第67回ブルーリボン賞授賞式「侍タイムスリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞

(2024年2月12日20:20)

第66回ブルーリボン賞授賞式「侍タイムスリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
 
前列左から安藤淳一監督、大沢たかお、山口馬木也、河合優実、小泉今日子、入江悠監督(後列左から)冨岡孝仁氏、吉永小百合、神木隆之介、早瀬憩(12日、東京・千代田区のイイノホールで)

東京映画記者会(在京スポーツ紙7社で構成)が選ぶ「第67回ブルーリボン賞」(2024年度)の授賞式が12日、東京・千代田区のイイノホールで開催された。前年度に主演賞を受賞した吉永小百合と神木隆之介が司会を務め、主演女優賞の河合優実、2冠「侍タイムスリッパ―」の山口馬木也、安藤淳一監督や大沢たかお、小泉今日子ら豪華な受賞者がそろい盛大に行われた。

■主演女優賞・河合優実「みんなで志を持って一生懸命つくれた」

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍タイムスリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
 
河合優実

「あんのこと」で母親に売春をさせられ薬物中毒になってしまう地獄から脱出しようともがく少女を演じ、「ナミビアの砂漠」では2人の恋人を翻弄する奔放なヒロインを独特の感性で演じて、現代の新しい女優像を創出した河合優実。2022年の新人賞(「由宇子の天秤」など)以来で今度は主演女優賞の受賞となった。
「新人賞の時はコロナ禍で授賞式がなかったので、この場に来られたことを嬉しく思っています」と喜び、「個人にいただいた賞ではあるんですけど、作品との出会いが全て導いてくれたことだと思っていて、『あんのこと』と『ナミビアの砂漠』の2本にみんなで志を持って一生懸命つくれたことが、とても今の自分に勇気を与えてくれていると思っています」と語った。
「自分の事もいろんな事を信じるということがすごく難しいときというか、そういう事がたくさん起こっているなと今思ってるんですけど、それでもなんとか映画を通して届ける事をやってみたいと思っているので、これからも楽しんでやっていきたいと思います」と前を向いた。
司会の吉永から、「入江監督が受賞発表の時に、河合さんが監督賞でもいいぐらいだっていうくらいに貢献してくださったと言ってましたが、ここで監督から祝福のコメントを頂きたい」といわれて、監督は「吉永さんから急に無茶ぶりが来るとは思ってなかった」と笑わせ、「2人で、会えなかったあんという子の輪郭を探して作り上げて、僕はなるべく河合さんの邪魔をしないよう、彼女があんに近づいていくときに、もし疲れたり負担があったときにちょっと背中を押すぐらいの感じでいようと思った。そういう意味では彼女が監督賞と主演女優賞をもらってもいいと思います」と称賛した。河合は「もったいない言葉だと思うと同時に、そういうふうに思ってくれる監督、一緒に作っているって思ってくれることがすごくうれしいです」と喜んだ。

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍タイムスリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
河合優実㊧と小泉今日子

その後、河合がCMで小泉今日子の「なんてったってアイドル」をカバーしていることから、「せっかくなので2人で」と吉永に促され小泉との初対面ツーショットが実現。小泉は「テレビでコマーシャルが流れた時、とてもうれしかったです。『不適切にもほどがある!』ではお会いできなかったけど、純子(河合)の演技を楽しく、ずっと見てました。また共演できる日が来るとうれしいですね」といわれて、河合は「ありがとうございます」と感激していた。

■主演男優賞・山口馬木也「何より感謝を申し上げたいのが…本当に支えてくれたお客様です」

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍タイムスリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
山口馬木也

幕末の京都で長州藩士を討つ密命を受けた会津藩士が、戦いの最中に雷に打たれ現代の京都の時代劇撮影所にタイムスリップしてしまい、撮影所で様々な騒動を巻き起こすユニークな作品「侍タイムスリッパ―」が作品賞と主演男優賞の2冠を獲得した。昨年8月に都内1館で公開されたが口コミで人気が出て300館以上に拡大公開され興行収入8億円以上の大ヒットとなった。
タイムスリップして斬られ役として生きる侍・高坂新左衛門を演じた山口馬木也は、「僕の名前が呼ばれた瞬間遺僕の横にいた(安田淳一)監督が号泣しまして」と明かし、「人生初主演映画で歴史あるブルーリボン賞を頂けるとは、当たり前ですけど夢にも思っていませんでした。本当にうれしいです」といい、「思えば、この作品に参加させていただいてから奇跡の連続で、貴重な時間を与えてくれた安田監督にお礼を言いたいです。ありがとうござます」といって深々と頭を下げた。
「今でも家族のようにみんなで集まって飲んだりする本当に温かい共演者の皆様、少数精鋭で支えてくれたスタッフの皆様、京都の撮影所の方々も手を貸して下さいまして。たった1館から始まったこの作品が多くの映画関係者の手で全国の皆様のもとへ届けることになりました。ですが、何より、何より感謝を、申し上げたいのが…」と声を詰まらせ、「本当に支えてくれたお客様です」というと、観客から「馬木也、頑張れ~!」の声があがった。「俳優としてはこれからこういう賞をいただいたプレッシャーもあるんですが、僕個人としては俳優にあこがれて、俳優になりたくて、俳優を続けているという思いがあって。自分が目指すところにたどり着けるのかなあと思いながら、まっすぐ進んでいきたいなと思っています」と決意を新たにしていた。

