の自由の制限や抑圧は、たとえそれが創造性を刺激するものであったとしても正当化されるべきではありません」「道がなければ、作らなければなりません」と声明文を発表。今なおイランから出国出来ないキャストやスタッフを案じている。

本作は、アカデミー賞の重要な前哨戦とされるゴールデン・グローブ賞非英語作品賞やクリティック・チョイス・アワード外国語映画賞でのノミネーションをはじめ、世界各国の名だたる映画賞で続々と受賞、ノミネートされている。この度のショートリスト選出で、アカデミー賞レースでも国際長編映画賞の有力候補として注目される。

【ストーリー】
国家公務に従事する一家の主・イマンは20年間にわたる勤勉さと愛国心を買われ夢にまで見た予審判事に昇進する。しかし反政府デモ逮捕者に取り調べもせずに死刑を宣告するというやり方に反発して抗議するがクビをちらつかせられて従うしかなく悩んでいた。そうしたなか、報復の危険が付きまとうため国から家族を守る護身用の銃が支給される。しかしある日、家の中から銃がなくなり、最初はイマンの不始末による紛失だと思われたが、疑惑は家族にも向けられる。デモに参加した友人の学生を家に泊めたことをとがめられ反発したレズワンが最初に疑われる。レズワンは疑惑をキッパリと否定し、疑いの目はさらに妻・ナジメ、妹・サナにも向けられる。誰が?何のために? 捜索が進むにつれ互いの疑心暗鬼が家庭を支配。そして家族さえ知らないそれぞれの疑惑が交錯するとき、物語は予想不能に壮絶に狂いだす――。

女性の権利と自由を求める長女レズワンと、その影響を受ける妹のサナと母親のナジメ。そして国家の主義主張を守るために必死に家族を“統制”しようとする国家公務員のイマンが、家族の亀裂を深めて対立していく。最後まで目が離せない緊迫した展開が続き衝撃的な結末が待ち受ける。

【クレジット】
監督・脚本:モハマド・ラスロフ(カンヌ国際映画祭ある視点部門脚本賞『ぶれない男』(17)、ベルリン国際映画祭金熊賞『悪は存在せず』(20)など)
出演:ミシャク・ザラ、ソヘイラ・ゴレスターニ、マフサ・ロスタミ、セターレ・マレキ
2024年/フランス・ドイツ・イラン/167分 配給:ギャガ
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2025年2月14日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開公開