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映画
映画「ゆきてかへらぬ」公開記念舞台挨拶 広瀬すず、木戸大聖、岡田将生、キタニタツヤ、根岸吉太郎監督登壇
(2025年2月22日21:00)

映画「ゆきてかへらぬ」の公開を記念して22日、都内で舞台挨拶があり、広瀬すず、木戸大聖、岡田将生、根岸吉太郎監督に加え、主題歌「ユーモア」を書き下ろした新進気鋭のシンガーソングライ ター・キタニタツヤが登壇。広瀬らが自分に近いタイプのキャラクターを発表する企画や、男女3人の友情、尊敬、嫉妬が入り混じる 激しい“赤い春”を描いた本作にちなんで、それぞれが経験した壮絶な青春、“赤い春”を振り返るなど、盛大なイベントとなった。オフィシャルレポートを公開。
「文化の百花繚乱」の様相を呈した大正から昭和初期を舞台に、実在した男女3人の壮絶な愛と青春 を描いた本作。脚本は『ツィゴイネルワイゼン』や『セーラー服と機関銃』の田中陽造が 40 年以上前に書い たもので、多くの監督たちが映画化を熱望しながら長い間実現することができなかった、いわば“知る人ぞ知 る”幻の脚本。「滅多にない優れたシナリオ」とこの脚本に焦がれ続けていた名匠・根岸吉太郎監督が16年ぶりにメガホンを取り、広瀬すず、木戸大聖、そして 岡田将生が美しい時代を火花散らすように駆ける3人の男女を演じた。

映画上映後、万雷の拍手の中、ステージに登壇した広瀬は「この映画のお話をいただいてから、かなり長い年月を経て、昨日初日を迎えることがで きて。そして今日も観ていただけたこと、うれしく思います」とあいさつ。
さらに根岸監督が「かなり長い期間をかけて、この映画と関わってきたので、今日 を迎えられて夢のようです。今日は皆さんに温かく迎えていただいてありがとうございました」と呼びかけた。
そんな中、広瀬が観客に向かって「どうでした?」と尋ねると、会場からは満足げな拍手が。その様子に笑顔を見せた広瀬は、「どんな風にこの映画が届くのか、受け取り方が皆さんそれぞれ違うような気がするので、早く感想を聞きたいですね」としみじみ。
そしてあらためて撮影を振り返った広瀬は、「当時は無我夢中でやっていたんですが、撮影は 2 年前なので。2 年たってから観て、こんなシーンがあ る、こんなシーンがあったんだと、記憶をたどるような時間になってしまって。客観的に観ることができなかった。だから逆に皆さんからいただいた言葉とか、 伝えてくださった感想などを通じて、こういう風な映画になったんだということが多いからこそ、皆さんの言葉が聞きたいです」としみじみ語った。
■“赤い春”エピソードを5人が発表
男女3人の友情、尊敬、嫉妬が入り混じる激しく“赤い青春”を目が眩むほどの熱量で放つ本作。そこで今回は登壇者たちの“赤い春”エピソード についてそれぞれ発表することに。

まずは根岸監督が、劇中で木戸演じる中原中也と岡田演じる小林秀雄が語り合うシーンに登場する「海棠の花」と回答。その理由について、「皆さん、桜かと思ったかもしれないですが、ふたりが話していたのが海棠という木の下で。これが桜の直後から咲く花なんです。1 年くらい前から見学してい つ咲くのかということを計算していたんですけど、一昨年はすごく早く春が来ちゃって。下見に行ったら満開なんですよ。勘弁してくれと。鎌倉のお寺とも 交渉したんですけどなかなか難しくて。かなり焦ってしまった。だから赤い春というとあのシーンを思い出します」と説明。

続くキタニは「自分は高校の時にバンドをやってて。それが青春だったんですけど、けっこうワンマンでやっていて。バンドメンバーに厳しく熱血指導して しまった結果、安定したメンバーに恵まれずに、今こうしてひとりでやっています」と返答し、会場は大笑い。さらに「中也イズムが続行したまま、赤い春 が今でも続いています」と付け加えるキタニだった。

さらに岡田が「僕も高校卒業の直前くらいに軽音学部の方々とライブをすることになって。今まで楽器に触ったこともないのに、メンバーに入ってドラム をたたくことになって。無我夢中で練習してました。メンバーには学校の先生も入っていてみんなでやるという感じで。当日まで一生懸命ドラムの練習をしていたんですが、一曲目で足がつってしまってたたけなくなったという悲しい思い出があります」と発表し会場を沸かせた。
続いて広瀬が「10代の頃にはじめてドラマの主演をやらせていただいたことがあって。毎話少なくとも10ページはあるセリフというか、スピーチをしていくシーンがあって。プロデューサーさんと打ち合わせをしていたんですが、急にひとりにされてしまって。それは自分で頑張れというプロデューサーさんのメッ セージだったんですけど、16 歳だったので急に何で? と思って大げんかをしました。その時に赤いブレザーを着ていたので、赤といえばケンカしたという 話です」と明かした。