■作品賞・安田淳一監督「この作品はお客様に育てていただいた」

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安田淳一監督

作品賞を受賞した「侍タイムスリッパ―」の安田淳一監督は、自主映画として撮影、照明、編集など一人で十役以上を兼ねて製作した。「人生で初めて、吉永さんと言葉を交わし緊張感がすごく上がっている」といい、「この作品はお客様に育てていただいたと思います。東映京都撮影所の皆さんはもちろん、この映画を助けてくれた池袋シネマロサの皆さん、そして大手のマスコミの皆さんがこの作品を大きく取り上げてくださいました。今日ここにいることが夢のようです」としみじみ喜びを語った。
今後の予定を聞かれ、「1週間以内に今やってる田圃を耕します。それから面白い脚本を作る仕組みを作りたい」と抱負を語った。
山口は「名前が呼ばれた時は感極まりました時代劇の中では低予算ですけど、お弁当、宿泊先などで監督の思いやりと心意気を常に感じていました。人生の中でこういう方と出会えたのが今でも信じられません。ぜひ、またお仕事をご一緒できるようによろしくお願いします」と語っていた。

■助演男優賞・大沢たかお「この賞は『キングダム』の全員に頂いた賞」

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍スリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
大沢たかお

で大将軍王騎を演じて圧倒的な存在感を見せた大沢たかおが助演男優賞に選ばれた。
司会の吉永から「ラストの演説は本当に素晴らしかったですね。ぐいぐいと胸に響いてきました」と絶賛されると、「まさか吉永さん見ていただいたんですか。今日は(吉永と)目が合ってしゃべれるだけで感動で、母親が泣いて喜ぶと思います」と感激した。
そして「自分が30年前に俳優を初めて、僕の大好きな諸先輩方が受賞するのを見ながら、いつかこういうところに呼ばれることがあるかなと覆いながら30年間全く声がかからず…。記者の人たちに対する僕の態度が悪いのかなと思って、優しく接してたんですけど一向に呼ばれない」と笑わせ、「今回呼ばれてすごくうれしいとともに、身が引き締まる思いがして、これからまた役に集中してやっていきたい。この賞は『キングダム』の全員に頂いた賞。改めてお礼申し上げます」などと語った。
「2017年に声をかけていたただいて、撮影まで1年近くあったので(体重を)増やしていった。そこからコロナ禍に入っていろんな予定が崩れて、(「キングダム 代将軍の帰還」の)リリースまで8年。自分の人生の中でなかったことで俳優としても一映画人としても忘れられない貴重なもので感謝しています」と同作への思いを語った。

■助演女優賞・小泉今日子「エンターテインメントの世界いろんなことがありますけど、真面目に真摯に作っている人がたくさんいる」

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍スリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
小泉今日子

「基盤斬り」(白石和彌監督)で遊郭の女将、「海の沈黙」(若松範朗監督)では本木雅弘演じる画家の元恋人を演じて存在感を見せ助演女優賞に選ばれ、05年に「空中庭園」で主演女優賞を受賞して以来19年ぶり2度目の受賞となった小泉今日子は「ということは私も司会をやったんでしょうか?記憶にないんです」と会場の笑いを誘った。
「受賞の知らせを聞いたときに嬉しいという感情が全く生まれなくて、ご辞退したいくらいの気持ちでした。そんなにいい仕事ができたのかなあという不安の方が先に心に浮かんだ」という。「しかし、映画は大勢の人が関わっていて、みんなの力を出し合って、本当に真摯に作るものと思います。なので、スタッフや共演者のみんなが喜んでくれる顔が見たくて頂きに来ました」と語った。そして「エンターテインメントの世界いろんなことがありますけど、真面目に真摯に作っている人がたくさんいると、本当に現場で思っています。これからも気を引き締めて素敵な作品に出合えるように頑張りたいと思います」と締めくくった。

■監督賞・入江悠監督「僕と河合優実さん、そしてスタッフで考えながら作った映画」

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍スリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
入江悠監督

「あんのこと」で、母親の虐待や売春強要により薬物依存症になど数奇な人生を歩んだ少女あんの実話を基に河合優実主演で映画化し、更生の道の難しさとコロナ禍がもたらした問題などを描いた入江悠監督が監督賞を受賞した。
「受賞のコメントを考えようと思ったんですけど、僕の隣に座っている大沢たかおさんが、すごくしゃべりかけてくるんですよ。直前までしゃべって…」といって会場を笑わせた。 そして、「毎回映画を作りながらいつまで作り続けられるんだろうと思っているん映画祭で賞を頂いたりすると、前にご一緒した方にお会いできたり、自分がまだこれを続けていける。そんな気持ちになります。素晴らしい賞を本当にありがとうございました」と監督ならではのコメント。
「2020年に起きた事件を新聞記事で読んで、取材させていただいて脚本から作っていったんですけどですけど、僕自身もモデルになった子(アン)に会いたかった」という。「僕と河合優実さん、そしてスタッフで考えながら作った映画」と撮影の経緯を明かした。

■外国作品賞「オッペンハイマー」 吉永「原子力のこと原爆のことをしっかりと考えて生きていかなければならないと改めて感じました」

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍スリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
ビターズ・エンド 冨岡孝仁氏

作品賞には、第2次世界大戦中に原爆開発に成功し「原爆の父」と呼ばれた米国の物理学者の栄光と挫折を描いて昨年の米アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など最多7冠を獲得した「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン監督)が選ばれた。配給元ビターズ・エンドの冨岡孝仁氏が登壇。「とても重要で意義のある作品。多くの議論と検討の末の公開となりました。戦後80年、この作品が平和について考えるきっかけになってくれればと思います」と作品への思いを語った。
司会の吉永は、「3時間の作品を拝見しまして、すごく心に残りました。わたしたちはこれから、原子力のこと原爆のことをしっかりと考えて生きていかなければならないと改めて感じました。皆さんにもぜひ見ていただきたい作品」と訴えた。

■新人賞・早瀬憩「いつか司会の席に立てるよう頑張っていきたい」

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍スリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
早瀬憩

「違国日記」と「あのコはだぁれ?」の演技で新人賞に選ばれた早瀬憩。「このような栄誉ある賞を頂いて本当に嬉しく思っています」と感激して、「この賞を糧にしてこれからも努力していきたいと思います」と抱負を述べた。
司会の神木は、早瀬があこがれている新垣結衣が2007年度に「夜空」などでブルーリボン新人賞を受賞し2017年に「ミックスで」で主演女優賞を受賞したことを紹介し、「司会での緊張も味わってみたらいかがでしょうか」といわれ「あこがれの結衣さんの背中を追いかけていつか司会の席に立てるよう頑張っていきたい」と語っていた。

■司会・吉永小百合と神木隆之介

第67回ブルーリボン賞授賞式「侍スリッパ―」2冠 河合優実主演女優賞
司会の吉永小百合㊨と神木隆之介

司会を務めた吉永は「作品がバラエティに富んでいてみんな胸にしっかりと刻まれるようなものなので会場にいてもワクワクしました」と感想を述べた。そして一緒に司会を務めた神木は「最初は緊張していましたがこういう素敵な空間に一緒にいられて貴重な体験をさせて頂きました」。吉永から「ぜひ今度またご一緒に仕事をさせて頂けたら」と今度は映画での初共演をリクエストされて、神木は「こちらこそよろしくお願いします。どこへでも飛んでいくので」といっていた。

【第67回ブルーリボン賞 受賞作・受賞者】

作品賞 「侍タイムスリッパー」(安田淳一監督)
外国作品賞 「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン監督)
監督賞 入江悠「あんのこと」
主演男優賞 山口馬木也「侍タイムスリッパー」
主演女優賞 河合優実「あんのこと」「ナミビアの砂漠」
助演男優賞 大沢たかお「キングダム 大将軍の帰還」
助演女優賞 小泉今日子「海の沈黙」「碁盤斬り」など
新人賞 早瀬憩「違国日記」「あのコはだぁれ?」

【ブルーリボン賞】1950年(昭25)創設。 「青空のもとで取材した記者が選出する賞」が名前の由来で、当初は一般紙が主催していたが61年に脱退。 67~74年の中断を経て、東京映画記者会主催で75年に再開。 ペンが記者の象徴であることから、副賞は万年筆。映画に取り組む姿勢や人柄も選考に含まれるのが特徴。授賞式は例年、前年度の主演賞受賞の2名が司会を務める。在京スポーツ紙7紙はサンケイスポーツ、スポーツニッポン、スポーツ報知、デイリースポーツ、東京スポーツ、東京中日スポーツ、日刊スポーツ(50音順)