そして木戸が「最近ゲームにハマって。オンラインゲームをしているんですけど、僕はお店でも知らない人と話すのが好きで。ボイスチャットをオンにしてや っていたんですけど、たまたま小学生の子とゲームをやることになったんですが、どうやら僕のせいでゲームオーバーになってしまったみたいで…『何してる の!』とめちゃくちゃ怒られた。最近はここまで怒られることもなかったから、感情的になったというよりはごめんなさいという、赤い春でした」と苦い話を付 け加え、会場を沸かせた。
■「泰子」「中也」「小林」「自分に近いタイプのキャラクターは?」
その後、登壇者たちには本作のメインキャラクターとなる「泰子」「中也」「小林」の名前が書かれた札が配られ、その札を使用した“お題トーク”を実施。 ちなみに泰子は2人の天才に愛される駆け出しの女優、中也は天才と呼ばれる以前の詩人・中原中也、そして小林は後に日本を代表する文芸評論家となる小林秀雄だが、その中で「自分に近いタイプのキャラクターは?」というお題が。
それに対して「中也」を挙げた広瀬以外は「小林」を挙手。ただし3人とも個性的なキャラクターであるがゆえに、なかなか誰を選ぶというのも難しいところがあったということで、消去法で「小林」を選んだということだったと語る登壇者たち。
根岸監督もその理由について「中也と泰子にはついていけな いところがあって。ふたりを除くと小林になるかなと。僕は東京生まれなので、小林は東京人らしいなと。泰子と中也は地方から出ている人だからちょっと雰囲気が違う。そういう意味で小林です」と解説した。

一方で、一人だけ「中也」を選んだ広瀬は、「この 3人は難しい!」と悩ましい様子。しかし「文学的表現はわからないけれど、中也とは動物的本能が 自分と近しいなと思って。楽しいことにちゃんとウキウキしている。本能的に感情があって、表現の仕方も含めて、小林よりは中也かなという理由です」と説明した。
さらに小林を演じた岡田も「演じていたからこそ、向き合い方は共通したものがあるかなと。完璧に似ているわけではないのですが、俯瞰的に見ると ころなどは似ているかなと思います」と振り返った。
なお「中也」と挙げた広瀬は「文学的表現などは分からないのですが、中也の動物的本能などは近 いかも。あとわたしも東京出身じゃないというところもあります」とその理由について明かした。
■「青春時代を一緒に過ごしたいキャラクターは?」
続くお題は「青春時代を一緒に過ごしたいキャラクターは?」。それに対して「3 人とも嫌だなぁ」と広瀬がポツリと発して会場を笑わせつつも、そんな 中で挙げたのは「泰子」。その理由について「友だちの友だちの友だちくらいの距離感なら。うわさは聞くという感じで、なかなか出会えない刺激をもらえ そうな存在になるかも」と明かした。
そして同じく「泰子」を挙げたキタニは、「絶対に嫌ですけど、逆にこの子とうまくやれたら成長できそう。青春時代につるんでいたら、自分が大きくなれる気がします」とコメント。
そしてもうひとり「泰子」を選んだ岡田は「天才ふたりに囲まれている彼女には、何か渦巻いているものがあると思うんですが、 ここに天才じゃないわたしが入れば、三角関係でなくて、四角関係にすれば泰子さんを支えられるんじゃないかなと。話を聞くことくらいはできるかなと 思います」と語ると、広瀬も「やさしいね」と感心したように返した。
一方、「中也」を挙げたのは自身も中也を演じていた木戸。「動物的な天才さは、青春時代の若さゆえに許されるようなところがあると思う。中也みたいな人と青春時代を過ごしたら、いろんなことに引っ張られて無我夢中になれる青春時代もあるのかなと。その経験が失敗だったとしても、大人に なってから生きてくるのかなと思う」と説明。
同じく「中也」を挙げた根岸監督も「僕の若い頃はやけに自分に自信を持っている仲間というか、映画人がまわりにいて。そういう人間とある時期一 緒に過ごせたのが良かったなと思うので、そういう意味で中也です」としみじみ語った。
そしてイベントも終盤を迎え、代表して根岸監督が「映画はしばらく前に完成していたんですけど、映画の完成というのはつくり手の僕たちだけでなく、観客の皆さんに観ていただいて映画が完成すると思っていますし、今日はそういった実感があります。皆さまと一緒にこの映画をスタートす ることができてうれしく思います」とメッセージ。
広瀬も「大正から昭和初期が舞台の作品が皆さまにどう映るのかなと不安もありますが、楽しみにもして いました。今日は多くの世代の方に来ていただいて。この作品はこういう風に届くんだなと思ったらワクワクしております。ぜひ面白かったと広めていただ けたら」と会場に呼びかけた。

【あらすじ】
京都。まだ芽の出ない女優、長谷川泰子(広瀬すず)は、まだ学生だった中原中也(木戸大聖)と出逢った。20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは、互い
に惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。けれども、相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。東京。泰子と中也が引っ越した家を、小林秀雄(岡田将生
)がふいに訪れる。中也の詩人としての才能を誰よりも知る男。そして、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。男たちの仲睦まじい様子
を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。才気あふれるクリエイターたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさ。しかし、泰子と出逢ってしまった小林
もまた彼女の魅力に気づく。本物を求める評論家は新進女優にも本物を見出した。そうして、複雑でシンプルな関係がはじまる。重ならないベクトル、刹那のすれ違い。
ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもあった。
【クレジット】
監督:根岸吉太郎 脚本:田中陽造
出演:広瀬すず、木戸大聖、岡田将生
田中俊介、トータス松本、瀧内公美、草刈民代、カトウシンスケ、藤間爽子、柄本佑
©︎2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会 配給:キノフィルムズ
公式HP:www.yukitekaheranu.jp
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2 月 21 日(金)より、TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開中